下着1枚でマンションの外に放置され、車椅子のバッテリーを抜かれたことも…“モラハラ彼氏”に苦しんだ車椅子ギャル(30)が「障がい者の恋愛こそ自立が必要」と語るワケ
〈母親に「お前は私がいなきゃ生きていけない」と責められ、「歩けない私が悪いです」と謝ることも…車椅子ギャル・さしみちゃん(30)が苦しんだ“家族の無理解”〉から続く
「点状石灰化骨異形成症」という、日本で1人しかいない先天性の障害を背負って生まれたさしみちゃん(30)。“車椅子ギャル”として行う発信では恋愛に関する赤裸々トークも展開している。
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高校の頃から付き合い始めた男性からは障害につけこまれ、喧嘩すると下着一枚の状態で外に放り出されたり、電動車椅子のバッテリーを抜かれたりしたこともあるという。同棲初日に浮気が発覚した事件もあったが、7年も別れられなかった理由とは。障害者の恋愛の難しさについても聞いた(全4回の3回目)。

さしみちゃん ©文藝春秋 撮影・橋本篤
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──長く付き合っていた彼氏がいたとのことですが、どうやって出会ったのですか。
さしみちゃん 彼は高校で知り合った人で、芸術好きという共通点もあって、友達グループで一緒に遊ぶうちに自然と仲良くなりました。日常生活を一緒に送っていたから私がどういう場面でサポートが必要かも知ってましたし、障害者だから引け目を感じるみたいなことも最初はなかったんです。
喧嘩をすると下着一枚で外に出され鍵も閉められ…
──最初は、ですか?
さしみちゃん 高校卒業してから彼が自分で映像を作るようになって、ロケで山の上に行ったりするんですよ。私は車椅子だから一緒には行けないけど、一緒に行った他の女の子と仲良くなって、それが浮気に繋がったことがありました。それで障害のない女の子と自分とを比べるようにもなりました。
──自分が行けない場で浮気ですか。
さしみちゃん 彼の浮気がきっかけで喧嘩になることもよくありました。あるとき浮気を疑って喧嘩が始まったんですけど、言い合いをしてるうちに「帰ってくんな」って彼がお風呂上りで下着一枚の私をポイッと外に出して鍵をしめちゃったんです。12月の寒空ですよ? その時はスマホだけは持ってたので、仕方ないので近くの公園でインスタライブをしました。
──友達に助けを求めたりはしなかったんですか?
さしみちゃん それまでも友達から散々「あいつはやめとけ」って止められてて、それでこんなことになっちゃったので説教されるのが怖くて助けてって言えなかったんです。インスタライブしたら誰か見てくれるかなって顔だけ映して「今、こういう状況なんだよね」って話したら、見てた友達が「どこにいるの?」って慌てて助けに来てくれました。
──いくら喧嘩とはいえ、やっちゃいけないラインを超えてますよね。
さしみちゃん でも当時は「彼にもいいところもあるし」「夢を追う彼を私が支えてあげなきゃ」みたいな感じになってました。異常さに気づけなかったし、なかなか別れられなかったんですよね。それで外で喧嘩した時に電動車椅子のバッテリーを抜かれたこともあって、だんだん酷い人なんじゃないかと思うようになっていきました。
──車椅子のバッテリーを抜く、というのは定番なのですか?
さしみちゃん 実際それをやられると困るのは確かですからね……。その時はデート中に言い合いになって、私が「もう帰る」って言ったんです。でも彼はバッテリーを抜けば私が帰れなくなるって思ったみたいで、後ろに回ってバッテリーを抜いて、「これで俺がいないとどこにも行けないでしょ」って言ってきました。それで駅のロータリーで3時間くらい話し合うしかなくなって、結局終電もなくなっちゃって。ようやくバッテリーを返してもらったものの車椅子でトボトボ帰りました。
彼と別れた後で何人かとお付き合いしましたけど、下着姿で外に放り出したり車椅子のバッテリーを抜いたりする人はいなかったので、私の障害は関係なくて単純にヤバい人だったんだなって。
私の名義で借りた家に彼氏が女性を連れ込んでいた
──どういった経緯で別れられたんですか?
