ニュージャージー州のニューアーク国際空港にひっそりとたたずむW杯の宣伝板(撮影:谷中太郎氏)

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◆開幕直前にもかかわらず、静まり返るアメリカの街
オリンピックを上回る世界最大のスポーツイベント、サッカーのワールドカップ(W杯)が6月11日から始まる。23回目となる今回はアメリカ、メキシコ、カナダの3カ国の共催で、出場国が48にのぼる過去最大の大会となる。世界一の経済力を誇るアメリカでのサッカー人気を高め、大会100周年となる次回につなげるという国際サッカー連盟(FIFA)にとっては極めて重要な大会だ。しかし3か国カ国の現場は必ずしも「期待一辺倒」ではない。桁違いに高騰したチケット、外国人をあからさまに排除するトランプ政権、脆弱な交通網でファンが試合会場にまでたどり着けないのではないかという不安など、すっきりしないことだらけで、開幕直前にもかかわらず盛り上がりに欠けている。

2014年のブラジル大会を、開催の2年ほど前から取材した。今も鮮明に覚えているのは、リオデジャネイロのコパカバーナビーチや広場、繁華街がワールドカップ一色で彩られていたことだ。熱気にあふれ、市民の会話のほとんどがワールドカップのことだった。

子供も大人も、男性も女性も、富裕層も貧困層も、分け隔てなくサッカー談義に花を咲かせていた。開幕に向けた期待感が日に日に高まる様子を見て「ワールドカップとはこういうものなのか」と、試合を待たずして実感した。

今回は、ニューヨークを中心に開幕までの様子を見ているが、’2014年との違いには驚くばかりだ。直前になっても脈動が感じられない。カウントダウンを刻む告知板はごく一部にしかなく、街全体がワールドカップに染まるなどという様子は見て取れない。サッカー人気が高いブラジルと、他のスポーツの方が人気があるアメリカとの差を鑑みたとしても、あまりにも「静まり返って」いる。

ブラジル大会を共に取材したアメリカ人のスポーツジャーナリストは「これほどまでによそよそしい雰囲気を感じたことがない」とため息をついていた。

大会は6月11日から7月19日まで開かれる。今年、アメリカは建国250年となる。この記念すべき独立記念日(7月4日)はW杯の只中で迎える。試合はアメリカ11、メキシコ3、カナダ2の計16都市で行われる。複数の国での開催は20‘02年の日韓共催以来のことだ。1998年以降、出場枠は32だったが、今回は48に増えた。試合数は64から104に劇的に増えた。これほどまでの大規模開催でありながら、開催地が盛り上がらないのは異常事態といってもいい。

◆最も高いものは約524万2230ドル ……素人は到底手に入れられないW杯チケット

しらけムードの原因の1つにチケット価格の高騰がある。「天文学的な数字」まで跳ね上がり、地元市民の観戦はかなわぬ夢で、大会が身近なものとは思えないのだ。

今回の大会でFIFAは、ホテルや航空券同様、需要によって価格が変わる「ダイナミック・プライシング」という制度を導入しチケットを販売している。これによりチケット価格が桁違いに高騰した。グループリーグのチケット価格は60ドル(約9540円)から始まったが、600ドル(約9万5400円)以上にまで上昇した。FIFAが4月に公式販売した決勝のチケットは額面価格が3回も引き上げられ1万990ドル(約174万7410円)までになったが、5月7日に販売が開始された最も高額なチケット価格は3万2970ドル(約524万2230円ドル)にのぼった。

前回のカタール大会での最も高いチケットが約1600ドル(現行レートで換算すると約25万円)だったことを考えると、高騰ぶりは従来とは比較にならない水準だ。

決勝はニューヨークからハドソン川を渡ったニュージャージー州イースト・ラザフォードの「メットライフスタジアム」で開かれるが、あまりの高騰ぶりにニューヨーク州とニュージャージー州の司法長官が5月27日、FIFAのチケット販売について調査を開始したことを明らかにした。