【なぜ】“黒いダイヤ”クロマグロが豊漁も漁業関係者には歓迎されず…漁獲資源を巡る問題とは?(静岡)
日本の食卓に欠かせないマグロ。いま、クロマグロが近年にない豊漁ということなのですが、漁業関係者には歓迎されていないというのです。漁業の現場では、いまどんな問題が起きているのか。「魚はいるのに獲ってはいけない。」という現実がありました。
白いご飯の上にたっぷり並べられたのは,、その希少性から「黒いダイヤ」とも呼ばれ高値で取引される「クロマグロ」です。
一口食べれば・・・この表情。
「やばーい もう溶けちゃった、うふふ。」
そのクロマグロが、今、全国各地で獲れすぎて「厄介者」扱いされる事態となっているのです。
福井県では5月、巨大なマグロが次々と水揚げされていました。港は“豊漁”に沸いているのかと思いきや…。
(福井県定置漁業協会 浦谷俊晴会長)
「もう神様にマグロが網に入らないよう祈ってますわ。」
漁業関係者のSNSにも。
「今朝もマグロを逃がす作業。大喜びする日から一転、マグロ見てうんざりする。」
さらに、高知の宿毛湾では去年(2025年)の秋からクロマグロが大量に回遊。クロマグロの養殖いけすがありますが、その近くでも回遊。
船からエサを投げると…黒い影が次々と水面に現れます。漁に出ても釣れてしまうのは・・・クロマグロ。
このクロマグロの豊漁は静岡県内でも起きています。こちらは伊東市に設置された定置網漁の様子。網にかかった大型のクロマグロがクレーンで釣り上げられ海へ戻されていきます。
漁業関係者が豊漁を喜べない理由は漁獲量の制限にあります。県内の定置漁業に配分された30キログラム以上の大型クロマグロの漁獲枠は今年度(2026年度)当初で9.2トン。ところが4月の操業開始からわずか2週間あまりで8.7トンを獲れました。年度漁獲枠のなんと94.5%にあたります。
過去3年間の同じ時期と比較した県内定置網の大型クロマグロの漁獲量は、いずれも1トンにも満たないものでしたが、ことし(2026年)は4月末時点で8.7トンと例年を大きく上回る異例のペースであることがわかります。
(城ヶ崎海岸富戸定置網 日吉直人さん)
「もともと静岡県の枠がそんなに多くない。今回定置網は2週間ちょっとで静岡県の大型の枠は消化してしまった。4月の15,16 日目くらいに枠は消化してしまいました。リリースすること自体はテンションも下がるし非常に危険なんですね、実際にはねられてけがをした乗組員もいましたし。」
こうした中、国は6月5日、前年度の繰越分から、漁獲枠の追加配分を実施。そのうち定置漁業には4.13トンが追加されましたが、十分な量とはいえません。
県定置漁業協会では現在、追加された枠をすぐに使い切ってしまわないよう、水揚げするクロマグロを一つの漁場につき1日200キロまでに制限しているということです。
では、なぜ全国各地の沿岸でクロマグロが大量に獲れているのでしょうか。
(水産資源研究所 中塚周哉さん)
「2015年からかなり国際的に厳しい漁獲制限が導入されて、その結果資源が順調に回復してきている。トータルでいえば10倍以上に親(大型クロマグロ)の量は増えている。どこの海域でも今まで経験したことがないレベルで魚が来るということは起こってもおかしくないんだと思います。」
クロマグロ資源の減少を受けて2015年から始まった厳しい漁獲量管理。その成果として、当時小型だったクロマグロが大型に成長し数を増やしているということです。
一方、政府の考えは・・・
(鈴木農水大臣)
「漁獲枠について、今後の資源の状況もよく踏まえて、関連する国際交渉におきまして、適切な漁獲枠が設定されるよう、関係国との意見調整を進めながら、議論を積極的に主導してまいりたいというふうに考えております。」
日本政府は、資源評価など科学的データを踏まえた上でクロマグロの漁獲枠増加に積極的な姿勢を示しています。
漁獲量管理の一定の成果が表れ始めたクロマグロの資源問題はいま新たな段階に差し掛かっていると専門家は話します。
(水産資源研究所 中塚周哉さん)
「管理はWCPFCという国際機関でやってるんですけれども、おととし(2024年)出した資源評価の結果で元々の回復目標は達成した。その回復期から長期安定をどうやっていくかっていうのを議論している段階になります。」
日本は、年内に開かれるこの国際会議で来年以降の大型クロマグロの漁獲枠をことしより25%増やすよう主張する方針です。会議でどんな判断がされるのか、漁業関係者の苦悩はまだ続きそうです。
