「NISA貧乏」急増も…ほったらかしで大丈夫?30代、40代が陥る『新NISAの落とし穴』
2024年1月に新NISAがスタートしてから約2年。「とりあえず始めてみたのはいいけれど、このまま続けていて大丈夫なのかな?」「どのタイミングでどんなふうに見直せばいいんだろう」と不安を感じている人もいるかもしれません。
また、将来への不安から「とりあえずNISA……」と投資にお金を回し日常生活が圧迫されている状態を表す「NISA貧乏」という言葉が、衆議院の財務金融委員会でも取り上げられ、話題になりました。
そこで今回は、新NISAの基本を改めて振り返るとともに、積立シミュレーションや見直しのポイント、今後相場が大きく下がったときの考え方まで分かりやすく解説します。
新NISAには2つの投資枠がある
そもそもNISAとは2014年1月に日本に導入された「少額投資非課税制度」のことを指します。この制度が、2024年1月の改正によって一気に進化したのを機に「新NISA」と呼ばれるようになり、以来、この呼び方がすっかり定着しています。
NISAは、「NISA口座」と呼ばれる特別な口座を開設し、そこで新たに株や投資信託を購入すると、そこから発生した売却益や配当などの利益が非課税になるという制度です。新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの投資枠があり、併用して活用することができます。
「つみたて投資枠」は、金融庁が定めた基準を満たす投資信託を積立で購入する場合に利用でき、年間で最大120万円まで非課税で投資ができます。一方の「成長投資枠」では、投資信託のほか、個別の株やETFと呼ばれる上場投資信託なども対象となり、こちらは年間で最大240万円。2つの投資枠を合計すると年間360万円まで非課税で投資ができるということになります。
投資初心者の王道は「投資信託の積立」
NISAの活用法は挙げればキリがありませんが、新NISAをきっかけに初めて投資に挑戦する人や、長期で安定的に増やしたい人にとって王道といえるのが、投資信託の積立です。仕事や家庭で忙しく、資産運用にじっくり向き合う時間が取りにくい30〜40代にぴったりの方法といえるでしょう。
そのなかでも特に人気を博しているのが、世界中の株に分散投資をする全世界株式型の投資信託(オールカントリーを略してオルカン、と呼ばれています)や、「S&P500」と呼ばれるアメリカの株式指数に連動するように運用される投資信託です。海外の株で運用することによる値上がりへの期待と、投資信託ならではの分散投資による安定性から、「投資を始めるならとりあえずこれを積立で買うべき」と言われることが多いため、実際にこれらを積立しているという人は多いのではないでしょうか。
2024年1月から毎月3万円を積立していたら?
では、新NISAがスタートした2024年1月から約2年間、毎月3万円を積み立てていたら、実際にどのくらい資産を増やすことができたのでしょうか。
ご存知のように、株も投資信託も値動きのある金融商品で、どのくらいのリターンが得られるかは、その時々のマーケット情勢によって大きく異なります(状況によってはマイナスになることもあります)。そんな中、直近約2年について見てみると、日経平均株価は約3万円台から5万円台へと大きく上昇しています。オルカンの値動きを表す指数を見ても、年間のリターンが20%を超えるなど絶好調。毎月3万円を2年間、年間のリターン20%で積み立てると、72万円の元本が86万円へと、約14万円増える計算になります。NISA口座を通じての積立であれば非課税ですから、税金が差し引かれることもありません。
積立の効果は年月とともに膨らんでいく
この14万円を多いと考えるか、少ないと考えるかは人それぞれですが、こうした積立の効果は、年月が経つほど複利効果によって大きくなっていきます。もしもこのまま年間20%のリターンが続いた場合、同じ3万円を10年間積み立てると、元本360万円が1,017万円へと、なんと657万円ものリターンが得られる計算になります。
ただしこれはあくまでも「絵に描いた餅」。現在のような大きな上昇局面がこの先ずっと続く保証はどこにもありません。むしろ、上がる時期もあれば下がる時期もあるのが当たり前。しかも、積立には価格が下がったら下がったなりのメリットがあります。それは何かと言うと、毎月一定額を積立するということは、自然と「価格が上がれば少なく、価格が下がれば多く」買うことになるということ。その結果、長期で積み立てれば積み立てるほど、平均の購入価格が下がりやすくなり、安定して利益が出るようになっていくのです。
最大のポイントは「無理なく長く続ける」こと
特に30〜40代は、老後まで20年、30年の時間が残されているため、十分に投資期間を確保できます。加えて、新NISAになって非課税保有期間が無期限になるという追い風も吹いています。複利効果を最大限に味方につけるためにも、目の前の価格の上下に一喜一憂せず、コツコツと「長く続ける」ことこそが、積立という手法で大きく増やすための最大のポイントといえます。
でも、一方で、マイホームの購入や子どもの教育、転職など大きなライフイベントが目白押しなのもこの世代。あまり無理をして積立に回すと、生活に支障をきたしてしまう可能性もあります。ときどき耳にするのが、直近のマーケット情勢が好調であるがゆえに「120万円の年間投資枠をめいっぱい使わないと損だから」と生活費を必要以上に切り詰めて投資に回しているケースです。将来のためにお金を増やすことももちろん大切ですが、目の前の生活を充実させるためにお金を使うことも生きたお金の使い方につながります。マーケット情勢が好調だからこそ、増やすことに意識が向きすぎる落とし穴にはまらないようにしたいところです。
積立内容を見直すべきタイミングは?
