映画「十一人の賊軍」、作品舞台・新潟でキャンペーン 木竜麻生「孝行している感覚」白石監督「キャストが一体となってくれた」
映画監督の白石和彌氏、女優・木竜麻生が２８日、新潟市内で映画「十一人の賊軍」（１１月１日公開）の取材会に出席。公開を１か月後に控えた作品への思いを語った。
山田孝之、仲野太賀がダブル主演を務める今作は、旧幕府軍と新政府軍による戊辰戦争が舞台。１１人の罪人たちが「決死隊」として砦（とりで）を守る任務に就く集団抗争時代劇で、「日本侠客伝」「仁義なき戦い」シリーズなどを手がけた脚本家・笠原和夫さんが１９６４年に執筆した幻のプロットが原案となっている。
白石監督は「笠原さんは根本の発想が天才なので。それがひしひしと伝わってきた」と原案を読んだ当時のことを回想。６０年越しの公開が実現したことに「笠原さんは東映だけでなく日本映画にとって偉大な脚本家。その名前を汚してはいけない。（映画化は）笠原さんの名前があったから成立した企画でもあるし、それをちゃんと僕が成就できたのか。まんじりともしない感じです」と現在の心境を口にした。
新潟・新発田市出身の木竜は「（作品に）参加したいなと思っていたら白石さんがお声がけしてくださった。純粋にうれしい気持ちがありました。あとは一番自分の身近な人たちに伝えられるのは孝行している感覚があって。地元が舞台というのは新潟の人はうれしいと思うし、そこに自分が参加できるというのは私がすごくうれしかった」と笑顔。キャンペーンとして地元に凱旋し「これから公開なんだな、という感覚が増したというか。皆のところに届くんだなと。緊張も不安もありますけど、お客さんに見てもらえて映画になるので。ちゃんとその日が来ると良いなと期待しています」と声を弾ませた。
木竜が演じるのは、新発田藩家老・溝口内匠（阿部サダヲ）の娘・加奈。役について「（作中で）起こる出来事や時代の中での空気などに翻弄はされていくんですけど、時間の流れのなかで彼女が決めたことが脚本のなかで、彼女のなかで動いていて。そこはすごく逃してはいけないところではありました」と分析。「当時の女性像も無視したくない。そこは活かしつつ、溝口加奈という人物がちゃんと浮かび上がってくるといいなと考えました」と役作りへのアプローチを明かした。
撮影を振り返り「人里離れた山奥で撮影していたのでしんどかったんだと思うんですけど、しんどいことを感じさせないようにキャストが一体となってくれた」と白石監督。先に撮影を終えた演者が炊き出しに来たこともあったといい「僕からすると、本当に感謝しかない。現場の雰囲気を作ってくれたのは俳優やスタッフの皆ですね」と改めて感謝した。
作品を通して伝えたいことを聞かれた白石監督は「（史実では）奥羽越列藩同盟のなかで新発田の裏切りと言われているけど、それって裏切りではないと思うんですよね。彼らは彼らなりの生き延びる術だったと思うし。筆頭家老の溝口がひどいことをしたんじゃなくて、同じ立場になったら為政者と同じ事をすると思う」と神妙な表情。「それは今に至るまで同じ事が戦争というなかで行われているわけですよね。エンターテインメントとして作りながら、実は地続きの話ではあることを感じてもらえれば。この映画で犠牲になっているのはどういう人たちなのとか、色んな事が見えてくる映画だとは思います」と言葉に力を込めた。
木竜は「（映画には）それぞれの人が、それぞれの立場で抱えているもの、守らないといけないもの、守れなかったものがある人たちが出てくる。それぞれの人が大切にしようとしたものは肌で感じられるような気がします」とＰＲ。「見た人がそれぞれの感覚でフォーカスするポイントがあっていいと思うんですけど、自分が見た感想というものを持ってもらえたら、すごく幸せなこと、素敵なことだなと思います」と呼びかけた。
