カルロス・ゴーン氏

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 カルロス・ゴーン氏は、これまでその豪腕で日産・ルノー・三菱連合を舵取りし、トヨタ自動車を抜き世界2位のグループに押し上げた。同氏の逮捕によって、注目されるのはこの3社連合の今後だ。たびたびルノー経営への関与拡大を図ってきた仏政府との関係も懸念される。これまでの3社連合の動向を振り返る。

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ルノーCEO続投、3社連合の総仕上げへ動く

 日産自動車と仏ルノーとの提携関係に変化の兆しが出てきた。日産会長とルノー最高経営責任者(CEO)を兼ねるカルロス・ゴーン氏が、相互出資の比率見直しなどを検討する姿勢を示した。“ポストゴーン”を見据えた企業統治の新体制を整え、提携を一層強固にする狙いがあると見られる。だがルノーに出資するフランス政府の意向も絡み、先行きは不透明だ。日産・ルノー連合のシナジー創出の源泉である「対等な関係」が維持されるのかが最大の焦点だ。

 「仏政府保有のルノー株、日産が買い取りに向け協議」「日産とルノーが合併交渉」と海外通信社が3月に相次いで報道。さらに4月中旬には国内メディアとのインタビューで、ゴーン氏が提携関係のあり方について、両社の出資比率の見直しを含め「あらゆる選択肢についてオープンに検討する」との考えを示した。

 ゴーン氏が提携関係の見直しに踏み込んで言及し始めたのは、ルノーが同氏のCEO続投を決めて発表した2月15日以降だ。この人事をめぐってはルノーに15%出資する仏政府が積極的に関与し、一時はゴーン氏の退任観測まで出た。

「不可逆な関係」
 最終的に仏政府はルノー・日産の提携を後戻りできない「不可逆な関係」にすることを求め、これにゴーン氏が同意したことで、CEO続投が決まったとされる。

 日産とルノーの関係は、自動車業界のグローバル提携の代表的な成功例だ。購買や開発、生産など、16年度のシナジーは前年度比16%増の50億ユーロ(約6650億円)に達した。提携の成功は、両社のトップを兼務し、仏政府にも目配りして連合を取り仕切ってきたゴーン氏個人の存在に寄るところが極めて大きい。

 ルノーCEOに再任された後のゴーン氏の任期は22年まで。さらに連合には16年に三菱自動車も加わり、関係が複雑化した。自動運転や車両の電動化など事業環境も急変している。

 現体制のままでは、4年後に次世代へバトンを引き継いだ後、提携が維持できないリスクもささやかれ始めた。このため、仏政府は“ポストゴーン”でも提携を「不可逆な関係」にするため、「企業統治の新体制」を求めたようだ。

 ゴーン氏自身の心境にも変化がみられる。これまで言及しなかった出資構成の見直しに触れるようになったのは、「強いリーダーシップで連合を引っ張れる人材が周囲に見当たらない中、ゴーン氏自身も連合の将来に不安を感じたのではないか」(遠藤功治SBI証券企業調査部長マネージングディレクター)という意見もある。

日産の反発
 では、両社の提携を不可逆的にする体制づくりは、どう進むのか。読み解くカギの一つは「対等な関係」だ。ルノーは日産に約43%出資し、資本の論理では強い立場にある。

 しかし両社はそれぞれが独立性を維持しながら、研究開発や生産技術・物流、購買といった機能統合を実施。ウィン―ウィンでシナジーを創出してきた。例えば共同プロジェクトでは、両社にメリットがなければゴーサインを出さない仕組みを整えている。

 こうした対等関係について、特に日産社内では「維持すべきだ」との声が大勢だ。新体制づくりでも、ルノーが日産を飲み込むような合併は容認できるものではない。日産幹部も「合併は議論したことがない。ゴーン氏も『あらゆる選択肢』とは言ったが、『(直接的に)合併もあり得る』とは言っていないだろう」と指摘する。

