ワールドカップの違法配信を取り締まる「オペレーション・オフサイド」は成功を収めたがドメイン押収の限界を浮き彫りにしたと映画協会が指摘

FIFAワールドカップ2026の期間中、アメリカ司法省と協力機関は試合の違法なストリーミングを取り締まる「オペレーション・オフサイド」を実施しました。結果として1000以上のドメインを対象とした取り締まりは一定の成果を挙げたものの、この取り組みを支援したアメリカ映画協会(MPA)は「ドメインの押収だけでは海賊版配信の根絶には至らず、違法サイトへのアクセスをインターネットサービスプロバイダー(ISP)レベルで遮断する必要がある」と指摘しています。
https://www.realclearmarkets.com/articles/2026/07/31/blowing_the_whistle_on_world_cup_piracy_1197454.html

World Cup Piracy Crackdown Shows Limits of Domain Seizures, MPA Pushes Site Blocking * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/world-cup-piracy-crackdown-shows-limits-of-domain-seizures-mpa-pushes-site-blocking/
Office of Public Affairs | United States Seizes More than 1,000 Internet Domains Used to Illegally Stream World Cup 2026 Matches | United States Department of Justice
https://www.justice.gov/opa/pr/united-states-seizes-more-1000-internet-domains-used-illegally-stream-world-cup-2026-matches
オペレーション・オフサイドは、アメリカ司法省や国土安全保障捜査局(HSI)、国家知的財産権調整センター(NIPRCC)などが主導し、MPAの海賊版対策組織「Alliance for Creativity and Entertainment(ACE)」やFIFAなどの権利者団体が協力して実施した取り締まりです。オペレーション・オフサイドでは、無許可の配信を行うウェブサイトを特定してドメインを押収することで知的財産権を保護することに重点を置いており、アメリカ司法省が2026年6月26日に発表したプレスリリースではFIFAワールドカップ2026の試合を無許可でストリーミング配信していた約400のドメインを押収したことが発表されました。
ワールドカップ関連の違法配信に使われた400のドメインが押収される - GIGAZINE

最終的に、大会開始から決勝までの期間において、当局はFIFAワールドカップ2026の試合を不正に盗用・共有していた1000以上のドメインを押収し、さらにラテンアメリカ全域で2000近いドメインをブロックしたと発表しています。これらのサイトの中には、押収される前の7月だけで1億5600万回以上のアクセスを記録した大規模なものもあったとのこと。MPAの会長兼CEOでACEの会長でもあるチャールズ・リブキン氏およびNIPRCC所長のイヴァン・アルベロ氏は声明で「私たちは協力して迅速かつ断固とした行動を取り、ファンが安全に試合を観戦できるよう尽力しました。我々は数々の勝利を収めました」と述べています。
一方で両氏は、「オペレーション・オフサイドから学んだことがあるとすれば、それは海賊行為との戦いは決して終わらないということです」と語っています。ワールドカップだけではなくあらゆるライブイベントは海賊版の温床となっており、スポーツが違法に視聴されることで世界のスポーツ産業に年間283億ドル(約4兆円)もの損失をもたらすことになると両氏は指摘。その上で、サイトの閉鎖は一時的にアクセスを遮断できますが、その背後にあるビジネスを根絶するものではないとして、より根本的な解決策が必要としています。
リブキン氏とアルベロ氏によると、オペレーション・オフサイドで実施されたような官民連携による取り締まり強化に加えて、賢明な政策も必要になるとのこと。ドメインを押収されても運営者が別のドメインへ移行すれば活動を再開できるため、裁判所命令などに基づいてISPレベルでサイトを遮断し、違法サイトへのアクセスそのものを抑制する仕組みが必要だと主張しています。
TorrentFreakによると、実際に100以上のドメイン名がオペレーション・オフサイドで押収された直後、複数の大手違法スポーツ配信サイトがイランの国別ドメイン「.ir」へ移行したそうです。証明書のログから海賊版サイトの「.ir」ドメインは数年前から取得されていたようですが、「.ir」ドメインはアメリカ当局が押収しにくいことから、オペレーション・オフサイドの対抗策として使用されたとみられています。

イギリスやフランス、イタリア、カナダなど50以上の国・地域では、裁判所命令などに基づきISPが海賊版サイトへのアクセスを遮断する制度が導入されていますが、アメリカには包括的なサイトブロッキング制度が存在しません。MPAとACEは、ドメインの移転先を継続的に追跡しているものの、運営者は次々と新たなドメインへ移行できるため、ドメイン押収だけでは限界があると改めて主張しています。
「将来登場する海賊版サイト」まで対象にしたサイト遮断命令がカナダで下される、ドメイン変更などで回避されても裁判することなく遮断可能 - GIGAZINE

TorrentFreakの取材に対し、MPAのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高コンテンツ保護責任者であるラリッサ・ナップ氏は「海賊版業者は、取り締まりを逃れるためにドメインやインフラを頻繁に移転させています。『.ir』ドメインへの移行もその戦術の一例ですが、ドメインを変更したからといって取り締まりが完全に阻止されるわけではありません。これらのサービスは依然として、特定可能な運営者、ホスティング、配信、決済システム、その他の技術的および商業的インフラに依存しています。そのため、ACEは世界中の法執行機関や業界パートナーと緊密に連携し、これらの犯罪ネットワークの運営を支えている人物やインフラを特定し、その活動を阻止しようとしています」と取り組みについて説明しました。
MPAは、ドメイン押収や刑事摘発とサイトブロッキングを組み合わせることで違法配信サイトの利用をさらに減らせると主張しています。記事作成時点ではアメリカで統一的なサイト遮断法案は提出されていませんが、一部の議員が法案の作成を進めているという報道もあり、今後の動きが注目されています。