さしみちゃん 23歳の時に同棲を始める日がちょうど私の旅行のタイミングと重なって、彼だけ先に入居することになったんですよ。そしたら私が家を空けてる3日の間に彼が浮気相手を新居に連れ込んでて。しかも彼はお金がなかったので私の名義で借りた家なのに。
──同棲開始時点でも浮気を。
さしみちゃん 私は旅先で2人で使うマグカップも買ったりウキウキしてたのに、旅行から帰ってきても彼はあんま話を聞いてない感じで、様子がおかしいなとは思ったんです。
それで寝る時に私が布団に先に入ってたらすぐ近くに彼のスマホが上向きで置いてあって。光った画面に知らない女性の名前で「今日はありがとう」ってLINEがきてるのが目に入りました。確認せずにはいられなくてやりとりを見たら、その浮気相手と私のことを「ストーカーだ」って悪口で盛り上がってるのも見ちゃったんですよね。
──さしみちゃん名義で家を借りてるのに。
さしみちゃん しかもバリアフリーの家を探すのって本当に大変で、30軒くらい回ってやっと見つけた物件だったんです。それに当時は親との衝突が激しい時期で、絶縁宣言をして出てきちゃってたので戻るわけにもいかない。なので彼のスマホを見た瞬間に頭が真っ白になって、どうしようってパニックになって震えが止まりませんでした。
──その後どうしたんですか。
さしみちゃん 翌日には私の荷物が届いてしまうので、今すぐどうするか決めなくちゃと思って話し合いを持ちかけました。でも彼は完全に開き直って「この子と付き合ってる俺と暮らすか、お前が出ていくかの二択だ」としか言わなくて。それで仕方ないので私が家を出ることにしました。不動産屋さんにも事情を伝えて違約金も払って、実家に頭を下げて戻りました。
別れるのに7年かかってしまった精神的な理由
──それで完全に別れたんですか。
さしみちゃん それが共依存状態だったので、半年後くらいにまたヨリを戻してしまってそれから2年くらい付き合ってたんです。その間も彼の浮気が怪しいことはたびたびあったんですけど、ズルズルしちゃってて……。でもあらためて「今度こそ一緒に住もう」って話になって、契約のために駅で待ち合わせしてたんですけど彼が来なくて、どうやらゲーム配信してたみたいでした。
――変わりませんね……。
さしみちゃん そのとき「なんでこんないい加減な人と付き合ってるんだろう」って急に冷静になったんです。私もデザイナーとして働きはじめて数年経ってて、自分の生活も安定してきた時期だったので「もう気持ちを揺さぶってくる男なんていらない」って思えて別れられました。
──ついに別れられたんですね。
さしみちゃん 7年かかりましたけどね。その後はマッチングアプリとかもやってみたんですけど、障害者ならではの難しさはやっぱり感じました。恋愛前提の出会いなのに、初対面の会話がどうしても「私はこういうことができないんです」っていうできないことの自己紹介になりがちで、その先に進みづらい感覚はあります。
――悪意はなくても、恋愛の雰囲気にはなりづらい?
さしみちゃん そうですね。できないことを最初に伝えた方がいい気もするんですけど、そこから始めてしまうと発展はしづらいですよね。
――どういうことを伝えるんでしょう。
さしみちゃん たとえば自動販売機の上の方のボタンを押すとか、そういう些細なことですね。自分のために整えた家の中なら車椅子に乗ったままほとんどのことができるし、高さも整えてあるので少しだけなら立ったり歩いたりできるんです。でも自動販売機の前で立つのに十分なスペースを確保して、掴まるところを用意して……ってなるとスッとは立ち上がれない。そんな感じで、できること・できないことを言葉で伝えるのって結構大変で、見てもらわないとわからないことも多いんです。
「障害者に恋愛ができないとは思ってないんですけど…」
──それが恋愛の場面でもいろいろと出てくるわけですね。
さしみちゃん もちろん障害者に恋愛ができないとは思ってないんですけど、やっぱり気をつけなきゃいけないこともあるとは思ってます。私自身「障害があっても気にしないよ」って言われたこともあるんですけど、中には私が物を取れなかったり段差があったりするとテンションが上がる人もいたんです。助けてくれるつもりはもちろんあるんですけど、それって私のことを対等なパートナーじゃなくて「守ってあげたい」存在として見てますよね。中には、自分より弱い人を助けることで自尊心を保ちたいタイプもいますし。
──対等な関係、難しいですね。
さしみちゃん だから最近は、パートナーを見つける前に「パートナー以外の頼れる人」が必要なのかなと思うようになりました。障害があるとどうしてもサポートが必要な場面が出てくるんですけど、その時にパートナーがいなくても生活できる、という自信が必要な気がしてます。「一人でも生きていくぞ」ってエネルギーがないとパートナーに依存しがちになって、何か嫌なことがあっても逃げられなくなっちゃうので。障害者の恋愛こそ自立が大事だと思います。
〈地味な外見だと舐められ、ギャルだと「派手な奴に譲りたくない」…車椅子ギャル・さしみちゃん(30)が“炎上”を経験しても「思いやり頼みは難しい」と発信しつづける理由〉へ続く
(雪代 すみれ)
