人口309万人減でも日本は“過密国家” 東京が高齢者であふれる街に…国勢調査から考える「これからの豊かさ」
5年に1度実施される国勢調査の速報値が発表されました。新聞各紙は「人口309万人減 過去最大」「減少率2.5%」といった見出しでこの結果を報じ、日本の総人口が1億2304万人になったことが明らかになりました。この数字を受け、私たちは日本の未来にどのような思いを巡らせるべきなのでしょうか。構想日本の加藤秀樹代表は、人口減少そのものを問題視するのではなく、私たちがこれからどんな社会を作っていくのか、その根底にある「豊かさの価値観」について考えるべきだと指摘します。
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明らかになった日本の人口動態
今回の調査では、日本の人口が過去最大の減少幅を記録したことが示されました。この傾向は全国的なもので、東京と沖縄を除く45道府県で人口が減少しています。
例えば大分県では、人口が約108万人となり、前回調査から4万7000人減少。減少率は4.18%と、全国平均の2.5%を大きく上回っています。
さらに注目すべきは、これまで地方の人口を受け止める「ダム」の役割を果たしてきた政令指定都市でも人口減少が始まった点です。
札幌や広島、そして日本一の人口を抱える横浜までもが国勢調査ベースで戦後初めて減少に転じており(※福岡など一部の例外を除く)、人口減少が日本全体を飲み込む大きな潮流となっていることがうかがえます。
日本は本当に「小さな国」になったのか?
人口減少や世界順位の低下というニュースは、ともすればネガティブな印象を与えがちです。しかし、加藤氏はいくつかのデータを基に、異なる視点を提供しています。
まず、現在の日本の人口は約1億2000万人で、イギリスやフランス(ともに約6900万人)、ドイツ(約8000万人)といったヨーロッパの主要国と比較しても依然として多い水準にあります。
日本の歴史を振り返ると、明治元年(1868年)の人口は約3300万人でした。それが100年後の1967年には1億人を突破し、わずか1世紀で人口が3倍になるという驚異的な「急成長」を遂げました。
2010年頃の約1億2800万人をピークに、現在はそこから、なだらかな減少フェーズに入っている状態です。
さらに重要な指標が、人が住める土地(可住地面積)あたりの人口密度です。国土の約7割が山地である日本は、この指標で見ると世界有数の「過密国家」です。
日本の1平方キロメートルあたりの人口密度(可住地面積)は1100~1200人に達し、イギリス(約370人)、ドイツ(約340人)、フランス(約190人)などと比較すると、3倍から6倍以上という圧倒的な高さです。
この事実を踏まえると、人口が減ることを単純に「困ったこと」と捉えるのは早計かもしれません。
人口減少は自然なプロセス? 幸福度との関係
加藤氏によると、国の発展と人口動態には一定のパターンが見られます。インフラが整備され、子どもの死亡率が低下して寿命が延びると、人口は一時的に急増します。
やがて社会が成熟すると、人々は仕事や趣味といった個人の時間を優先するようになり、晩婚化や少子化が進むことで出生率が低下。高齢者の比率が高まり、人口は減少に転じます。これは多くの先進国が経験する自然な流れだと言えます。
また、国連が発表する世界幸福度調査では、フィンランド、デンマーク、アイスランドといった人口数百万人の国々が常に上位を占めています。このことから、国の規模や人口の多さが、必ずしも国民の幸福に直結するわけではないことがわかります。
「コンパクトな国」には、それならではの豊かさがあるのです。
本当に目を向けるべき「2つの構造的課題」 では、人口減少において何が本当に問題なのでしょうか。加藤氏は、解決すべき本質的な課題は次の2点にあると指摘します。
1. 急激な高齢化による世代間のアンバランス: 人口構成の中で高齢者の比率が急激に高まることで、社会保障制度などに歪みが生じること。
2. 東京への一極集中: 地方から東京へ若者が流出し続けることで、地方の活力が失われ、国全体のバランスが崩れてしまうこと。
実は、日本で将来人口が減ることは、1976年の時点ですでに予測されていました。それにもかかわらず、年金制度をはじめとする社会の仕組みは、人口が増え続けることを前提とした「右肩上がり神話」から抜け出せていません。
人口が減っているのに、いまだに新しい公共施設や道路、新幹線の延伸、さらには大学までが増設され続けている現状があります。これからは、古くから地域の公共空間であった寺社などをコミュニティの拠点として活用するなど、「規模の縮小」に合わせた発想の転換が求められています。
東京が膨大な高齢者が住む都会に
東京への人口流出の主なきっかけは、大学進学と就職です。多くの若者が「地元には魅力的な仕事が少ない」と感じ、都会のライフスタイルに憧れを抱きます。
地元に就職先がないのは大きな問題です。しかし、企業の事務職で働くのが良い就職の形だという価値観も変えるべきではないでしょうか。
アメリカでは現場の肉体労働者の給料が急上昇しています。また、日本の地場産業の職人や農業は人手不足です。
加藤氏は、人口数百人、数千人のヨーロッパの小さな町でも、住民たちは「自分の町が世界一だ」と心から誇りに思っています。彼らは生まれた場所で働き、その土地のものを食べ、歴史を大切にすることに高いプライドを持っています。
日本の地方も、自分たちの町の魅力を掘り起こし、子どもたちにそのすばらしさを伝え続けることが重要です。地元への誇り(シビックプライド)を育むことが、若者の流出を食い止め、ひいては地域に固有の仕事を生み出すことにも繋がります。
ちなみに、東京の出生率は0.96と全国で最も低く、今後は地方から移り住んだ人々が一斉に高齢化することで、膨大な高齢者が住む都会になるのです。その結果、深刻な医療・介護問題を抱えることになります。「東京の危機」なのです。
そんな今こそ、私たちは自分の住む町にプライドを持ち、その価値を再認識すべき時なのかもしれません。人口減少という数字に一喜一憂することなく、これを機に、社会のあり方や幸福の価値観そのものを見つめ直すこと。それこそが、日本の未来をより豊かにする鍵となるでしょう。
