消費期限前でも廃棄される「3分の1ルール」にあらがう…バレンタインチョコを2月15日から売る会社の「仕組み」

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「私たちのバレンタインは2月15日から始まります。」

ついこの前、年が明けたと思ったら、もう新学期がスタート。正月、節分、バレンタイン、ひな祭りと家族で、カップルでと、楽しむイベントも多かったが、イベントごとに用意される、例えば店頭に残ったおせちや恵方巻き、バレンタイン限定のチョコレートなどは、イベントが終わるとどうなるのだろうか。

総務省統計局の調べによると、チョコレートの購入はバレンタインデー直前の平日が最も多く、2月14日を過ぎると急激に落ちるという。となれば、バレンタイン限定のチョコレートは、賞味期限内であっても、メーカーに返品されたり、廃棄されることになる。

過去には、SNSに大量の恵方巻を廃棄した写真が投稿され、衝撃を与えたこともあった。食品ロスの対策を問う声が高まり、企業も自治体も予約販売や需要予測からの、生産コントロールを行ってはいるが、ロスをゼロにするのはまだまだ難しい。

そんな中、「生産数で調整しきれない分は、販売に回せばいい」という考えのもと、バレンタインデーが過ぎた2月15日から、余ったチョコレートの販売に乗り出した会社がある。

2022年2月15日、「私たちのバレンタインは2月15日から始まります。」というキャッチフレーズを掲げたクラダシ。東急プラザ渋谷・表参道原宿の2施設で、バレンタインチョコレートのロス削減を目的としたポップアップショップを3日間限定で展開し、大きな話題を呼んだ。

もともと販売していた割れチョコレートは、この2月15日からのキャンペーンをきっかけに売り上げが拡大。ちなみに2026年は、売り上げは約4倍に、出品企業の中には、月次売り上げが約25倍に伸びたケースもあり、フードロス削減にとどまらず、販売に苦戦していた企業の“レスキュー”にもつながった。

今年はポップアップに代わり、4日間限定の特設サイトを開設。上質なクーベルチュールの割れチョコレートが並び、多くのユーザーを集めた。さらに、正月用のおせちは昨年12月25日、「生産数−受注数」で余った分が販売され、数時間で完売。いずれも、クラダシがなければ廃棄されていた可能性の高い商品ばかりだ。

賞味期限内なのに廃棄される食品

クラダシのECサイトで扱うのは、イベントなどの季節商品だけではない。メーカーとスーパーやコンビニなど小売店との狭間で、賞味期限内にもかかわらず、廃棄処分とされるものがある。それらをお得な価格で、スピーディに届ける。

クラダシの仕組みはこうだ。

味、質、安全性に問題がないにもかかわらず、「季節商品」としての旬が過ぎてしまったものや、パッケージや内容量の変更、少しの傷や割れなどで「規格外」とされたもの「3分の1ルール」により流通からはじかれてしまった商品をECサイトでお得に販売。各商品ページで、お得な理由(クラダシへの出品背景)を説明し、納得したうえで購入できる。さらに支払った金額の一部がクラダシを通じて、社会貢献活動に寄付される(負担はクラダシ側が持つ)。

売り手側の事情で廃棄されてしまう商品を、ユーザーが安く購入する機会を作って、「もったいない」を解決しながら、社会貢献にまでつなげる仕組みなのだ。

消費期限前でも廃棄される「3分の1ルール」

季節商品や規格外については「期間が過ぎれば店頭に並べられない」「きれいな商品と並べても売れない」など、店側の「置いておけない」事情も理解できるが、「3分の1ルール」とは、何だろう

実はこれは法律ではない。メーカーと小売店の間で長く続いた慣習で、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、製造から最初の3分の1を超えると賞味期限が残っていても廃棄される可能性があるというもの。

つまり、1月1日に製造された賞味期限6月30日のものは、2月末日までに出荷されないと、売り先がなくなってしまう。

こうした行き先のない商品を、クラダシがメーカー側の希望価格で売ってくれる。

クラダシが扱うのは、工場製品ばかりではない。生鮮食品も豊富だ。例えば、形や色が悪かったり、サイズが揃っていないだけで、味も新鮮さも出荷されるものとなんら変わりないフルーツや野菜、形状が不揃いの肉や魚介、頭が取れてしまった干物なども扱う。

さらにクラダシの「フードロス」への取り組みは、商品だけに留まらず、「かくれフードロス」と呼ばれる部分にも、広がる。

「かくれフードロス」とは、私たちが普段あまり見ることはない、製造段階で出る、酒粕やおからのようなものだ。酒粕もおからももちろん食べられる。だが、製造時に自然発生的に出る量に対して、消費が全く追い付かない。そのために、メーカーは産業廃棄物として処分しなければならない。

「かくれフードロス」がブリュレやタルトに

クラダシは、こうした捨てられている未利用素材を使い、有名シェフたちとコラボした自社ブランド「GREEN DOLCE(グリーンドルチェ)」を立ち上げた。

2025年11月には、「ぎゅっと濃厚おいもメープル塩バターテリーヌ」「パリッととろける大人のおいもブリュレ」「こんがり焼いたおいもとチーズのタルト」「コクうまバターとシナモン香るおいもバターサンド」の4種類を販売 。

これらは、干し芋を作る際に出る残渣を使っている。干し芋に使うのは中心部分だけ。そのため、食べられるのに捨てられていた残りは、なんと全体の約50%にもなる。おいしい芋ならば、中心に劣らない甘みも香りもあり、芋の持つ特性も変わらない。にもかかわらず、捨てられていた「もったいない」を見事においしく、そして美しく蘇らせた(現在はすべて完売)。

社員49名でお菓子開発からエネルギー事業まで

こうしたGREEN DOLCE事業は、社員の発案から立ち上がったものだ。2014年創業のクラダシは、社員数がわずか48名(2026年4月現在)。正真正銘の少数精鋭の集まりだとはいえ、この人数で、どうやって広がり続ける事業を回しているのか。

主軸はECサイトの運営だが、その他に、「GREEN DOLCE」などのプライベートブランドの開発、サブスク型の冷凍宅配弁当ビジネス、EC物流サービスの提供や在庫管理のサポート、ブランディングやマーケティング支援までやっている。

また、2025年1月からは電力の「もったいない」を削減するための太陽光エネルギーを蓄電する再生可能エネルギー事業にも乗り出した。

ほかにも大学生や大学院生を全国の農家などに派遣して、収穫支援をしながら一次産業や地域経済を学ぶ短期インターンシッププログラム「クラダシチャレンジ」、大学での特別講義や大学研究室との共同研究の実施、中高生に向けたフードロス課題の特別授業など、次世代に向けた教育プログラムも実施している。

これだけのビッグビジネスを、48名で運営可能にするには、なにか秘策か秘密があるのでは……。ずばり、質問してみると、そこには、クラダシならではの「もったいない」の発想があった。

後編「社員のモチベーションが高い理由は…フードロス対策をビジネスにした「クラダシ」のルール」の、クラダシ代表の河村晃平さんのインタビューで詳しくお伝えする。

【後編】社員のモチベーションが高い理由は…フードロス対策をビジネスにした「クラダシ」のルール