激震のアントワープ、中国から“年俸3億円オファー”で監督が電撃退任 三好康児への影響は?
【ベルギー発コラム】三好を右ウイングバックで起用してきたレコ監督、上海上港行きを決断し退任
年の瀬の昨年12月29日、日本代表MF三好康児の所属するベルギー1部アントワープが、イヴァン・レコ監督の退任を発表した。
同クラブ側の公式発表によれば、2週間ほど前に中国の上海上港からレコにオファーがあり、レコ本人からも29日にアントワープとの契約を直ちに解消したいとの申し出を書面で受け取ったという。
レコは今季から2年契約でアントワープの監督に就任すると、8月にクラブ・ブルージュに1-0で勝利して1991-92シーズン以来の国内カップ戦優勝をアントワープにもたらし、さらにUEFAヨーロッパリーグ(EL)ではグループステージを優勝候補トッテナムに次ぐ2位で突破。国内リーグでもレギュラーシーズンの上位4チームによる優勝決定プレーオフ進出を十分に狙える5位(1月2日現在)でウインターブレイクに入るなど、結果だけを見れば順風満帆と言える状況だった。
それだけに今回の突然の監督交代は現地メディアでも驚きを持って伝えられているが、決め手となったのは上海上港がレコに出したオファーにあったようだ。
ベルギーメディア「Voetbal Belgie」によれば、上海上港はレコに年俸250万ユーロ(約3億円)を提示。これは、レコがアントワープからもらっていた給料の約8倍であり、これだけ破格の条件で誘われてしまえば、アントワープとしてもレコを引き留める術がなかったのだろう。
指揮官の交代は、良くも悪くもチーム内での序列の変化を引き起こす。三好もこのことから無縁ではないはずだ。
今季の三好は、プレシーズン序盤でハムストリングを負傷したことで出遅れ、リーグ戦では開幕から3試合出番がなかった。しかし、今季初先発となった第8節メヘレン戦(4-1)で1ゴールを含む活躍を見せて勝利に貢献すると、それ以降は3-4-2-1システムの右ウイングバックのレギュラーとして先発出場を続け、本来であればこのポジションの一番手でポルトガルの年代別代表でのプレー経験もあるDFオーレリオ・ブタが怪我から戦列復帰を果たした後も、スターティングメンバーの座を譲らなかった。
守備の面で約束事が多く、運動量も求められるウイングバックは、敏捷性とテクニックが売りの三好にとってベストのポジションではないはずだが、タッチライン際から味方とのパス交換で中央に侵入してきてのチャンスメークやシュートを狙ってくる三好の存在は、アントワープの攻撃のオプションの一つとして十分に機能していた。
再開までの短い時間でチーム内の序列が大きく変わることは想像し難いが…
レコもおそらく、同様の評価を下していたのではないだろうか。ELのグループステージ最大の山場だった第2節トッテナム戦(1-0)、当時リーグ戦首位で日本代表MF伊東純也も所属しているヘンクとの上位対決(2-4/第15節)といった絶対に勝ち点が欲しい試合、あるいはある程度守備的に行くこともプランとしてあり得るような試合であっても、レコが三好を右ウイングバックのファーストチョイスとして使い続けていたことは、その根拠の一つとなるだろう。
低調なパフォーマンスだったリーグ第10節ベールスホット戦(3-2)後の第11節アンデルレヒト戦(0-1)や、3連敗を喫した後の第17節ベフェレン戦(3-0)では控えに回されたが、良いプレーを見せればその後で新たなチャンスを与えるというのがレコの三好に対する基本的なスタンスであり、レコは三好を確実に重要な戦力として認識していた。それだけに今回の監督交代劇は、シーズン後半の三好にネガティブな影響を与えかねない出来事だと言える。
ベルギーリーグは約2週間の中断期間を挟み、1月9日から再開する。アントワープの新たな指揮官は未定だが、いずれにせよ準備期間が非常に短く、さらに前述のように優勝決定プレーオフ進出(4位以内)の可能性が十分にあるという状況からしても、たった2週間で戦術やチーム内の序列が大きく変わることは想像し難い。ただし、新たな指揮官から信頼を勝ち取れなければ、シーズン前半ほどの出場機会を得られないリスクが確かに存在するだけに、三好にとって1月は勝負の月ということになりそうだ。(土佐堅志 / Kenji Tosa)
