イチロー【写真:Getty Images】

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「スポーツ界の名珍場面総集編」…MLBで7月にイチローが見せた“超遅球打ち”に絶賛

 2017年のスポーツ界を沸かせた名シーンを連日にわたって振り返る「名珍場面2017」。今回は米大リーグで7月に全米を騒然とさせたマーリンズ・イチロー外野手の「72キロの超遅球打ち」――。大差がついて登板した野手が投じた72キロの超遅球をアメフトのように小刻みにステップを踏みながら、まさかのヒット。仰天の“ハッピーフィート打法”に対し、米国でも「なんて打者なんだ」と絶賛され、「MLB JAPAN」に動画付きで紹介。大きな話題を呼んだ。

 思わずイチローも笑ってしまった。7月26日の敵地レンジャーズ戦、18-8と大量リードした9回。試合は決し、投手陣の消耗を避けるため、敵軍は捕手のニコラスをマウンドに送り込んだ。先頭のスタントンからあっという間に4連打で3失点し、直後に「6番・右翼」で先発した背番号51に打席が回ってきた。

 ただ、投げ込んできたのはキャッチボールのような山なりのスローボール。2球目の時速56マイル(90キロ)を振ったが、タイミングが合わず、ファウルに。2球で追い込まれ、思わず苦笑いを浮かべたが、それでも日本が誇る安打製造機は凄かった。4球目に投じた45マイル(約72キロ)。“超遅球”にイチローが巧みに反応した。

 あまりの遅さに一度は右足に体重移動したが、タイミングが合わないと判断。すると、驚きの動きを見せた。その場で足踏みするように3度、左右の足で小刻みにステップ。そして、ようやく落ちてきたボールにバットを乗せると、レフト前にはじき返したのだ。日米4000本以上の安打を積み重ねてきた男も打った瞬間、思わず笑みがこぼれた。

米メディア解説者も絶賛「これは最高だ!」「イチローの油断につけ込めない」

 これには米国も騒然。マイアミで中継した「FOXスポーツ・フロリダ」では、ドジャースで元新人王の解説者ホランズワース氏が「見てください。彼はバッターボックスから一度走り出そうとしたのです! ハッピーフィートを見てください。これはいい! これは最高だ! 絶対に三振はできない、そんなことは絶対に起こさない、という感じのバッティングでしたね」と絶賛した。

「ハッピーフィート」とはアメフトでクォーターバックがスロー直前に相手をかわすために見せる細かいステップ。野球の打席とは思えない動きに大笑いしながら、その技術には「なんて打者なんだ」と手放しで称えた。MLBの動画コーナー「Cut4」は「もし君が期待しているなら無駄だ。時速45マイルのイーファス・ピッチでもイチローの油断に付け込むことはできない」と称賛した。

 マーリンズ史上最多22得点を記録した乱打戦。イチローのバットに不可能はない。背番号51の伝説の一打は、テキサスの夜を大いに盛り上げていた。

 メジャー最年長野手としてプレーした今季は代打中心ながら存在感を示し、日米通算安打は4358本まで伸ばした。シーズン終了後にマーリンズを退団。来季の所属先は決定していないが、衰えを知らない天才のバットコントロールがメジャーでまだまだ見られることを多くのファンが願っている。