目の前の価格の上下に一喜一憂せず、コツコツと「長く続ける」のが投資信託の積立の大前提ですが、かといって何年もチェックせずにほったらかしは避けたいところです。「頻繁にいじることはしないけれど、定期的に観測は続ける」というスタンスを保持しつつ、必要なときには積立金額や商品の見直しを行いましょう。
まず、最低限行いたいのが、年に1度のリバランスです。リバランスとは、資産全体を見直し、割合を調整すること。オルカンやS&P500がずっと好調で、気づいたら2,000万円に達していたという場合、それはそれで喜ばしい反面、仮に預貯金が500万円しかなかったら、値動きの大きな海外の株が資産の8割を占める状態になってしまいます。こうした場合には、利益の確定と今後の値下がりへの備えのために、一部を売却してバランスを調整しましょう。30〜40代であれば、預貯金を含めた資産全体における海外資産の割合は多くても5割くらいをひとつの目安としましょう。
値動きが気になりすぎるのも見直しのサイン
また、値動きが気になりすぎるようになったときも見直すべきタイミングです。新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をあわせて1,800万円まで(うち、「成長投資枠」は1,200万円まで)投資ができますが、これはあくまでも投資額。運用が順調であれば、実際の運用額はこれ以上になることも十分に考えられます。
加えて、運用額が増えれば増えるほど、日々の値動きは大きくなります。この値動きが気になって何度も確認してしまうようであれば、それは、積立内容が自分の許容範囲を超えているサインかもしれません。一部を売却して現金化するなり、積立額を減らすなり、値動きの小さい商品に入れ替えをするなりして、安心して「年に一度のリバランス以外はほったらかし」できる状態にすることを意識してみましょう。
もしも暴落がやってきたら?
そして、投資をする以上、切っても切り離せないのが暴落のリスクです。
いくらそれまで好調であっても、暴落はある日突然やってきます。ひとたび下落が始まると、その急激な値下がりに驚いた投資家が慌てて「狼狽売り」をするので、株価はさらに暴落していくことに。そんなときにはどうしても「今すぐ売ったほうがいいのでは」と焦ってしまうものですが、一度「目の前の生活に影響が出るのか」を冷静に考えてみてください。そして、 “感情”ではなく“目的”で、どう対処すべきかを判断しましょう。
もしも10年、20年後の老後資金や、すぐに使う予定のない余裕資金を積立しているなら、短期的な下落によって方針を変える必要はありません。むしろ、先ほどもお伝えしたように、価格が下がることは、平均の購入価格を下げ、将来の利益を大きくするチャンスになる可能性もあります。そして、こちらも繰り返しになりますが、暴落の時に慌てないためにも、定期的にリバランスなどを通じて積立内容の見直しをしておくことが肝要なのです。
新NISAは、あくまでもひとつの「制度」です。その制度をどんなふうに活用するかはみなさん次第。ライフステージや資産全体を見渡したうえで、「無理なく長く続けられる」スタイルを確立していきましょう。
