【高齢者の暴力】75歳の男が口論相手の顔をナイフで…バスや電車で頻発する「乗客トラブル」

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バスから引きずり下ろしてナイフで

「新聞の音がうるさい」

口論のきっかけはささいなことだった──。

6月1日の朝10時15分ごろ、警視庁蒲田署は大田区南蒲田の路上で、50代の男性の頬をナイフで切りつけたとして、同区の無職・石井富夫容疑者(75)を殺人未遂の容疑で現行犯逮捕した。

「事件が起きたのはJR蒲田駅発、羽田車庫行きの京浜急行バスの車内でした。バスの乗客は数人で混んではいなかったそうです。

被害者の50代男性が新聞を広げる音がうるさいと石井容疑者が文句を言ったことから口論になり、同区西糀谷の日ノ出通りバス停で石井容疑者が男性を車内から引きずり下ろした直後に折りたたみナイフで切りつけました。

バスの運転手が被害男性とともに『顔を切りつけられた』と交番に駆け込んだことから、警察官が周囲を捜索。約1時間後に700〜800mほど離れた住宅街の中で石井容疑者を現行犯逮捕しました」

石井容疑者は逮捕時には「脅すつもりで切りつけた」と話していたという。その後の取り調べでは「ナイフで頬を切りつけたことは間違いないが、殺すつもりはなかった。殺人未遂というのは納得できない」と、一部容疑を否認している。現場に取り残されたバスに乗っていた乗客は、代行のバスに乗り換えて目的地へ向かったという。

一部の報道では近隣住民から〈いつもこのあたり一帯を掃除してくれるいい人。トラブルなどもない〉と評されていたという石井容疑者。なぜ“新聞の音”ぐらいで殺人未遂という罪を犯してしまったのだろうか。

高齢者暴力問題の側面も

バスや電車などでの乗客同士によるトラブルは絶えない。少し古い資料だが、鉄道警察隊によれば、駅構内や列車内で発生した暴行・傷害事件は’15年に3462件確認されている。このようなトラブルが起きる背景には何があるのか。新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)の碓井真史氏に話を聞いた。

「乗り物は、普段なら付き合わないようなさまざまな人たちが偶然乗り合わせる場所です。しかもかなり近い距離で長時間一緒に過ごさなければならない場合もある。車内が混んでいると、簡単には逃げられないという事情もあります。

また、高級レストランには高級レストランのマナー、ファミリーレストランにはファミレスのマナーがありますが、乗り物では『ここではこう振る舞うべきだ』という共通認識が曖昧です。

携帯電話の通話や、ノートPCのキーボード音、ベビーカーの扱い、リクライニングシートや優先席の使い方など、明確なルールではなく、あくまでマナーとして運用されているものが多い。車内で携帯電話で話す人はかなり減りましたが、やっぱり今でもときどき見かけますよね」

今回の事件については高齢者暴力問題の側面もあるという。

高齢者は加齢によって、感情を抑制する力が低下するケースがあります。また、世の中の常識は変化していますが、それを受け入れにくい人もいます。長年積み重ねてきた自分の常識が正しいと信じているため、他人の行動を『非常識だ』と感じやすくなるのです。

今回の加害者も、自分が悪いことをしているという意識はなくて、むしろ『うるさい相手を注意している自分が正しい』と考えていた可能性があります。相手が素直に謝ればそこで終わったかもしれませんが、口論になってしまうと問題の解決よりも『相手を言い負かしたい』『自分の正しさを認めさせたい』という心理に変わります。相手を懲らしめることが目的となってしまった結果、エスカレートして最終的に刃物を出してしまったのでしょう。

高齢者はプライドが高く、自分の誤りを認めて謝ることが難しくなる人もいます。そのことも背景にあったのではないでしょうか」(碓井氏)

隣にどんな人が乗り合わせるかわからない公共の乗り物。そこで誰かに何かを言われたら一歩引いてみることが身の安全のためにはいいのかもしれない。

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