旭川女子高生殺害で懲役27年求刑 「軽すぎる」の声も「検察は最大限の求刑した」弁護士が指摘
北海道旭川で当時17歳だった女子高校生を橋から転落させて死亡させたとして殺人などの罪に問われている内田梨瑚被告人(23)の裁判員裁判で、検察が6月8日、懲役27年を求刑したと報じられました。
内田被告人は、2024年4月、当時19歳の女性と共謀して、女子高校生を旭川市郊外の橋から転落させて殺害したとして、殺人や不同意わいせつ致死などの罪に問われています。
27年の求刑について、ネット上では「軽すぎる」という声も相次いでいます。なぜ死刑や無期懲役刑の求刑ではなかったのか。求刑の根拠を解説します。
●死刑ではないの?
最高裁昭和58年(1983年)7月8日判決(いわゆる永山基準)は、被害の大きさ(特に被害者の数)や犯行態様、動機、前科などを総合考慮して「極刑がやむを得ない」と認められる場合に限り、死刑を許容するとしています。
被害者が1人の事案は、そもそも死刑が選択されにくく、それでも死刑を選択するには、犯行態様として非常に残虐であることもそうですが、計画性なども非常に高い類型である傾向があるようです。
本件はたしかに残虐ではありますが、被害者が1人で、そもそも死刑が選択しにくかったと思われます。また、事前に「橋から落として殺害する」という計画があったとは認定しにくい事案と考えられます。
発端はSNSトラブルで、当初の目的は金銭の脅取と精神的制裁だったと考えると、実務上、死刑は選択しにくいとみられます。
●なぜ無期懲役でもないの?
不同意わいせつ致死罪(改正前は強制わいせつ致死罪)と殺人罪が重なる事案(被害者1名)で無期懲役が選択されるケースは、過去の裁判例をみると比較的多いといえます。
たとえば以下の裁判例では、いずれも無期懲役が選択されています。
・新潟地裁令和元年(2019年)12月4日判決:下校中の女児(7歳)をわいせつ目的で略取し、性的暴行後に窒息死させて殺害(死刑求刑に対し無期懲役判決)
・松山地裁令和5年(2023年)3月10日判決:職場の同僚女性をわいせつ目的で頸部を圧迫して抵抗不能にし、性的暴行後に絞殺
これらの事案はいずれも、被告人が性的欲望を満たす目的でわいせつ行為に及んでいます。
本件の場合、殺人罪については被告人が否認しており、殺意が認定できるか争われています。
また、殺意を認定できたとしても、橋の上で初めて形成され、「最初から殺すつもりだった」とは評価しにくい可能性があります。
また、本件のわいせつ行為は、性的欲望を満たす目的ではなかったと考えられる点も、無期求刑をしない選択に影響したのではないかと考えられます。
●「求刑27年」はどうやって算出した?
本件では、被告人は殺人罪・不同意わいせつ致死罪・監禁罪の3罪で起訴されているようです。
このうち殺人罪と不同意わいせつ致死罪の関係が問題となりますが、「1つの行為が2つの罪に当たる」(観念的競合)として、重い方の刑(基本的に殺人罪)で処罰される可能性があります(刑法54条1項)。
なお、わいせつ行為と殺害行為が1つといえるかどうか、という事案ごとの判断によるため、併合罪と扱われる可能性もありますが、以下は観念的競合とされた場合を考えます。
これに監禁罪が加わり、複数の罪を合算する処理(刑法47条・併合罪)が行われます。
刑法47条の規定では、有期刑の場合の上限は「最も重い罪の上限(殺人罪なら20年)の1.5倍(30年)」になります。
しかし、同条ただし書きで「各罪の上限の合計(殺人罪20年+監禁罪7年=27年)を超えてはいけない」という制限もあります。
今回の3罪の組み合わせでは、この合計がちょうど27年となる可能性があります。
このようにみていくと、検察官は、有期懲役の最高限度いっぱいを求刑したのでは?と考えられます。
●求刑を超える重さの判決を下すことは可能
なお、今回はあくまで「求刑」です。これは検察官の意見であり、裁判所を拘束するわけではありません。
裁判所は検察官の求刑意見に拘束されるわけではないため、無期懲役刑などを言い渡すこともできます。
ただ、検察官も類似の事件での量刑の傾向などを検討し、そのうえで求刑意見を述べているため、求刑以上の判決が言い渡されることは珍しいといえます。
また、仮にこれまでの量刑の傾向を大幅に超える判決を言い渡すのであれば、合理的な理由が必要と考えられます。
たとえば、懲役10年という検察官の求刑に対し、これまでの量刑傾向を大幅に超える懲役15年という判決を下したことについて、「具体的、説得的な根拠を示しているとはいい難い」として、懲役15年の判決を量刑不当として破棄した最高裁判例もあります(最高裁平成26年(2014年)7月24日判決)。
