中国のインターネットで、2011年9月11日に米国で発生した同時多発テロなどの首謀者とされたオサマ・ビン・ラディン容疑者を「男性の強さの象徴」する内容の男性用精力剤の広告が掲載されていることが分かった。同広告は、航空機の体当たりで倒壊するニューヨーク市内の世界貿易センタービルや、逃げまどう人々の姿の動画も使っている。中国政府は“現代”におけるすべてのテロ行為に反対している。また、新疆ウイグル自治区ウルムチ市では4月30日、自爆テロと断定した爆発が発生し、容疑者2人を含む3人が死亡、79人が重軽傷を負った事件が発生したばかりだ。

写真拡大

 中国のインターネットで、2011年9月11日に米国で発生した同時多発テロなどの首謀者とされたオサマ・ビン・ラディン容疑者を「男性の強さの象徴」する内容の男性用精力剤の広告が掲載されていることが分かった。同広告は、航空機の体当たりで倒壊するニューヨーク市内の世界貿易センタービルや、逃げまどう人々の姿の動画も使っている。中国政府は“現代”におけるすべてのテロ行為に反対している。また、新疆ウイグル自治区ウルムチ市では4月30日、自爆テロと断定した爆発が発生し、容疑者2人を含む3人が死亡、79人が重軽傷を負った事件が発生したばかりだ。

 問題の精力剤の広告の掲載状況の全体は不明だが、5月3日現在、中国の有力ネット百科事典である互動百科には、広告ページに移るバナーが掲載されている。互動百科は世界的に多く利用されているウィキペディアと似た仕組みだが、運営しているのは営利企業の互動在線(北京)科技有限公司で、多くの広告を掲載している。

 互動百科上のバナーは、中国のウェブページでよく用いられる「広告とは分かりにくい方法」で掲載されている。男女がソファーで座り、男性が女性の胸のボタンをはずしている写真の下に「女性を解決する神秘のリスト」との抽象的な文言を表示。クリックすると広告ページが立ちあがる。

 広告している精力剤は「アラビア人が常に持っている植物の天然成分による」として、「アラビア人男性の精力」を繰り返し強調。「一夫多妻に必須」、「アラビア人の男は、何にたよって4人の妻を征服しているのか」など、仮に日本で掲載すれば人種や女性についての差別や決め付けがあるとして非難が殺到しそうな説明が並んでいる。

 ビン・ラディン容疑者については、米軍の調査で所持していた医薬品のリストにあったことが判明」したと表記。続けて「アラビア男性の精力」について改めて、直接的な表現で紹介している。さらに、2011年9月11日のテロで倒壊する世界貿易センターや人々が逃げ惑う様子に始まる動画を掲載。動画にはCCTV(中国中央電視台、中国中央テレビ)のクレジットがあり、同局が放送した番組の動画を利用したと考えられる。

 中国政府は自国内外を含めて、テロ行為を厳しく非難しつづけているが、一般庶民の間ではビン・ラディン容疑者について「大国である米国に立ち向かった英雄」、「男の中の男だ」といった評価も根強い。広告はビン・ラディン容疑者に対する「強い男」のイメージの利用を狙ったと考えられる。

 広告の情報量は多く、冒頭部分からかなりスクロールしないと全体を見ることができない。ただし、掲載事業者を表示するバナーなどは機能していない。関係者に連絡する手段として紹介されているのは「問い合わせ」の電話番号と、商品注文のフォームだ。推薦商品として、3週間分の詰め合わせセットが1760元(約2万9000円)と表示されている。

 写真は同広告の一部。左側に世界貿易センターのビルが倒壊する瞬間の動画がある。

**********

◆解説◆
 中国では、当局が報道や表現の統制を行っている。インターネットにおける表現も厳しい統制の対象だ。ただし、当局の取り締まりの対象になっていない分野については、きわめて“自由”な表現が常態化している。

 精力剤などの広告ではインターネットに限らず「医薬品の説明」、「医学的な内容」の形式を整えた上での極めて露骨な表現が多い。広告内の画像も「相当に扇情的だが露出度は控える」手法が多い。当局の摘発を逃れるためと考えられる。

 上記広告で最も疑問視すべき点は、「多数の死傷者を出したテロの首謀者」とされる容疑者を、利益目的で安直に利用していることだろう。もちろん、意見表明としては「悪いのは米国。ビン・ラディン氏は正しかった」との主張も成り立つが、そこまで考えて掲載したとは思えない。

 中国政府の情報統制の是非そのものは別にして、仮に統制するならば「社会にとって有害な情報は認められない」という“筋を通す”ことが必要なはずだ。そして中国は自国内外で発生するすべてのテロ行為を厳しく非難している。

 利用者も多く影響力の大きいウェブサイトに、“世界に大きな衝撃を与えたテロ事件の首謀者”を賛美するような広告が掲載されている現状を見る限り、中国当局の情報統制は「社会の質を向上させる」ことよりも、「権力側にとって都合の悪い情報を集中的に排除する」ことに主眼が置かれていると解釈することができる。(編集担当:如月隼人)