最初から「施設介護」を選んでいたら13年で2,000万円以上かかっていた?…親の介護費用の現実
親の介護は、誰にとっても決して他人事ではありません。もし介護が必要になったとき、その費用をどのように捻出するのか、考えたことはありますか? 本稿は、岩手に暮らす認知症の母(82歳・要介護4)を、東京から通いで支えて14年。介護作家・ブロガーとして活動する工藤広伸氏の著書『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』(翔泳社)から、一部を抜粋・再編集。離れて暮らす親を支える「遠距離介護」という視点から、知っておきたい介護費用のポイントをご紹介します。
あなたの親は、介護費用を準備できていますか?
介護施設にかかる月額の平均費用13.8万円を、介護平均期間の4年7か月で掛け算すると、総額で759万円になります。遠距離介護が始まる時点で、多くの人は親が介護費用を準備できているか把握できていませんし、親が自宅で暮らしたいか、施設に入りたいかといった意思の確認もできていません。
まずは759万円を介護費用の目安として、親はお金の準備ができているか、あるいは子が自分の生活に支障なく、費用を立て替えられるか考えてみましょう。
何も情報がない場合、まずは在宅で遠距離介護をスタートし、少しずつ親の資産状況や意思を確認したうえで、介護施設への入居を検討するのが賢明な選択であり、親を介護施設に預けるしかないと決めつけないようにしてください。
工藤さん家の場合…最初から介護施設だったら、費用は2,000万円以上に!
遠距離介護が始まったとき、私は母の預貯金額を把握しておらず、介護施設にかかる費用についても十分な知識がありませんでした。手探りのまま遠距離「在宅」介護をスタートしたのですが、結果的に介護費用の大きな節約につながりました。
もし最初から認知症の母を介護施設に預けていたら、13年で2,000万円以上の介護費用が必要でした。そうなれば今頃は母の預貯金は底をつき、岩手の実家を売却して費用を工面する事態になっていたでしょう。
【押さえておきたいポイント】
■ 遠距離介護のスタート時点で、介護がいつまで続くのか分からない。
■ 介護施設にかかる月額の平均費用は13.8万円、介護の平均期間は4年7か月。
■ 親の預貯金を把握している割合は60代で約5割、50代で約4割。
[図表1]主な高齢者施設の費用相場
認知症になったら自宅での生活はムリ?――在宅なら介護費用は「施設の半分以下」で済む
介護が始まるきっかけの1位は認知症で、少しずつできないことが増え、自宅での生活が難しくなっていきます。
しかし遠距離介護の場合、認知症と診断された瞬間から自宅での生活はムリと考え、まだ十分自立できる状態であるにもかかわらず、介護施設を利用するしかないと判断してしまう方がいます。
親の財産状況を把握し、親が施設を望んでいたり、子の経済援助で介護施設に預けられたりできればいいのですが、そうでない場合はまず、施設の月額平均費用13.8万円と在宅5.2万円を比較しましょう。介護費用は施設の半分以下で済むことが多く、遠距離でも在宅介護から始めるほうが得策です。
工藤さん家の場合…最初は5万円、直近は10万円を超えた介護費用
わが家の遠距離介護にかかった月額平均費用(交通費含む)は、最初の5年間は5.3万円、次の4年間は8.8万円、直近の4年は10万円を超えました。
遠距離介護の初期段階では親の介護度が低いことが多く、介護保険の支給限度額(1か月で利用できる介護保険サービスの上限)も低く設定されているため、費用負担は1 割〜3割で済むもののサービスはあまり使えません。その結果、子が帰省して遠距離介護をする頻度を増やさざるを得ず、交通費がかさむ傾向にあります。
【押さえておきたいポイント】
■ 遠距離介護を始めるにあたり、親を呼び寄せる、Uターンする、施設利用など重要な判断には時間がかかると考えておく。
■ 在宅介護にかかる月額の平均費用は、月5.2万円。
■ グラフのように、介護度が低いうちは在宅介護、次第に施設介護の割合が増える[図表2]。
[図表2]介護を行った場所(要介護度別)