 一方で、持ち株会社を新設し、傘下に両社をぶら下げる経営統合は検討の余地があるといえる。日仏以外の国に持ち株会社を置いてシナジー創出を主導しつつ、両社は独立性を維持して事業を展開する形が考えられる。遠藤部長は「持ち株会社の下にルノーと対等な形で入れば日産にとっても受け入れやすいだろう」と見る。

仏政府の思惑
 不透明なのは仏政府の動向だ。仏政府は15年春、株式を2年以上保有する株主の議決権が2倍になる「フロランジュ法」を盾に、ルノーを通じて日産の経営に関与する姿勢をみせた。失業率が高止まりする仏国内の雇用対策などのため、日産がフランスの利益になるような経営判断を下すように仕向けた。

 この時は日産が、保有するルノー株の比率を15%から25%以上に引き上げるとルノーが持つ日産への議決権が消滅する日本の会社法をちらつかせ、仏政府を退けた。ただ現在も仏政府は「国益が最優先。ルノーを通じて日産を支配する考えだろう」と中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリストは分析する。

 一方で15年の“失敗”を教訓に仏政府が関与を抑える可能性もある。99年はルノーが日産を救済したが、状況は様変わりした。現在の売上高は日産が11兆8000億円(17年度予想)に対し、ルノーは587億7000万ユーロ(約7兆8000億円、17年)、17年の世界販売台数は日産の581万台に対しルノーは376万台に留まる。

 日産は中国や米国など成長市場で足場を築いている上、電気自動車技術にもたけており、実力値としては上にいる。現実的には日産が連合の成長をけん引する構図であり、遠藤部長は「『不可逆な関係』の体制づくりは、仏政府にとってはルノー救済プランという側面がある。日産の競争力低下を招くような強引なことはしない」と分析する。

 ゴーン氏は任期が切れる22年までじっくり時間をかけ、新たな体制を整備する考えを示す。実現には日産、ルノーのほか日仏政府の調整も必要だ。

 新体制づくりは「まだスタートしたばかり。ゴーン氏が言うようにあらゆる選択肢が考えられる」(中西アナリスト)というのが実態。4年後の日産・ルノー連合の形は、日本の自動車産業にも大きな影響を及ぼすだけに、目が離せない。

(文=後藤信之、日刊工業新聞2018年4月27日掲載)

※肩書き、内容は当時のもの

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両トップのホットラインで実現した三菱自の傘下入り
 日産自動車が2016年10月20日、三菱自動車を事実上傘下に収めた。三菱自の会長に就くカルロス・ゴーン日産社長が三菱自の社長職を続投する益子修会長兼社長と連携。不正問題で信頼が失墜した三菱自の再建を目指す。社長人事はゴーン氏が辞意を固めていた益子氏を慰留する異例の事態となった。仏ルノー・日産連合のトップを兼務するゴーン氏の提携戦略と、かつて日産をV字回復させた手腕が注目される。

経験を踏まえ
 「益子さんには厳しいタスクが待っている。会長として支援し、助言する」。20日に開いた会見でゴーン氏は三菱自会長職の役割をこう説明した。1999年、ゴーン氏は経営危機に瀕していた日産に仏ルノーから送り込まれ、工場閉鎖や調達コストのカットといった改革を進め、業績のV字回復を果たした。「瀕死から抜け出した当時の経験を踏まえて三菱自の再生を支援する道を選んだ」(ゴーン氏)。

 不祥事を繰り返してきた三菱自の再建には組織改革は不可避だ。日産はすでに元副社長の山下光彦氏を三菱自に派遣し、不正の舞台となった開発部門の改革に着手している。ゴーン次期会長は「開発だけでなく組織全体の改革に目を光らせる」(日産幹部)。

シナジー追求
 一方でゴーン氏は日産の再建と同時に、共同購買や開発の分担でルノー日産連合のシナジーを追求してきた。15年の両社のシナジー効果は43億ユーロにのぼるという。10年には独ダイムラーと資本提携し、ロシア最大手アフトワズも傘下に収めて連合の勢力も拡大。外交手腕を巧みに発揮した連合のシナジー追求と勢力拡大はゴーン流経営の神髄と言える。

