iPhone 15から採用されるUSB-Cポート。MacBookシリーズで大々的に採用した規格でありながら、iPhoneへの搭載は大きく遅れた

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 日本時間の9月13日午前2時、Appleの新製品発表がストリーミング配信された。はじめにAppleの環境保護への取り組みや、Apple Watchが人命救助に役立った事例などを紹介。その後は大方の予想通り、Apple WatchとiPhoneのニューモデルがお披露目となった。
◆Apple Watchは2モデルが登場

 Apple Watchの新製品は「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」の2モデルで、内蔵チップの性能向上により順当な改良が果たされているほか、新たに「ダブルタップ」という操作を導入。腕時計をはめた側の指で2回「つまむ」動作をすることによって、電話をかける・切るなどの操作が可能になった。

 Apple Watchも人気だが、やはり注目の的は、国民の約半分が使っているiPhoneの動向だろう。SNSはすでに、ニューモデルで起こった“ある変革”が話題になっている。

◆事前の噂通り、USB-Cが採用されたiPhone 15

 メインストリームの「iPhone 15」に施されたパワーアップは、例年と比べるとやや小粒である。フロート型の通知スペース「Dynamic Island」は、昨年の「iPhone 14 Pro」で実現されていた機能だが、これがiPhone 15と「iPhone 15 Plus」でも利用可能となった。このほか、カメラの機能とバッテリーの保ちが改善された。

 上位機種の「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」の場合、素材がチタン合金に変更されたのが最大の特筆点だ。

 チタンは強靭だが価格が高く、主に高級腕時計やゴルフクラブなどに使われてきた金属素材である。iPhone 15 Proでは、前世代のモデルと同一の価格帯でありながらチタン化を実現。強度のみならず高級感も増しており、嬉しいアップデートだ。

 しかし、日本を含めた世界中のiPhoneユーザーが狂喜乱舞しているのは、これらの点ではない。この度ついに、独自の充電端子として使われてきた「Lightning」が廃止され、「USB-C(USB Type-C)」に変更されたのだ。以下に挙げるような理由から、iPhoneへのUSB-Cポート搭載は待ち望まれており、ついに十年来の念願がかなった形だ。

◆USB-Cは良いことづくめ!

 2012年の「iPhone 5」以来使われてきたLightningという規格は、本当にひどいものだった。高価なLightningケーブルは頻繁に故障するし、iPhone本体側にある端子の劣化も早い。事実上Apple製品の専用規格となっていて、他のガジェットとケーブルを使い回せないなど、デメリットばかりが目立った。

 対するUSB-Cは、現代のAndroidスマートフォンのほとんどに採用されている汎用規格だ。よほどの粗悪品を除けば、USB-CケーブルはLightningケーブルよりも長持ちする。モバイルバッテリーなどスマホの周辺機器も、いまやUSB-Cポートで急速充電するものが大半を占める。それでもAppleがLightningにこだわっていたのは、規格の知的財産権を固めており、周辺機器の統制がしやすかったからだ。

 ユーザーとしてはまったくありがたくない現状にNOを突きつけたのは、EU諸国に暮らす4億5000万人から代表者を集めた「欧州議会」である。EUの新たな規制では、域内で販売されるスマートフォンへのUSB-Cポートの搭載を必須のものと定めた。結果、Appleもこれに従わざるを得なくなった形だ。

 これは、民主的な枠組みによって決定されたルールが、Appleという巨大企業の意向に勝利した良い事例である。変更される端子のサイズは小指よりも小さいが、大きな出来事として記憶しておきたい。

◆高価格はAppleのせいじゃない

 そんな念願かなって登場したニューモデルだが、値段には嘆息するばかりだ。iPhone 15の販売価格は124800円から、iPhone 15 Proは159800円から。昨年秋に高いと感じたiPhone 14の発売時価格(119800円)と比べても、さらに値上がりしている。