―制度変更とデジタル化が追い風に、年に1度のイベントが生む持続可能な成長ストーリー―

 3月期決算企業の決算発表がほぼ終了し、今年も株主総会の季節がやってきた。東京証券取引所が3月期決算企業を対象に4月に行った調査によると、2026年の定時株主総会は6月26日に最も多く開催され、回答した企業の31.0%がこの日に集中している。

 そこで今回は、株主総会に関連したビジネスを手掛ける銘柄に注目したい。株主総会関連ビジネスは、法律(会社法)の知識や、「年に1回の失敗できないイベント」を任せられる実績が必要なため参入障壁が高いうえ、東証主導の「PBR1倍割れ改善」「英文開示の義務化」「アクティビスト対応」などで新たなビジネスチャンスも広がっている。ニッチな市場ながら注目すべきポイントの多いビジネスだ。

●株主総会はなぜ6月に集中する?

 株主総会は、言うまでもなく、株式会社における最高意思決定機関だ。会社法上、株式会社においては必ず設置する必要があり、取締役や監査役の選任・解任、定款変更、重要な経営事項の決議などがこの場で決定される。

 会社法では株主総会で議決権を行使できる株主を確定する「基準日」を定めており、基準日に設定された株主が権利を行使できる期間は「基準日から3カ月以内」とされている。そのため、3月末を決算期(基準日)とする企業は6月末までに定時株主総会を開催することになる。企業は月曜日や、総会開催の期限間際である29~30日の開催を避ける傾向があることから、今年の曜日の並びでは24~26日に集中しやすくなり、今年も全体の約7割の企業がこの3日間に総会を開くことになる。

●大きく変化した株主総会のあり方

 かつては「シャンシャン総会」と揶揄され、お決まりのシナリオ通りに数十分で終了していた株主総会だが、ここ数年でその姿は大きく変化している。アクティビスト(物言う株主)の台頭や東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要求、コーポレートガバナンス・コードの浸透、更に英文開示の義務化などが背景にあり、これらは単なる形式的なルール変更にとどまらず、企業に対して株主対策や情報開示の高度化を義務づけるものとなっている。

 また、デジタル化も株主総会に大きな変化を促している。19年12月に成立した改正会社法により総会資料の電子提供制度が創設され、23年3月以降に実施された総会からは「株主総会資料の電子提供制度」が原則義務化された。更に、日本の機関投資家や海外投資家がスムーズに議決権を行使できる「議決権電子行使プラットフォーム」の導入や、株主総会のオンライン開催の増加などもあり、総会を開催する企業側もデジタル対応が迫られている。

●デジタル化でビジネスチャンス拡大

 こうしたデジタル化は、これまで招集通知の印刷で稼いできた株主総会関連ビジネスを展開する企業にとって、マイナスの面ばかりではない。株主総会に関する紙の印刷ボリュームが減った一方で、ウェブサイトへの正確なアップロードやセキュリティー対策、電子化に伴う複雑な法務コンサルティングの需要が増加しており、印刷という「労働集約型」から、システム利用料やコンサル料という「高利益率ビジネス」への転換が進むことにもつながっている。

 企業にとって、株主総会は「今年は予算がないからスキップする」というわけにはいかない法律上の義務だ。しかも、一度デジタル化を進めた企業は、翌年以降に元の「紙とリアルだけ」のアナログ運営に戻ることは極めて考えにくい。株主総会関連ビジネスは、顧客獲得コストに対して、極めて長いライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が見込めるビジネスであり、成長性が期待できる分野といえよう。