本田(左)や遠藤(右)ら取るべき選手が点を取ったが、数的優位な状況下での試合運びには不満が残った。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 グループリーグを1位通過できれば、決勝トーナメントは中3日で戦える。その意味で、初戦からしっかり勝点3を奪えたのはポジティブだ。確実に勝ち切るという大目標を難なく達成した点は、素直に評価すべきだろう。

【マッチレポート|日本 4-0 パレスチナ】

 
 前半のうちに遠藤、本田、岡崎が点を取り、後半の早い時間帯で吉田が4点目を奪った。2アシストの香川を含め、期待値の高い選手が様々な形からゴールに絡んでおり、チームにとって良い流れができたとも思う。
 
 ただし、ゲーム全体の満足度は100点満点中80点といったところだ。スタートこそ理想的で、清武、武藤、豊田を途中起用する試みは良かった。問題は、4点を奪った後の停滞である。
 
 ボールは保持できても、なかなか相手を崩せなかった。3人ともが周囲とあまりフィットせず、効果的な攻撃は見られなかったのだ。遠藤を下げたため、パスをさばける選手が減ったのも攻撃が行き詰まった要因だが、それならば中盤からの組み立てで期待できる柴崎を使ってもよかったのではないか。
 
 相手の退場でひとり少なくなってからは、より一層停滞感が強くなった。アギーレ監督は攻撃面で選手に多くの自由を与えているようだが、これもいかがなものだろう。
 
 もちろん選手の感性は重視されるべきで、センスや閃きで点を奪えれば素晴らしいこと。ただし、ある程度の約束事を作らないと、チームとして“なあなあ”になってしまう恐れもある。共通理解の構築は、少なくともチャレンジすべき課題のひとつだ。
 
 例えば、空中戦に強い豊田を入れたのであれば、もう少しアーリークロスがあってよかった。この日もそうだったが、日本が数的優位であれば相手は中央を固めざるを得ず、サイドのマークは緩くなる。余裕を持ってクロスを上げられるシーンは多かった。
 
 そこで豊田がそのまま点に結び付ければ最高だし、彼が相手DFにつぶれされても、人数をかけてセカンドボールを拾えたはず。その後のチャンスは広がったはずだ。ブラジル・ワールドカップのギリシャ戦でもそうだったが、数的優位な状況を上手く活かす術を日本は持ちえていない。
 
 重要なのは、相手の状況をしっかりと理解し、共通認識を持って自らのリズムを変えること。パレスチナ戦は危なげなかったが、イラン、韓国、オーストラリアといったレベルの相手を打ち砕くには、そんなしたたかさも必要になる。
 
解説:金田喜稔(元日本代表)