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単なる「おまけ機能」ではない

新しい技術が優れているかどうかは、わたし達の生活の中にどれほど早く、そして自然に溶け込んでいけるかで判断できる。例えば、非接触型カード決済をすることを、最後に意識的に考えたのはいつだろうか。

【画像】疑似変速の概念を先駆けて導入した高性能EV【ヒョンデ・アイオニック5 Nを詳しく見る】 全23枚

ヒョンデ・アイオニック5 Nの「N eシフト」システムを初めて体験した際、筆者はその擬似変速の操作にすぐに慣れ、ハードな走行時にはデュアルクラッチ式オートマティック・トランスミッションを模倣するように、バックグラウンドで動作させていた。N部門の試みは見事に成功を収めたと言えるだろう。


メーカーはなぜ「フェイク」の変速機構を取り入れるのか。各社の動向を紹介する。

N eシフトは、「あったらいいな」というボーナスとして付け加えられたものではなく、最初からアイオニック5 Nの中心にあったはずだ。筆者のこの直感は、ドイツ・リュッセルスハイムにあるヒョンデ欧州拠点のシニアエンジニア、アレクサンダー・アイヒラー氏によって裏付けられた。

「非常に早い段階から構想されていました」とアイヒラー氏は言う。

「当時、アルバート・ビアマンがNの生みの親であり、彼はギアチェンジに関しては常に強い関心を寄せていました。彼はわたし達にデュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)の開発を強く促し、EV時代にも同様のものを導入すべきだと考えていたのです」

リアルな挙動を再現するためには?

「その秘密、つまりこれほどリアルに仕上がった理由は、両方のプロジェクトに同じエンジニアが携わっていたことです。彼らはDCTのフィーリング、完璧なシフトと不完全なシフトのフィーリングを正確に把握していました。リアルさを出すためには、もちろん不完全でなければなりません。そうでなければ、あまりにも完璧すぎるからです」

不完全さの追求は、エンジニアリングチームにとって非論理的な理念のように思えるかもしれない。しかし、アイオニック5 Nに先立つガソリンエンジン搭載のヒョンデのホットハッチが、堅苦しいライバルたちとは一線を画す奔放なキャラクターゆえに愛されたように、その精神はEV時代にも受け継がれている。


ヒョンデ・アイオニック5 N

アイヒラー氏はこう続ける。

「わたし達はさまざまなモデルを用いています。内燃機関のポンプ損失は回転数(RPM)によって変動するため、リアルな感触を得るには、仮想のドラッグトルク(空転抵抗)も回転数に応じて変化させる必要がありました。どのようなドラッグトルクを重ねるべきか、多くの議論を交わしました。そして最終的に、一般的なV8ガソリンエンジンから得られる数値のほぼ2倍という値に落ち着きました」

要するに、アイヒラー氏率いる開発チームは、アイオニック5が本来持つサイズと重量を相殺するために、シミュレーションのこの要素を特に強調せざるを得なかったのだ。「しかし、それ以外の部分は実際の内燃機関の物理法則を正確に再現しています」と彼は断言する。

ターボエンジンの合成サウンドと連携

アイオニック5 Nは、2235kgという車重の割にかなり機敏で俊敏な走りを見せ、AUTOCAR UK編集部も詳細テストの後に最高評価の5つ星を付けている。N eシフトは、「Nアクティブ・サウンド+」システムと連携し、アップシフトやダウンシフト、車体に伝わる意図的な振動に合わせて、驚くほどリアルなターボチャージャー付き4気筒エンジンのサウンドを再現する。

不思議なことに、これら2つの技術は異なるチームによって開発されたものだが、明らかに強い関連性が見られる。


ヒョンデ・アイオニック5 N

アイオニック5 Nは8000rpmのリミッターまで熱狂的に「ウァン、ウァン、ウァン」と回転数を上げ、素早く3速に入れなければ、コーナーの途中で見えない壁に押し付けられたかのように、2速へのダウンシフトの効果を体と耳で感じることになる。

N eシフトは、自分の仕事に情熱を注ぐ人々による優れた発明のように感じられる。このクルマの全体的なダイナミクスを巧みに反映した技術だ。

グリップ力が高く、バランスが整った四輪駆動のメガ・ハッチバックだが、比較的控えめな操作でもタイヤを滑らせ、手の中でステアリングホイールを激しく揺れ動かすことができる。

追い込めば追い込むほどその感覚は高まる。他のEVが本気を出せば出すほどフラストレーションを感じさせるのに対し、このクルマの魅力はそのような状況下でこそ結晶化する。筆者の同僚たちのレポートによると、セダンの『アイオニック6 N』ではN eシフトのチューニングが改良され、そのダイナミズムをさらに研ぎ澄ませているという。

ブランドごとに独自のセッティング

「ヒョンデは、『おいおい、そんなの理にかなってないぞ』と経営陣に言われることなく、思う存分遊ばせてくれる素晴らしい会社です。何よりも楽しむこと、それが明確な戦略です。わたし達にとっては素晴らしい遊び場なのです」とアイヒラー氏は言う。

では、きょうだいブランドのキアやジェネシスはどうだろうか。これらのブランドもまた、一部のスポーティなEVに疑似変速を採用している。


キアEV9 GT

「わたし達は常に彼らとコンタクトを取り合っています。当然、ソフトウェアのロジックは共有していますが、具体的にどのロジックを採用するかは、常に各チームの判断に委ねられています」

ヒョンデのN部門では今後もこの技術のより過激なチューニングを展開していく方針だが、兄弟ブランドからも目が離せない。キアの新型『EV9 GT』は、最大8速、7200rpmまで対応する「バーチャル・ギア・シフト(VGS)」システムを採用した、ユニークかつ豪華な電動SUVだ。ドライバーに馴染みのある感覚を提供し、率直に言えば純粋なエンスージアスト向けではないこのクルマにも、新しい魅力が宿っている。

ジェネシスの『GV60』や『GV70』では、システムをバックグラウンドで自動モードのまま稼働させておくのが良い。ずんぐりした電動SUV特有のピッチングやヒービング(上下の揺れ)、ひいては車酔いの可能性がある程度抑えられているからだ。

一方、よりスポーティな『GV60マグマ』は、V6エンジンを彷彿とさせるサウンドに合わせて、9000rpmのレッドラインが設定される予定となる。

(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます。)