ラグビー日本代表「超速」を体現するキーマン5人 名将エディーが「世界有数の10番になる」と絶賛する21歳も
ラグビー日本代表「2026シーズン」開幕
ネーションズチャンピオンシップの見どころ(1)
「超速ラグビー」の旗印の下、世界ランキング12位(2026年6月29日現在)のラグビー日本代表は年々着実に進化を遂げながら、その輝きを取り戻そうとしている。そんな姿を日本のファンに直(じか)に見せられる大きなチャンスが、今年7月と11月に初開催される新設国際大会「ネーションズチャンピオンシップ」だ。

「超速ラグビー」のアタックのカギを握るSH齋藤直人 photo by AFLO
ネーションズチャンピオンシップとは、「シックス・ネーションズ」として知られる欧州6カ国(イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズ・フランス・イタリア)と、南半球の強豪4カ国(ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・アルゼンチン)にフィジーと日本を加えた6カ国が「6対6の総当たり」で対戦し、最終週の順位決定戦で王者と最終順位を決める世界的な大会だ。
今年から隔年で開催されることになり、世界ランキングの上位12カ国がハイレベルな戦いを繰り広げる。ラグビー界ではワールドカップに次ぐ規模であるため、スポーツファンにとって見逃せないビッグイベントである。
7月は、日本国内で日本vsイタリア(7月4日/東京・秩父宮ラグビー場)、日本vsフランス(7月18日/東京・国立競技場)の2試合が行なわれるほか、日本vsアイルランド(7月11日)がオーストラリア・ニューカッスルで行なわれるなど、世界各地で18試合が開催される。
日本代表を率いるのは、2015年のラグビーワールドカップで日本代表に大会3勝(1敗)という好成績をもたらしたエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)。2024年に再任した名将が3年目となる今年、新たに掲げたテーマは「共に超速」だ。
第2期エディージャパンの原理原則となる「超速ラグビー」とは、スピードを上げて展開することだけでなく、スローな展開が求められる状況では自分たちでスピードを落とす、つまり自らテンポをコントロールするラグビーである。そして「共に超速」というスローガンには、攻守の切り替えに対応すべく選手同士がより連動してプレーする、という意志が込められている。
【リーチの後継者にふさわしい】新たなスコッドでスタートを切る今大会のエディージャパンで、特に「超速」の体現が期待されるキープレーヤーとして、5人の選手に絞って見ていきたい。
まず、スキッパー(キャプテン)としてジャパンの歴史を築いてきたFLリーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京/37歳)からバトンを受け継ぐ形で、昨年8月からキャプテン(当初は共同主将)を務めたLOワーナー・ディアンズ(24歳)は、その筆頭に挙げられるだろう。
※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)
今年もその重責を担うかは未定とのことだが、スピードやフィジカル、リーダーシップを兼ね備えた精神的支柱であることに変わりはない。リーグワンでは東芝ブレイブルーパス東京の2連覇に貢献したのち、今シーズンは生まれ故郷のニュージーランド・ウェリントンの名門ハリケーンズで加入直後から出色の活躍を見せ、スーパーラグビー・パシフィック優勝の立役者となった。
"ひとり3連覇"を達成した成長著しい24歳について、ジョーンズHCは「彼はチームに一体感をもたらした」と昨年の代表への貢献に感心する。
スーパーラグビーでのパフォーマンスについても、「本当にすばらしい。ディフェンスやボールキャリーの遂行力が上がった。いい選手と練習することによって力をつけている。そこで得られた経験はキャプテンシーとして発揮される」とスキッパーの継続に太鼓判を押している。
ラインアウトやスクラムに限らず、超速ラグビーの中心には常に、身長201cmを誇るたくましいディアンズの姿があるはずだ。
そのディアンズと同じく東芝ブレイブルーパス東京から移籍し、モアナ・パシフィカの一員としてスーパーラグビー・パシフィックでの激闘を終えたHO原田衛(まもる/27歳)も、「超速」に欠かせない存在となるだろう。
昨年は日本代表の共同キャプテンを拝命していたものの、コンディション不良により途中離脱。今年は万全のコンディションでスーパーラグビーデビューを果たし、いずれも途中出場ながら8試合で奮闘。フィジカルレベルの高い多士済々のリーグで貴重な経験を積んだ。
【強豪フランスで2シーズン活躍】ジョーンズHCも「原田はかなりタフな経験をした。試合時間をあまりもらえずチームも苦戦していたが、そのような苦い経験こそが最高の経験になる。彼は生粋のタフな選手だが、今回はフィジカル面でさらにタフになってくれているはずだ」と、スーパーラグビーの経験による成長に期待を寄せている。
