【上村 由紀子】キムタク回と津川雅彦回が”配信NG”…Netflix『古畑任三郎』の全31話に隠された、大人の事情と奇跡の復活劇
Netflixで『古畑任三郎』シリーズの配信がスタート
Netflixで『古畑任三郎』シリーズの配信がスタート。フジテレビが運営する「FOD」以外でのサブスク視聴が難しかったキラーコンテンツの解禁にSNSが沸いている。
『古畑任三郎』シリーズとは脚本家の三谷幸喜氏が全話の執筆を担当し、俳優・田村正和さんが“黒ずくめで現れ事件を解決する奇妙な警部補”古畑任三郎を演じたフジテレビ制作の超人気ドラマ。今回、Netflixでの配信は第1シーズン(1994年)、第2シーズン(1996年)、第3シーズン(1999年)で放送された計31話となっており、イチロー、松嶋菜々子、石坂浩二と藤原竜也が犯人を演じた2006年のファイナルシーズンや6作のスペシャル版、スピンオフなどは対象外だ。
『古畑任三郎』シリーズ最大の特徴は、ドラマの冒頭で犯人とトリックが明らかになり、その謎を(視聴者が答えを知っている状態で)古畑が解いていく倒述スタイルであること。これは三谷幸喜氏が「ウチのカミさんが」でお馴染みの海外ドラマ『刑事コロンボ』をオマージュし、その作劇法を取り入れているからで、犯人たちの職業が漫画家(中森明菜)、歌舞伎俳優(堺正章)、弁護士(明石家さんま)、ラジオDJ(桃井かおり)など、特殊な場合が多いこともコロンボと近い。
初放送から32年経った今も不動の人気を誇る古畑シリーズだが、当初、三谷氏は古畑任三郎役を田村正和さん(2021年死去)ではなく、玉置浩二でイメージしていた。(参照:ペリー荻野氏と三谷氏の対談集『もうひとつ、いいですか?』)玉置浩二は飛行機内で死亡した愛人の存在を隠そうと奔走する西洋美術研究家として第3シーズンに登場するが、そんな話を聞くと玉置版の古畑も気になってくる。
古畑人気が長く続く理由のひとつが「古畑任三郎役、じつは玉置浩二が想定されていた!」のように、次第に明らかになる隠しコマンドの存在かもしれない。他にも面白い話がいくつもある。
あの大ヒットドラマと同じ世界線?
第1シーズン8話「殺人特急」の犯人は外科医の中川淳一(鹿賀丈史)だが、じつはこの犯人、別の大ヒットドラマで重要な役割を担う人物だった。
そのドラマとは織田裕二と石黒賢のW主演で1993年に放送された『振り返れば奴がいる』で、中川淳一は織田が演じる司馬と石黒演じる石川が所属する天真楼病院の外科部長。過去に心臓のオペでミスをしたトラウマから手が震え、以後執刀を避けているが、古畑では愛人との密会写真を撮った興信所の所長を注射器を使って殺害する。
また、スペシャル版で山口智子が華道パフォーマー・二葉鳳翆を演じた「しばしのお別れ」の発表会シーンや、第2シーズン第8話「魔術師の選択」のマジッククラブオーナー・南大門昌男(山城新伍)のもとに届いた花の送り主が原田禄郎。
原田禄郎とは1995年に放送された『王様のレストラン』で筒井道隆が演じた伝説のレストランのオーナーだ。
もちろん『振り返れば奴がいる』も『王様のレストラン』も三谷氏の脚本だが、特に古畑の「殺人特急」で別のドラマの主要登場人物をそのまま犯人として再登場させたのは日本のドラマ史でもかなり意表を突いた事例といえる。
2回殺された男と「赤い洗面器の男」
『古畑任三郎』では過去2回被害者として殺された俳優がいる。1度目は記念すべき放送第1回目の「死者からの伝言」編集者役で、2回目が第2シーズン「魔術師の選択」のマジシャン役。2話とも恋愛関係のだらしなさが原因で命を取られてしまう人物だが、これを演じたのが三谷氏と舞台作品で組んでいる池田成志。
『相棒』のように26年にわたり定期的に放送されている刑事ドラマであれば同じ俳優が別人物として複数回登場することも多いが、古畑で2回被害者になったのは池田成志だけである。
古畑ファンの間でカルト的な人気を誇るサブエピソードといえば「赤い洗面器の男」だ。初出は第1シーズン11話で桃井かおりが人気ラジオDJを演じた「さよなら、DJ」。
番組内で「赤い洗面器に水を張り、それを頭に乗せた男が歩いてきてその理由を聞くと……」と、最後にDJがオチを話そうとしたところで古畑の登場により生放送は終了。
この「赤い洗面器の男」の小噺は古畑だけでこの後4回、さらに他ドラマにも登場し、いずれも語り手が話の途中で死亡したりオチを忘れていたりして、2026年の今もその謎が明らかにされていない。
配信されない回と復活した回
Netflixでの配信はシーズン1からシーズン3の31話だが、じつは通常放送されたのは全33話。つまり、2話が今回の配信から抜けていることになる。
まずは第2シーズン4話の「赤か、青か」。当時23歳の木村拓哉が観覧車に爆弾を仕掛けた後、偶発的に殺人を犯してしまう大学研究員を演じており、地上波での再放送はあったものの、現在NetflixやFODなどでは未配信。また、この回は冷静な古畑が唯一、犯人に手を上げた事件でもある。
もうひとつは第3シーズン5話の「古い友人に会う」。この回では古畑が旧友の小説家・安斎(津川雅彦)の犯罪を察知し事前に食い止めたため殺人は起きない。劇中、登場人物たちがカラオケでJ-POPを歌うシーンがあり、その権利関係で配信がNGなのでは、と囁かれる回だ。
権利関係でいえば、一時期配信がストップしていた話の復活もあった。その回とは第2シーズン第9話の「間違えられた男」。有名編集者の犯人・若林(風間杜夫)が別人になりすまして古畑と対峙するが、そのさいにアニメ「サザエさん」の映像が一部流れるため、権利関係で配信ができなかったとみられている。ただ、今回のNetflix配信版ではこの回もしっかりラインアップされ、「サザエさん」の映像も流れている。
ちなみに通常放送全シーズンの最高視聴率(初回放送時)は江口洋介が犯人を演じた第3シーズン最終話「最も危険なゲーム」の後編で28.3%。スペシャル版ではSMAP全員が犯人役だった「古畑任三郎 VS SMAP」の32.3%を押さえ、山口智子が犯人役を担った「しばしのお別れ」が34.4%と古畑シリーズ全作品を通しての最高視聴率を記録した。
2006年のファイナル放送終了後も「リメイク版が作られるなら古畑役はこの人」で堺雅人や大泉洋の名前があがったり、「古畑で犯人を演じてほしい妄想キャスティング」で小栗旬や長澤まさみ、小池栄子、西島秀俊らの名が出たりと、再放送や配信のニュースがアップされるたびにネットを沸かせる『古畑任三郎』。これだけ長きにわたり愛され続けているドラマシリーズも珍しい。
さまざまなサブエピソードもご紹介したが、やはり最大の見どころは、古畑任三郎役・田村正和さんと豪華ゲスト俳優との背筋がゾクゾクするような丁々発止のやり取りだろう。物真似がここまでポピュラーになっている主人公も稀有だし、古参から初見までポジティブなツッコミで盛り上がれるドラマは他にない。熱量の高いコンテンツは時代も世代も越えて視聴者を魅了し続ける。
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