深夜の防災無線「4歳と2歳の子ども捜して」 、行方不明者の発見まで放送すべきだった? さいたま市の対応に疑問の声も
埼玉県さいたま市で行方がわからなくなっていた4歳の女の子と2歳の男の子のきょうだいが10月9日未明に見つかり、無事に保護された。警察の要請を受けた市が、その30分ほど前に防災無線で市民に捜索の協力を呼びかけていた。
これが報じられると、2人の無事を喜ぶだけでなく、「発見した」ことまで防災無線で伝えたのかという点に関心が集まった。見つかったことを知らずに、きょうだいを捜していた人がいたとされるからだ。
さいたま市は弁護士ドットコムニュースの取材に対して「見つかったという防災無線は流さなかった」と答えた。どうしてなのだろうか。
●「見つかったのであればちゃんと知らせてほしい」
2人は10月8日午後7時40分ごろ、さいたま市北区で行方がわからなくなり、警察が捜していた。市は警察から頼まれて、同日午後11時40分頃に防災無線で、2人の服装や名前などの情報とともに、迷い人の捜索を依頼した。
翌9日午前0時10分ごろ、警察官が2人を発見した。埼玉新聞WEB版によると、「この夜、さいたま市は冷たい雨が降り続き、8日午後11時の気温は15度。深夜に流れた防災無線を聞いて、幼いきょうだいを心配し、付近の公園などを探す市民の姿もあった」という。
記事のYahoo!ニュースのコメント欄には、呼びかけに応じて捜したと思われる人からの投稿が寄せられた。
「気になって1時ぐらいに周遍回ってみたけど、どうりで誰もいないわけだ。防災無線から20分ぐらいで見つかったのであればちゃんと知らせてほしい」というコメントに、3.2万件の「共感した」というリアクションがついた。
●「行方不明の放送に関しては原則として日没まで」
さいたま市防災課は弁護士ドットコムニュースの取材に「発見したという放送は防災無線で流さなかった」と答えた。
防災無線の運用や放送の基準は、市の「防災行政無線放送基準」に規定があるという。
「行方不明の放送に関しては、原則として日没までです。ただし、今回は緊急性が高いこともあって、行方不明者の発見協力の放送をしました。発見に関しては、緊急ではないとして放送していません」
たとえば、警察から要請を受けて、日中に行方不明の呼びかけをして、日没までに発見されれば、見つかったこともその日のうちに防災無線で流すことがあるという。
また、放送して2日後などに見つかった場合は、発見の放送はしないそうだ。
●「深夜の放送うるさい」という意見も市に届いた
今回の防災無線について、さいたま市には、さまざまな意見が寄せられているという。
「夜間でもあり、深夜に放送することに対して、うるさいというようなご意見もありました」
防災無線の呼びかけのあった時間帯は真夜中であり、雨も降っていたという。無事に見つかったことを知らないまま、暗がりを歩くことで事故などのトラブルに巻き込まれないとも言えまい。
一方で、市民が寝静まった時間でも、子どもの命を優先して捜索の協力を呼びかけるという判断に関しては、誰も責められないはずだ。
深夜の「捜索呼びかけ」と「発見の報告」に関する今後の運用について決まっていることはないが、防災課は「いただいたご意見も踏まえて、よりよくしていきたいと思います」とした。
たとえば、各地の警察が登録者に送るお知らせメールでは、行方不明者の情報だけでなく、その発見の情報も配信されることがある。