 「私は2社のトップも務める。連合内の連携を円滑化できる」。ゴーン氏は会見でこうも強調した。新たに三菱自を連合に迎え入れるのにあたって、ルノー、日産、三菱自の3社のトップを兼務するのは連合が享受できるシナジーを引き出す狙いもある。

 自動車業界は、これまでの環境や低コスト技術に加え、自動運転、つながる車、シェアリングといった新分野が急速に台頭している。ルノー・日産連合は三菱自への出資で、年販1000万台規模のトヨタ、米ゼネラルモーターズ、独フォルクスワーゲンの仲間入りをすることになるが、ITや通信、輸送サービスなど異業種も入り交じる競争環境は変化が速い。自らが会長として三菱自に乗り込むゴーン氏には、変革を迫られる自動車業界の力学が働いている。

再建へ意識改革徹底-益子氏留任、消費者反発も
信頼寄せる
 「ゴーン氏が益子氏留任に固執する気持ちは分かる」(三菱自幹部)、「不正発覚後の益子氏の功績は大きい。ゴーン氏は信頼を寄せている」(日産幹部)。ゴーン氏―益子氏のホットラインは両社内でも広く知られている。ゴーン氏の益子社長留任要請は両トップの親密さを物語る。

 日産と三菱自が急接近したのは2010年。共同会見に臨んだ両者は軽自動車の協業を柱とする提携拡大を発表、「ウイン―ウインの関係」を強調した。後に両社の提携関係は仏ルノーにも広がった。今回の燃費不正発覚後、わずか3週間で資本提携の合意にこぎ着けたのも日産ナンバー2の西川廣人副会長を含めゴーン氏と益子氏の連携プレーがあった。

 「ゴーンさんが再建に情熱を持って接してくれた。次期中期計画の道筋をつけることも経営責任の取り方と考え方を改めた」。益子氏は会見でこう話した。社長続投が決まった益子氏の胸中は複雑だった。益子氏が三菱商事から三菱自に送り込まれたのは04年。リコール隠し問題で経営危機に瀕していた三菱自の再建を託された。14年に経営の足かせとなっていた「優先株問題」を処理し、生え抜きの相川哲郎前社長による新体制で再建に道筋をつけた頃、同業他社首脳に辞意を漏らしている。だが「(三菱商事など主要株主の)三菱グループから慰留された」(同業他社首脳)といい、指揮を続けた。

 今回の不正発覚後も再発防止と日産との資本提携に道筋をつけ次第、辞任する意向を周囲に漏らしていた。だが、ゴーン氏としては「留任は重大な条件だった」。主要株主を代えての度重なる慰留となった。それを受け入れたからには、改めて経営者としての覚悟が求められている。

 「益子氏が留任したところで世間は納得してくれるのか」。三菱自幹部はこう吐露する。

 一連の不正行為は益子修会長兼社長が経営トップを務めていた時期に行われた。経営責任を明確にしないまま益子氏が続投することで消費者の反発を招く恐れもある。

世間の目
 三菱自は19日、17年3月期連結業績の見通しを下方修正し大幅な当期赤字を発表した。「下期は営業損益を黒字転換するなど何とか反転させ、日産とのシナジーを取り込みながら17年春の発表を予定する次期中期経営計画につなげたい」。池谷光司三菱自副社長はこう強調する。経営責任を問う声が根強く残る益子氏を慰留したゴーン氏が、失墜した信頼を取り戻しつつ、かつての日産のようなV字回復を再現できるか。世間から厳しい視線が注がれるなかで難しい舵取りが求められている。

