「AIによる代替は止まらない」 雇用を“奪う”当事者、AIエージェント「Genspark」COOに問うた「人類が直面する課題」
AIによる雇用破壊が現実味を帯びてきている。Claude開発企業のアンソロピック・アモデイCEOが「AIの普及で失業率が5年以内に、10〜20%に達する可能性がある」と述べたことも話題になった。
仕事のポジションが失われるだけではない。AIエージェントというサービスが開発され、「パワポ作り」「エクセルへのデータ打ち込み」「市場調査」といったホワイトカラーの作業が、丸ごと機械に代替されるようになってきたのだ。
世界が直面する課題に、雇用を“奪う側”の当事者はどう答えるか。日本でも利用者の多いAIエージェント「Genspark(ジェンスパーク)」を開発する米国のユニコーン企業Genspark Incのウェン・サン(Wen Sang)COOに問うた。(湯浅大輝/フリージャーナリスト)
増大する人類の欲望
──Gensparkはホワイトカラーがこれまで担ってきた作業を丸ごと代替しうるAIエージェントを開発しています。日本でも電通、阪急阪神不動産、船井総合研究所、世田谷区といった名だたる企業や自治体が導入しており、注目度は高いです。ただ、AIへのバックラッシュ(反動)は根強く、実際に2026年5月16日号の英エコノミスト誌が「The jobs apocalypse」、つまり「雇用の黙示録」を特集テーマとして取り上げるなど、AIによる雇用の淘汰はすでに現実となっています。こうしたAIへの恐怖について、当のAI企業の経営者としてどう受け止めていますか。

ウェン・サン氏:資本主義をどう捉えるか、という点にその議論は帰着するのではないでしょうか。つまり、ヘンリー・フォードが20世紀初頭にT型フォードを開発し、誰もが自動車に乗ることができるようになった時も、「馬に乗ろう」と呼びかけていた人たちが存在していました。
それから100年経った今、誰もそんなことをもう主張しません。資本主義とは私が考えるに、生産性が飛躍的に向上することを指します。100年前と比べると、人類の生産性は大幅に上がりました。生産性が上がったということは、人類の欲望もより大きくなり、(そうした欲望を)実際に満たすことが可能になったことを意味します。
AIエージェントによる代替は止まらない
ウェン・サン氏:もっと美味しいものを食べたい。もっと短い時間で遠くまで行きたい。もっと早く、効率的に作業をしたい──。人間の欲望には際限がなく、資本主義とテクノロジーが、これを拡大し、現実のものにしていきます。
その結果として、今の人間は100年前の人類より多くのエネルギーを消費し、個性的な暮らしを送り、進歩した文明の中で生きられるようになりました。
AIによる「産業革命」も、T型フォードの開発のように、多くの人たちの生産性の向上と欲望の達成に寄与します。AIエージェントによって達成されるのは「ホワイトカラーを雑務から解放する」革命であり、この流れは止まりません。
数字をエクセルに打ち込み、プレゼンのためにパワーポイントで図解し、会議メモをSlackにコピペし、市場調査のために延々と検索を繰り返し、クタクタになって一日を終えたい、と思っていたサラリーマンがこれまでにいたのでしょうか?
実際には、こうした非人間的な雑務を機械が代替できなかったから、人間がやっていただけです。これからのホワイトカラーは、もっと創造的で、もっと戦略的で、もっと生産性の高い存在になれるはずです。
〈「若年層の雇用を奪っているのではないか」「AIエージェントは今後何がどこまでできるようになるのか」「AIの限界は」「日本市場をどう思うか」という問いに対するサンCOOの回答などは、新潮QUEで詳報している〉
湯浅大輝(ゆあさ だいき)
フリージャーナリスト。同志社大学在学中に米アリゾナ州立大学へ交換留学。卒業後、記者としてのキャリアを開始し、経済メディア、小売専門誌を経て独立。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多様なテーマを取材・執筆している。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に「出生数75.8万人の衝撃」「奈良のシカ」(ともにJBpress)、「リニア 20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks)、「精肉MDの新常識」(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。
デイリー新潮編集部
