日本とフランスでこんなに違う「犬との関わり方」。店や電車にも同伴、トイレのしつけは甘い
「動物好き大国」として知られるフランス。なかでも犬好きは多く、レストラン店内や電車にまで犬を同伴するケースも多いそう。そんなフランスでは、どのように社会の中に犬を溶け込ませているのでしょうか? フランス文化研究者であり、フランス人の夫と暮らすペレ信子さんに、フランスの友人たちとその犬たちの関係から見える「ペットとの関係性」について伺いました。

フランスと日本の犬の「放し飼い」についての考え方

私の両親が子どもだった頃には、日本でも放し飼いの犬が歩いていることがあったそうですが、現在日本では、家のなかやドッグランなどといった特定の場所以外で、放し飼いされているのを見ることはありません。
フランスの規定を見てみると、「基本的には市街地ではリードをつける」「山や森などではその自治体の規則に従う」とあります。自然のなかでもリードなしにできるのは「コントロール可能であるかどうか」が鍵になっていて、呼び戻しができる、100メートル以上飼い主から離れていないといった基準があるのだそう。(※)
また、4月15日から6月30日は山のなかでも鳥の営巣、哺(ほ)乳動物の出産・子育て時期であることを考慮して、犬のノーリードが認められていないそうです。犬がほかの動物を追いかけて怖がらせてしまうからなのでしょうね。
※ 「フランス農業・漁業法典」Code rural et de la pêche maritimeより
フランスの友人の完璧な「犬のコントロール術」

「犬がコントロール可能かどうか」については、フランスで犬を飼っている友人たちを見ると感心することがよくあります。
普段は犬を「かわいい、かわいい」と大げさに褒めたり、キスしたりしているのですが、犬が人間を困らせるような行動をとったとき、断固としてリーダーの姿勢を見せる飼い主がフランスには多いと感じます。
あるとき、友人たちと連れだってそれぞれの犬と森に散歩に行きました。それまで一緒にランチをしていたので、テーブルの下で静かにしていた犬たちは、森の散歩がうれしくて興奮。
友人の犬はブルマスティフという犬種とボクサー犬のミックスで体重は50kgありました。普段はおとなしくて吠えることもなく、従順そうでしたが、森に入ってしばらくすると興奮したせいか、自然に戻ったように吠(ほ)え始めました。50kgの犬が猛然と吠えているのはかなりの迫力です。
それに気づいた飼い主は、華奢な女性だったのですが、彼女は自分の犬の近くまで行って、大きな声でその名前を呼びながら、人差し指を立てておすわりの指示を出しました。
犬は数秒間吠え続けましたが、飼い主の迫力ある声と真剣な眼差しに、腰を落としておすわりし、吠えるのをやめました。みんな「ほぉ〜」と感心してその光景を見ていました。
田舎では家族内での役割をもっている犬が多い

昔、夫の実家で飼っていた犬は人なつこくて愛嬌たっぷりでした。温和な性格でしたが、家のなかではまるで、義父をリーダーの頂点とみなしてグループの序列を意識しながら行動しているようでした(人間にとっては、義父より義母がリーダー的存在でしたが)。
あるとき、おじいちゃんがふざけながらやって来て、まだ小学生だった夫の背中を驚かすように押そうとしたとき、テラスで寝そべっていた犬がそれを察知してすばやく走り寄り、おじいちゃんの喉元を目がけて飛び上がって威嚇(いかく)したそうです。噛(か)んだりはしなかったのですが、「これ以上、子どもに手を出すな」という警告だったよう。
また、フランスの田舎の方では、犬を複数匹飼っている家も多く、そういった家では、それぞれの役割があるところも多いようです。
たとえば、ある親戚の家では、家畜を飼っているので、大型犬は外にいて異常があったら知らせる仕事を担っています。「でも実際は、人なつこくてだれにでも尻尾をふってなでてもらってる」とのことですが、その体の大きさだけでも少しは番犬の意味があるかも、と期待しているそう。
フランス人が「犬のトイレのしつけに甘い」理由
そんなフランスの犬事情ですが、同時に「フランスの犬はトイレのしつけができていない」とも言われます。
日本では、社会に迷惑をかけないよう犬をしつけているのに対し、フランスは飼い主と犬の関係にしつけのポイントがあるように感じます。飼い主が犬をコントロールできるから、公共の場に連れて行く。そして、コントロールできない犬は、電車やレストランに来ていないのだと感じます。
そういう意味では、フランスの犬のトイレのしつけが甘いのは、飼い主がそれを重視していないからなのかもしれません。