《会見要旨/益子氏続投、実績で証明-ゴーン氏》
 会見でのやりとりは次の通り。

 ―益子会長兼社長を続投させる理由は。

 ゴーン氏 益子さんは何度も退任したいと言った。ただ私が残ってほしいと要望した。益子さんとは長年にわたり協力し、信頼している。

 益子氏 燃費不正問題の経営責任については報酬を自主返納し、新体制発足後に退任したいと話してきた。ゴーンさんからは信頼回復に向けた継続的な取り組みなどを考えた場合、残ってほしいという要請を再三受けた。6カ月間、気持ちの整理がつかず、前向きに受け入れることができなかった。4月21日に支援を要請して以降、一貫してゴーンさんからは三菱自の再建に情熱を持って接してもらった。次期中計の道筋をつけることも経営責任の取り方と考え方を整理した。

 ―益子氏は経営責任を取り退任すべきだとの意見がある。

 ゴーン氏 企業には株主がおり、私は株主の期待に応えなければならない。あくまでビジネスの利益となる決断を下したいと思っており、三菱自の株主のためには益子さんは残るべきだ。そしてこの決断が良い決断であったことを実績を残すことで証明することが私の仕事だ。

(文=編集委員・池田勝敏、西沢亮、日刊工業新聞2016年10月21日掲載)

※肩書き、内容は当時のもの

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アライアンスの文化はまさに協業の精神(17年1月ゴーン氏単独インタビュー【1/2】)
 -三菱自動車を仲間に入れて、ルノー・日産自動車アライアンスとして業界トップグループに入りました。他のトップグループと比べた優位性は何でしょうか。
 「他のグループに比べはるかに多様性が高い。アライアンスは3社がひとつになっているが、他のグループは企業の数では1社だ。ルノーも日産も三菱自動車も自立性を持ち、それぞれに戦略がある。だからこそ、ぶれない活動ができる。はるかに多くのアイデアが発想できる。ルノーは主に欧州とロシアとブラジルでプレゼンスが高い。日産は北米、中国、日本で強く、三菱自は東南アジアで強い。強みが多様化しているのは利点だ。消費者にとっていいことではないか。スケールがあるからコスト効率化でき、価格設定も競争力が高いものになる。商品群も広くなる。違う会社が複数のブランドを扱っている。1社が複数のブランドを扱うよりアライアンスの方が豊かだ。これがアライアンスならではのことだ」

 -自動運転やつながる車、シェアリングなど新分野が台頭しています。アライアンスはこれまで車メーカー同士の協業で成功してきましたが、今後はさらに文化が異なる異業種との連携が求められています。これまでのノウハウがどう生かされますか。
 「おっしゃるとおり、自動車業界は自動運転、シェアリング、コネクテッドが重要になっている。加えて電気自動車(EV)も重要だ。異なる要素が将来台頭してくる。われわれは他の会社と協力して、こういった技術を搭載した車を提供しないといけない。コネクテッドではマイクロソフトとやっている。自動運転はほとんどの開発は社内で行っている。ウーバーやグーグルなど新たな価値をもたらす企業とも協力している。EVはすでにパイオニアとアライアンスを組んでいる。バッテリーやモーターのメーカーともますます協力していく。協業は将来の車とサービスにとって重要な要素だ」

 「アライアンスの文化はまさに協業の精神だ。日夜各社が協力しているのがアライアンスだ。難しいのはわかるだろう。というのは業界で成功している例がないからだ。買収したとしても、買収する側とされる側の関係で問題が発生する。アライアンスは複雑で難しいことだ。必ずしも成功はしない。各自動車メーカーが同じ傘で協力してプラスの生産的な協力を実現している。こういった複雑な領域で成功したのは、サプライヤーやハイテク企業、IT企業と協力する上で利点だ。ダイムラーとも多くのサプライヤーともうまくいっている。アライアンスの文化があるからこそ、アライアンスの従業員は、開発部門も購買部門もマーケィング部門も慣れている。コンフォートゾーンを越えるのに慣れている。自らのテリトリーを越えることを恐れない。必要なものに手を伸ばすことを恐れない。そのために他のメーカーと協力できる。これは大きな優位性で文化の一部だ。一朝一夕ではできない。何年もの準備が必要で心構えも醸成しないといけない」

