【藤 和彦】習近平の中国「実は隠れ失業者の数3.2億人」の衝撃【これはもはや大恐慌レベルだ】
2人に1人が
近年、中国である新造語が脚光を浴びている。「灵活就业」というもので、日本語に訳すとすれば「柔軟就業」となる。6月9日、中国新就業形態研究センターが発表した報告書によると、今年中、中国全国で「柔軟就業」の人の数は3億2000万人に上るという。
「柔軟就業」とは具体的には何かというと、中国政府の公式解釈では、パートタイム・短期アルバイト、配達員・ライドシェア運転手などのプラットフォーム就業者、配送・配車アプリ、Youtuberなどの無雇用の個人事業主・自営業者などが全部このカテゴリに入っている。現在の中国経済の実態に照らしてみると、それらの「柔軟就業」に従事する人々の大半は生活に必要な収入を得ることが厳しいと見られ、実質的に失業状態にあると思われる。
実際、中国国内では、こうした「柔軟就業者」のことを事実上の失業者だと見做しているようだ。例えば深圳市社会保険基金管理局が「柔軟就業者の失業金受領の方法」という案内をHPで出していることや、中国社会科学院の公式サイトである「中国社会科学網」は2月24日、「柔軟就業に適応した失業保険制度を完備する」と題する論文が掲載されていることがその実例である。いずれの場合、いわゆる「柔軟就業」のことをまさに「失業」として認定している。
つまり今の中国では、事実上の失業者、いわば「隠れ失業者」はいよいよ3億2000万人に上る、ということである。もちろん、公式の統計数字上で失業率約5%と認定されている失業者もいるから、両方を合わせて「失業者4億人以上」ということになる。それは中国の生産年齢人口の9億7000万人の4割以上に相当する数字である。要するに今の中国では、約2人に1人が事実上の失業状態にある。
1920年代末から始まったアメリカ大恐慌の時、全米で「4人の中の1人が失業」が恐怖の伝説となったが、今の中国経済の惨状はまさに「アメリカ大恐慌」以上の「中国大恐慌」。中国経済はまさに、崩壊している最中なのである。
水増し常習犯の数字ですら「かなりの冷え込み」
その中国経済の状況であるが、最近、次々と悲観的な数字が公表され続けている。特に、7月15日、中国国家統計局が発表した、今年の第2四半期の経済成長率4.3%だ。コロナ禍の2022年第4四半期以来の低水準であるという。水増し常習犯の国家統計局の出した数字でもこの有様であるから、実態はさらに悪いのであろう。おそらく、ゼロ%成長に近いか、もしくはマイナス成長の可能性もある。
経済成長率の発表に先立つ6月16日、中国国家統計局は今年に入ってからの全国社会消費品小売総額(小売り売上高)の統計数字を公表した。それによると、今年1〜5月、全国の社会消費品小売総額は20兆6031億元で、前年同期比では1.4%増となったという。
国家統計局の公表数字であるから、ここの「1.4%増」自体は「眉唾物」であるが、問題は、同じ国家統計局が公表した昨年とそれ以前の数字との比較だ。同じ国家統計局の公表した数字では、昨年の2025年1〜5月、全国社会消費品小売総額は5%増、2024年1〜5月は4.1%増、2023年1〜5月は9.3%増であったから、今年1〜5月の1.4%増はかなりの冷え込みと言える。
国家統計局が公表した関連数字にはもう一つ、かなり深刻なものがある。今年5月の全国社会消費品小売総額は4兆1090億元で、前年同期比では0.6%減のマイナス成長となった。それは、コロナ禍の最中の2022年12月以来の3年5ヵ月ぶりのマイナスである。「水増し専門」の国家統計局でさえ、「消費崩壊」の現状を隠せなくなっている。
投資も牽引役にはならず
一連の数字の中でも、さらに市場に大きな衝撃を与えたのが7月15日に国家統計局が発表した投資に関する数字である。深刻な消費不振が続く中では、投資しか中国の経済成長の牽引力として期待出来ないからである。
発表では、今年上半期の全国固定資産投資が22兆6370億元、前年同期比では5.7%減となっているのである。そして今までの全国固定資産投資の増減の推移と比べて見れば、この「5.7%減」はどれほど衝撃的なものであるかが、よく分かる。
例えば2018年上半期、固定資産投資は前年同期比では「6%増」、2019年上半期のそれは何と「9%増」、コロナ禍が終わった2023年上半期でも「3.8%増」、24年上半期は「3.9%増」、25年上半期は「2.8%増」であったが、今年上半期はいきなりマイナスとなり、しかも「5.7%減」。まさに「投資崩壊」ともいうべきレベルの激減である。
さらにその内訳を見ると、インフラ関連投資が2.4%減、民間投資も8.5%減、不動産開発投資は18%減と大きく減少した。中国のGDPの約3割を創り出す不動産開発投資の減少が最も著しく、不動産バブルの崩壊は経済の大不況をもたらしていることは明確である。
製造業大国の終焉
各産業への投資(設備投資)の減少も注目すべきである。例えば第二次産業(鉱工業)への投資は前年同期比では1.1%減となっている。それは当然、将来における製造業の規模縮小を意味するものであって、「製造業大国」だと言われている中国における製造業の衰退も目の前の現実となっている。
その一方、今年上半期における第三次産業(サービス業など)への投資減少はさらに激しい。それは何と、8.4%減の激減となっている。多くの国々の経済成長においては、第二次産業が衰退してくると、第三次産業が盛んになって引き続き経済の成長を支えることになるのだが、今の中国の場合、第二次産業の衰退と同時に肝心の第三次産業も萎縮してきている。中国経済には未来のないことがよく分かる。
以上のように、今年上半期の「投資」に関する一連の数字からしても、今の中国では不動産バブルの崩壊に伴って、経済成長の最大の牽引力である投資が深刻な不振に陥り、第二次産業も第三次産業も萎縮する傾向にあるのだが、経済が大不況から抜け出す見込みもなく、時間をかけての崩壊が今後も続くのであろう。
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