“ありがとう”の「サンキューハザード&クラクション」は違反? パッシングは挑発? 地域差ある挨拶行為とは

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運転者同士で感謝を伝える合図、違反になる可能性も…?

 クルマを運転していると、道をゆずってもらったり、死角の危険を知らせてもらったりとほかのクルマの運転者に感謝を伝えたいと感じることもあるでしょう。
 
 一般的に、ほかのクルマの運転者に感謝を伝えるための行動や合図として、会釈をしたり、車内外で手をあげたり、ハザードランプやクラクション、パッシングを利用するという方法がとられているようです。

 ハザードランプやクラクションの正しい使い方とは、どのようなものなのでしょうか。

いざというときに助手席の人も使えるようにハザードスイッチは運転席と助手席の間に設置されていることが多いという

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 日常的なハザードランプの使用方法として、高速道路の渋滞で危険を知らせる「渋滞時最後尾のハザード」、駐車することをアピールする「駐車合図ハザード(リバースハザード)」、進入を譲ってもらった際に後続車に感謝を伝える「サンキューハザード」などが挙げられます。

 なかでも、サンキューハザードは、元々トラックドライバーがコミュニケーションを取るための手段が一般化したといわれ、車線変更や本線道路への進入を譲ってもらった場合に、ハザードランプを2、3回の点滅させて「感謝の意思表示」として使われています。

 しかし、本来「ハザード(hazard/危険)」という意味で、正式名称は『非常点滅表示灯(以下:ハザード)』と呼び、本来の使用方法に関しては、道路交通法第18条と第26条において、夜間に幅5.5m以上の道路に駐停車するときと、通園通学バスの乗降時のために駐停車させているときと定められています。

 このように、日常的な使い方と道路交通法の定義では異なっているようですが、ほかのクルマの運転者への合図や感謝を伝えることは違反に当たるのでしょうか。

 感謝を伝える行動のなかでも良く見られる、ハザードランプを使って感謝を伝える、いわゆる「サンキューハザード」ですが、実際に取り締まりをする警察官は「サンキューハザード」について次のように話します。

「サンキューハザードなどは、本来の使い方としては正しくないものです。また、地域によってその意図の意味が変わることもあり、むやみに使うことは控えたほうがいいといえます。

 しかし、高速道路の渋滞時に後続車へ危険を知らせる『渋滞最後尾のハザード』は、推奨している都道府県警察や団体もありますので、適切に使用頂ければと思います」

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 一方では、サンキューハザードと同じく「感謝の意思表示」として使われているサンキュークラクションは問題ないのでしょうか。

 クラクションは道路交通法第54条において、「左右の見通しのきかない交差点」「見通しのきかない上り坂の頂上で標識による指示がある場所」などが使用すべき場所と定められています。

 これ以外にも、「危険を防止するためやむ負えないときは、この限りではない」とも定められており、自分や周りのクルマに危険が及ぶ可能性があるときにも使用することができるとされています。

 ところが、なかには、感謝の意を表すためにクラクションを軽く鳴らす運転者も多く見受けられます。

 前出の警察官は、サンキュークラクションについて次のように話します。

「サンキュークラクションは、音の鳴り方やタイミングによって『早く行け』、『邪魔だ』というように相手方に捉えられることもあり、トラブルの元になる可能性が考えられます。

 道路交通法では、クラクションに関して使い方などが明記されているので、クラクションはしっかりルールを把握してから使用することが望ましいです」

パッシングはトラブルの元? 「お先にどうぞ」は地域によって異なる?

 サンキューハザードやクラクション以外に、パッシングを用いて合図することがありますが、道路交通法には使用に関する条文がありません。

 しかし、地域や世代によっては前述の「お先にどうぞ」以外に「先に行きます(道をゆずってください)」や、「ありがとう」など複数の意味で使用している人も見られます。

 また、「追い越し・追い抜き」の際に先行車に対して「道を譲ってほしい」という意思表示として使うこともあります。

 このように、使い方に具体的な決まりがないぶん、人によって異なる意図に捉えられるため、パッシングをされたときには周りの状況などを確認してから行動する必要があります。

 例えば、SNSでは「大型トラックが道を譲る際にパッシングで合図してくれた」というようなパッシングでの譲り合いの事例なども多くみられます。

 また、知り合いのクルマと偶然遭遇した際に、パッシングで合図を送るという運転者もおり、感謝の意を伝えるためだけでなく、パッシングの使い方は多岐にわたるといえます。

 しかし、近年では「あおり運転」が社会問題化しており、その発端の一因にパッシングによる誤解などがあるといわれています。

 運転者が感謝の意味で使用する場合でも、パッシングされた側は「あおられている」と感じてしまうかもしれません。

 パッシング自体は必ずしも違反には当たらないと考えられますが、むやみに使用するのは避けたほうが良いでしょう。

交差点の右折時にトラックがパッシングで譲ってくれた際のイメージ

 このように、ハザードランプやクラクション、パッシングを使用して感謝の意を伝えることは、日常的におこなわれていることであり、交通マナーのひとつと称される場合もあります。

 しかし、一部では高圧的に感じたり、「あおり運転」を誘発する原因となることがあります。

 したがって、運転中に感謝の意を伝える際には、視線を落とさない程度の軽い会釈や車内外で手をあげるのがいいのかもしれません。

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 何気なくおこなっていることでも、実は法令違反ということがあるかもしれません。

 実際には検挙される可能性は低いかもしれませんが、サンキューハザードやクラクション、パッシングは、周囲の状況に合わせて使うのが望ましいといえます。