三菱自もスケールメリットを享受
 -今アライアンスは複雑だとおっしゃいました。三菱自が加わったことでメンバー間の関係はより複雑になりませんか。
 「大きく複雑化するとは思わない。なぜなら全く同じ関係を適用するだけだ。ルノーと日産の関係のルールを三菱自に適用することだ。ルールは変わらない。若干微調整は必要かもしれないが。三菱自はスケールメリットを享受できる。三菱自は大きな見返りがあるからアライアンスに適用したいと考えている」

 -アライアンスのメンバーが増えると、各ブランドの個性維持とシナジー追求の両立が難しくなりませんか。
 「ルノーと日産の関係は17年間維持してきた。現時点でブランドが混同されることは全くない。お客様が比較検討をしないのだ。日本と米国は日産の存在感が高くルノーが低いから簡単だが、欧州は二つのブランドが存在して、きちんとブランドを確保している。混同されていない。重複もしていない。ルノーと日産で証明してきたからこそ、三菱自でも証明できる。自信がある。だからこそ、三菱自がアイデンティティーを維持すると主張してきた。だから益子(修社長)さんに(社長に)残ってもらった。益子さんは三菱自のシンボルだ。混乱はない。社風もそのまま尊重しながら、ブランドの中身も変えない。シナジーを生み出すと言っているのは効率化によるシナジーだ。コストや投資の効率化、専門性の共有などだ。それでいて各ブランドは社風に応じて仕事をしていく。その条件があるからこそ、混乱のリスクを避けられる」

 -三菱自会長に就いて1カ月が過ぎました。改めて三菱自の潜在力をどう見ますか。また新たに支援が必要だと思うことありますか。
 「二つの潜在力を持っている。会長になる前から分かっていたことだが。1つは大きく成長できることだ。ここ数年、年販100万台で横ばいとなっている。ブランドの潜在力ははるかに大きい。次期中期計画を策定して、益子さんの指揮の下で(成長を)実現できる。次期中期計画はこの会社を拡大し、成長させることが目標の一つだ。日産もルノーもサポートできる。なぜなら、三菱自は多くの市場で販売しているが、プレゼンスが低いところがある。例えば、米、欧、ロシア、ブラジル、中東だ。ブランドにとって潜在力がある。第二は利益だ。購買部門を共用すれば、かなりのシナジーを三菱自にもたらす。100万台のメーカーが、同じやり方で1000万台のような購買はできない。技術へのアクセスも増える。自社で開発する必要がなくなり、かなり節減が見込める。三菱自は生産を委託している地域がたくさんある。アライアンスがはるかにいい条件を提示できる。もっと効果的な条件で生産ができる。原価低減を通じた利益も好機だ。もちろん実現しないといけない。アイデアが足りないと言うことはない。三菱自をどう回復させるか、より高い成長、利益を上げるために、どうするかのアイデアはたくさんある。益子さんはこれを意識している。なぜなら、私がV字回復を期待しそれをサポートしていきたいと考えているからだ」

<次ページ:2017年ゴーン氏単独インタビュー【2/2】「常にベストを目指すが、1位自体が目標ではない」>
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「常にベストを目指すが、1位自体が目標ではない」(17年1月ゴーン氏単独インタビュー【2/2】)
 -5年後、10年後のアライアンスの姿をどうイメージしますか。
 「アライアンスが上にあって、主に共通の技術やプラットフォーム、サービス開発などをやりながら、各社がその下で、日産であれば『日産』『インフィニティ』『ダットサン』、ルノーであれば『ルノー』『ダチア』『ラーダ』、三菱自であれば『三菱』というブランドを持ち、ビジネスを中心に集中して取り組む。こんな形の仕組みになるだろう。各社は個別の会社として存続し、自立性を持って事業をする。それでいて基本的なビジネスの要素は共同開発をする」

