話題のヨドバシ池袋。奥には「ビックカメラ」と「ヤマダ電機」も見える

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 連日のように、奇妙な“汚物騒動”に見舞われている「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」(以下、ヨドバシ池袋)。いたずらなのか、嫌がらせなのか、それとも客が漏らしてしまったのか――SNSでは「店の床に汚物が落ちていた」といった書き込みをはじめ、様々な憶測が飛び交っているが、店を訪れると謎を解くカギが見えてくる。【取材・文=宮原多可志】

【写真】まるで迷路のような「ヨドバシ池袋」 探索の末に見つかった男子トイレの入口

建物の構造がわかりにくい

 筆者が大学生時代にパチンコ屋でアルバイトをしていたときは、負けた腹いせにトイレに汚物を塗りたくる迷惑な客がいた。それほど、汚物を使った嫌がらせは古典的なものといえる。ヨドバシ池袋の場合はどうだろう。本当に汚物が落ちていたとして、嫌がらせの可能性もあるし、その場合は一刻も早い解決が望まれる。だが、体調不良で致し方なく……など、当事者に考慮すべき事情も考えられる。

話題のヨドバシ池袋。奥には「ビックカメラ」と「ヤマダ電機」も見える

 実際にヨドバシ池袋に行って感じたのは、とにかく建物の構造が複雑で、わかりにくいということだった。筆者がよく足を運ぶ「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」(以下、ヨドバシ秋葉原)は2005年に建てられたビルで、フロアが長方形であり、構造もシンプルで機能的だ。しかし、ヨドバシ池袋は1950年代に増改築が繰り返され、長らく西武百貨店として営業してきた古いビルを使っている。

 増改築の影響で、異様に横に長く、しかも不整形な平面であるため、フロアのほとんどが西武百貨店だった頃から迷いやすい建物だった。階ごとに店内の位置を“番地”などと表記していたことからもわかるように、まるで一つの街のような造りになっていたため、地図を読むのが苦手な人は目的の店にたどりつくまでに苦労していたようだ。

百貨店時代は上の階は閑散としていた

 筆者は池袋駅のヘビーユーザーの“埼玉都民”なのでよくわかるのだが、西武百貨店がビルの大半を占めていた頃は、日本有数の売り上げを誇っていたデパ地下が異常なほど混んでいて、続いて1階の化粧品売り場が混雑し、上の階に行くほど人が減っていき、高級腕時計やラグジュアリーブランドなどを扱うフロアは人影がまばらだった。

 百貨店は基本的に外商頼みなので、人がまばらになっても問題はないだろう。ところが、ヨドバシのような家電量販店は店舗で買う客が多く、まったく性質が異なる業態なのである。そして、ヨドバシになってからは、上の階も、下の階も、とにかく人でごった返している。

 百貨店だった建物を転用したうえ、増改築のせいで、改装に苦労したのではないかと思われる。実際、改装後も迷路のような構造は昔のままで、あふれる人を捌ききれていないように思えた。

トイレの数が少なすぎる

 さて、本題のトイレの話に移ろう。ヨドバシ池袋は、明らかにトイレの数が足りない。地下1階から5階までの6フロアがヨドバシなのだが、トイレは4、5階にそれぞれわずか1ヶ所。男子トイレはそれぞれの階ごとに、小便器が4、大便器が4ある。つまりヨドバシ内には、合計で小便器が8、大便器が8しかないのである。集客数や駅の規模の割には、少なすぎではないだろうか。

 筆者が訪問したのは平日金曜日である。4階も5階も大がすべて埋まっており、3人待ちの列ができていた。休日はさらに並ぶ可能性がある。ヨドバシ以外のテナントが入る6階にもトイレはあるし、西武百貨店にもトイレはあるものの、建物が広いため移動がしんどい。この少なさでは、トイレに行く前に漏らしてしまっても不思議ではないように思う。

 そのうえ、トイレ内の通路が狭い。通路が曲がっているうえに、すれ違うのが大変なほど狭い。もしかすると、西武百貨店時代の構造をそのまま使っているのかもしれない。トイレ内も狭く、小便器の場合は背中を向かい合わせにして用を足さねばならない。ヨドバシ秋葉原の空間に余裕があって快適なトイレとは真逆である。

もしトイレが空いていなかったら

 ヨドバシカメラは、トイレがいつも混雑しているイメージがある。“小”なら少し待てば空くが、“大”がなかなか空かないと悲劇である。そうなると上の階に行くしかないのだが、そこも空いていなかったら最悪の事態だ。辛抱しながら、上に移動しなければいけない。

 それでも、ヨドバシ秋葉原なら、エスカレーターの位置がシンプルでわかりやすいので移動が楽だし、急いで上に行けば間に合うだろう。ところが、ヨドバシ池袋は店内が不整形なので、エスカレーターを探しているうちに迷いそうになってしまうのだ。そして、迷っているうちに……とは、考えられないだろうか。

 果たして事件の真相は、そしてその背景にあるものとは――。この件について、ヨドバシカメラ本部に見解を伺ったところ、

「事実確認が十分でないため、コメントは控えさせていただきます」

 とのこと。ヨドバシ池袋の汚物問題の真相がいったい何なのか、はっきりとはわからない。しかし、エスカレーターの前に汚物が転がっていたという情報もXであり、トイレが空いておらず、上の階に向かっているとき、我慢できなくなって……、そんな悲劇が起こったのではないかと、推測できてしまう。

公共空間にトイレを増やすべき

 池袋駅は都内有数のターミナルであり、新宿駅などに次いで、日本屈指の乗降客数を誇る駅である。にもかかわらず、駅のトイレの数が足りているとは言い難い。ヨドバシ池袋は駅に直結しているのがウリだが、急にトイレに行きたくなった人が駆け込むケースも多いのではないかとみている。

 そもそも、日本の公共空間は「トイレの数が少ない」という意見がある。都内は人がごった返しているのに、公的なトイレが少ないのだ。そのため、商業施設のトイレを借りる人も少なくないはずだ。インバウンド観光客も増加している今、都市部のトイレ不足の問題は国を挙げて改善すべきではないだろうか。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部