代表やリーグワンでしのぎを削って一段と評価を上げたHOの江良颯(えら・はやて/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/24歳)や佐藤健次(埼玉パナソニックワイルドナイツ/23歳)との「2番」争いは、間違いなく熾烈になる。
だが、いずれにしても「超速」の遂行のためには、彼らが中心的な役割を果たすセットプレーの安定は欠かせない。チームとしても、またポジション争いの面でも苦労しながら戦い抜いた原田としては、是が非でもその存在感を示したいはずだ。6月27日のマオリ・オールブラックス戦でJAPAN XVのキャプテンとして先発出場したのは首脳陣の期待の表れだろう。
3人目は「超速ラグビー」のアタックのカギを握るSH齋藤直人(28歳)だ。攻撃の起点からボールをさばき続けるSHは、まさにテンポのコントロールを司る"管理人"のような存在だ。
今回のネーションズチャンピオンシップに向けたスコッドでは、齋藤が同ポジション唯一のキャップホルダーであり(28キャップ)、2023年のラグビーワールドカップとフランスのTOP14の名門スタッド・トゥールーザンで2シーズン活躍し連覇に貢献した実績を持つ。抜群の経験値で、他の若いSHを引っ張る役割も任されるだろう。
現地6月27日に行なわれたTOP14の決勝までチームに帯同したことから、日本代表への合流は大幅に遅くなる。ただ、齋藤は昨年もTOP14優勝に貢献した直後に帰国し、7月12日のウェールズ戦の第2戦に先発出場している。シーズン終了直後の疲労度やコンディションにもよるが、強行スケジュールにはすでに耐性がある。
今大会は、ライバルの藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/27歳)を負傷による手術のため欠いている。そのなかで齋藤は、最も経験値のある9番として超速ラグビーを体現することになるはずだ。
【李承信の座を狙う明治大4年】続いて4人目は、明治大学4年生のSO伊藤龍之介(21歳)を挙げたい。6月の日本代表宮崎合宿に招集されている3名の大学生(トレーニングスコッドを除く)のうちのひとりだ。
今年1月の全国大学選手権で、明治大の「10番」は八面六臂の活躍でチームを大学日本一に導いた。世界の舞台で活躍するワールドクラスの選手を育成する「JAPAN TALENT SQUAD(JTS)プログラム」やU23日本代表などのユース代表の経験も、伊藤の成長をうながす材料となった。その結果、初めて日本代表に招集され、6月27日のマオリ・オールブラックス戦には10番で先発フル出場した。ネーションズチャンピオンシップで初キャップのチャンスを迎えている。
ボールタッチからさまざまなオプションを瞬時に判断し遂行する「超速ラグビー」において、SOは最重要ポジションと表現して差し支えない。それまで李承信(り・すんしん/コベルコ神戸スティーラーズ/25歳)が10番の座を勝ち取ってきたが、今回は手術のために代表の選考対象外。李の不在の間に伊藤が台頭し経験を積めば、SOの層はより厚くなる。
ジョーンズHCも「まだ若いが、彼の年齢(21歳)を考えると世界有数の10番になり得る。すばらしいスキルを持っている」と才能を高く評価しており、伊藤自身も明治大ラグビー部の公式Xで「齋藤直人さんとハーフ団を一緒に組めたら」と先発10番へ強い意欲を見せている。
そして5人目として最後に挙げたいキープレーヤーは、FB上ノ坊駿介(22歳)だ。昨年度まで天理大学で活躍し、伊藤と同じくJTSやユース代表でその才を伸ばした若手FBである。
アーリーエントリー制度により在学中の2月からコベルコ神戸スティーラーズでプレーし始めると、大学ラグビーのキャリアを終えたばかりとは思えないパフォーマンスで先発15番に定着。さっそくチームの優勝に大きく貢献し、シーズン11トライをマークするとともに新人賞を手にした。
【名将エディーも注目の若手FB】「彼は我々を驚かせてくれた。ハイボールに対しても果敢にチャレンジし、アタックでも自分に責任を持って積極的に動ける、非常に質の高い選手」(ジョーンズHC)
相手や自身のキックをマイボールにしてチャンスを広げるハイボールキャッチは、当然ながらエディージャパンでも重要視されている。その獲得率を「40%まで上げられれば、かなりいい状態」とジョーンズHCは語り、「そのためにはFBやWTB(ウイング)の選手が大事で、上ノ坊は勇気を持って空中でのコンテストに挑むことができる」と高く評価している。
上ノ坊も伊藤と同じく代表0キャップ。今大会でポジション争いに勝って日本代表デビューを飾り、さらなる高みを目指したいはずだ。
もちろん今回取り上げた5選手以外にも、LO/FL/No.8ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ/31歳)、FLリーチ マイケル、WTB石田吉平(横浜キヤノンイーグルス/26歳)など、期待したい選手は枚挙に暇(いとま)がない。
メンバー全員がひとつの意志をもって流れるように連動する超速ラグビーを、強豪国との激突が連続する7月から生で目撃したい。そしてそのパフォーマンスが来年、オーストラリアで開催されるラグビーワールドカップにつながるはずだ。
◆ネーションズチャンピオンシップの見どころ(2)>>世界12位のラグビー日本代表が欧州6カ国と総当たり 迎え撃つは北半球を代表する「6人のレジェンド」
