「試合後、泣いているヤツもいた」連敗脱出の鹿島、ユニホームで顔を覆った新加入CBにのし掛かっていた重圧…その胸に去来したものは?
J1リーグ3節の柏レイソル戦に1-0で辛勝した鹿島アントラーズは、なんとか一息つくことができた。というのも、直近の公式戦に2連敗。開幕戦となったガンバ大阪戦で快勝し、そこで得た自信を早くも失いかけていたからだ。
試合後、新加入のセンターバック、キム・ミンテはユニホームで顔を覆いながら、涙を隠した。ほんの4日前、ルヴァンカップのセレッソ大阪戦で、相手FWのターンをやすやすと許し、失点を食らっていた。この日も不安定なパフォーマンスを露呈していたものの、勝利できたこと、なおかつ無失点で終えられたことに感極まったようだ。
監督代行の岩政大樹コーチが厳しくも、心温まる言葉で、彼らの奮闘ぶりをねぎらった。
「両CBにはかなりプレッシャーがかかっていたので、それをいかに取り除いてあげられるかを考えたし、ミーティングのなかで、いろいろなアプローチを試みた。ただ、僕が何かをいったから、というわけではなく、乗り越えていくのは彼ら自身」
そして、こう言葉をつなぐ。
「試合後、泣いているヤツもいてね(苦笑)。こちらは涙をこらえるのに必死だった。僕自身、彼らの苦しみがまだ分かる歳なので。(現役時代に同じCBだった者として)まだ記憶に残っているので。このクラブが持つCBへの期待や勝たなければいけないというプレッシャーのなかで、自分らの責任で負けが続いてしまい、かなりのしかかるものがあったと思う。でも、よく乗り越えてくれた」
覇権奪回を目指す鹿島にとって、シーズン開幕前から懸案事項に挙げられていたのがCBだった。
昨季までコンビを組んだ犬飼智也は浦和へ、町田浩樹はロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ(ベルギー)へと新天地を求め、主力2人が同時にチームを離れていたからだ。その穴を埋めるべく、補強されたのがキム・ミンテのみ。U-23韓国代表歴を持つ実力派CBとはいえ、明らかに選手層が薄くなった。それだけに周囲から不安視されても致し方ない状況だった。
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周囲の不安を、誰よりもキム・ミンテ自身が敏感に察知していた。今年1月22日の新体制会見で、次のように所信を語っている。
「今まで鹿島を支えてきた町田選手や犬飼選手がいなくなって、皆さん、不安を持っていると思う。その不安をなくすように、守備ラインのみんなと一緒に頑張りたい」
鹿島の印象を問われると、こう答えていた。
「試合の結果を見ると“鹿島が勝ったね”が当たり前という感覚。その秘訣がすごく気になっていたので、それをチームの一員として実感しながらプレーできる嬉しさがある」
シーズン開幕からここまで公式戦4試合すべてにフル出場しているキム・ミンテは、勝利の喜びも束の間、連敗の苦しさを味わった。そして、連敗を止めた。
強いから勝つのではなく、立ちはだかる試練を必死に乗り越えながら、勝ち続けてきたからこそ強いと胸を張れる。新加入のCBは、そんな鹿島イズムの真髄に触れつつ、悪戦苦闘の日々を送る。次に結果を出せなければ、また振り出しに戻ってしまう。そういっても過言ではないのだから。
取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)