 -さらに新しいメンバーを迎え入れられる余地はありますか。
 「出来ない理由はない。アライアンスのレベルでは共通化だ。下に各社がある。その数は三つでも四つでもいくらでもできる。数が多くても問題ない。もちろんマネジメントを担保しないといけないが。各社の足並みをそろえないといけない」

 -ゴーンさんの経営者としてのゴールは何ですか。
 「どのような経営者であれ、目標は持続可能性を実現することだ。会社と業績の持続可能性だ。会社の成長と利益と健全性を維持することが第一だ。二つ目の目標は、常にベストを目指すことだ。魅力ある車、サービスを魅力ある価格で提供する。通常はベストな人がサイズが大きい。いい仕事をしてない会社が業界をリードすることはなかなかない。1位自体が目標ではない。それは結果だ。いい仕事をしたからこそ結果的に1位になる。いい戦略と実行力あってこそだ。『私は1位になりたい』と言えるようなことではない。だが1位になる可能性はある。コスト、品質、技術、戦略で戦っている。今はトップ3のグループだ。フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、当アライアンスで年販規模のわずかな差があるが、その差に意味はない。意味があるのはスケールだ。他のメーカーに対して、ハンディキャップを持たないことだ。スケールは利点だ。1位になることはうれしい。どうでもいいとは言わない。でも結果だ」

日本には多くの財産がある
 -アライアンスにとって、日本の経営資源の位置づけはどうですか。ゴーンさんは日本のモノづくりを以前から評価しています。一方で、新分野の台頭で、車はモノづくりからサービスに重要性がシフトしています。日本の位置づけは変わるのでしょうか。
 「日本には多くの財産がある。明らかに最大の優位性はモノづくりにある。一緒に協力して何か作り上げる能力あり、しかも一貫して足並みをそろえて実際的に協力できるという文化がある。しかも細かいところにこだわりがある。いい仕事に対する誇りを持っている。それが日本の強みだ。商品もサービスも同じだ。車業界はハードを売ることは大事だ。サービスやアプリを販売することもこれから重要になる。両方やらないといけない。すばらしい車づくりをしながら、サービスの開発もしないといけない。日本の強みはサービスにとっても重要な要素だ」

 -米国や英国などで自国第一主義が広がっています。アラアインスの成長戦略に、どんな影響を与えうるでしょうか。
 「政策が国で変わった場合、それには注意を払わないといけない。特に米国は第二の市場だ。政策の変更に対して、車メーカーは適用し順応しないといけない。好き嫌いではない。なぜなら世界各地で販売しているからだ。至るところで政権は交代する。どの国でも起こりうることだ。常に新しい現実、環境に適用している。英も米も同じことだ。実際の決断がどうかをきちんと見極めないといけない。決断が下される前に(為政者は)言いたいことをいろいろ言う。そこには事実でないものも入ってくる。実際に下された決断内容に目を向けないといけない。(英国がEUを離脱する)ブレグジットもまだなされていない。言葉だけだ。交渉は何年もかかるかもしれない。言葉だけにのせられてはだめだ」

 -昨秋、英国のメイ首相と直接面会して、英工場の投資継続に関して公約を得ました。それ以降、メイ首相がいわゆる「ハードブレグジット」を表明しました。投資計画に変更ありますか。
 「サプライズはない。変更はまったくない」

 -日産の米国工場はフル稼働です。米国では需要拡大も見込まれますが、供給を増やすための能力増強は米国でやりますか、他国でやりますか。
 「新しいルールが制定されるのを待つ。(トランプ大統領は)就任したばかりだ。新しいルールに合わせる。われわれとしてはもっと北米での能力を増強しないといけないの明らかだ。なぜならフル稼働しているからだ。全体需要も引き続き拡大していくと予想される。能力をどうするかについて、どこかで決断を下さないといけない。ただし、決断は新しいルールに基づかなければならない。今存在しているルールは北米自由貿易協定(NAFTA)だ。今後、ルールに変更があったらそれに合わせる」

(文=池田勝敏、日刊工業新聞電子版 2017年2月9日掲載)

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