巨人と対峙する阪神・藤川監督

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 第2回【「橋上巨人」快進撃のカゲで阪神が実力を発揮できないのはナゼか…セ優勝争い3チームで「4番を打ったレジェンド」が首をかしげる理由】からの続き──。プロ野球における「伝説の試合」と語り継がれている名勝負のうち、誰もが認めるのは1994年に中日と巨人が戦った「10・8決戦」だろう。残り1試合の段階で、中日と巨人は69勝69敗0分で共にセ・リーグ首位だった。(全3回の第3回)

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 その「残り試合1」が10月8日にナゴヤ球場で行われた中日・巨人戦。結果は3対6で巨人が勝利し、劇的なリーグ優勝を飾った。

巨人と対峙する阪神・藤川監督

 だが、もし「10・8決戦」が今のセ・リーグで戦われたとしてみよう。巨人が勝利し、多くのプロ野球ファンが強烈な感動に心を震わせても、クライマックスシリーズ(CS)が待っている。

 当時の3位は広島。そのため、まずは中日と広島でCSファーストステージが戦われる。勝者がファイナルステージで巨人と相まみえるわけだ。どうしたって「10・8」の感動が薄まるのは避けられない。

 いや、それどころか、アドバンテージが設けられているとはいえ、巨人が敗れる可能性もゼロではない。ナゴヤ球場でプロ野球史に残る激戦を制して優勝したにもかかわらず、日本シリーズには出られない──こんなことが現実のものになったとしたら、巨人ファンはどのように受け止めるだろうか。

 同じことは1988年の「10・19」でも起こる。9月15日の段階で2位近鉄は首位の西武に6ゲーム差を付けられていたのだが、翌16日から8連勝するなど驚異的な粘りを見せる。

 近鉄の最終戦はロッテとのダブルヘッダー。もし敵地の川粼球場で2連勝すれば最後の最後で逆転優勝という劇的な展開だった。

今の混セにCSは邪魔

 第1戦は近鉄が9回表に逆転して勝利。第2戦は4対4の引き分けのまま延長戦に突入。当時のパ・リーグには「試合開始4時間を経過した場合はそのイニング終了で打ち切り」というルールがあり、試合は10回裏で時間切れ終了となった。

“ミラクルバファローズ”は試合に負けなかったにもかかわらず、リーグ優勝は逃した。勝利したことで観客を熱狂させた巨人とは異なり、近鉄は敗北で観客の涙を誘った。

 だが、これもCSが実施されると、まずは3位の日ハムと近鉄がファーストステージを戦い、勝者が西武に挑戦することになる。

 もし近鉄が西武をファイナルステージで破ったら、どう受け止めるべきなのだろうか。奇跡の逆転優勝と受け止めるべきなのか、それとも「10・19」の涙が汚されたと怒るべきなのか……担当記者が言う。

「今年のセ・リーグはシーズン終盤まで大混戦が続いても、巨人、阪神、ヤクルトのうち1球団が抜け出して圧倒的に独走したとしても、CSが改めて議論の的になる可能性があります。前者の場合、最後まで手に汗握る混戦が続き、激戦を制して優勝チームが決まったのに、2位や3位のチームが日本シリーズ出場を決めてしまえば、感動もシラけてしまうでしょう。後者の独走優勝でも同じです。勝負は時の運です。短期決戦では2位や3位のチームがペナントレースの結果をひっくり返してしまうことは充分にあり得ます」

CSが持つ致命的な欠陥

 今年からCSのアドバンテージ制度が変更される。ファーストステージを勝ったチームが「優勝チームから10ゲーム差以上離されていた」か「リーグ戦の勝率が5割未満」の場合、優勝チームのアドバンテージは従来の1勝から2勝に増える。

 とは言え、どれだけアドバンテージが厳しいものになったとしても、2位や3位のチームが1位のチームを破る可能性は常に存在する。絶対にゼロにはならない。

 野球解説者の広澤克実氏は、以前からCSの開催には反対してきた。セ・リーグとパ・リーグの優勝チームが日本シリーズを戦うべきだと主張してきた。

「私はCSに反対しています。そのためCSの改革案を提案するつもりはありません。一方でポストシーズンの魅力も充分に理解しています。プロ野球でポストシーズンを開催することは大賛成ですが、『リーグ優勝したチームで戦われる』という大原則を曲げてはなりません。となるとプロ野球は最低でも4リーグが必要になります。ただし3リーグ制にして、残り1チームはワイルドカードで選ぶのは許容範囲内だと思います。いずれにしても2位や3位のチームが日本シリーズに出場する可能性が存在する限り、CSはリーグ優勝の価値を毀損してしまうという大きな欠陥を抱えています」(同・広澤氏)

意外な論点“勝負勘”

 XなどのSNSでもCS反対論は目立つ。つまりプロ野球ファンの中で、CS廃止論は決して少数意見ではないのだ。しかしながら、不思議なほどCS廃止論は盛り上がらない。なぜだろうか。

「最近になって気づいたのですが、GMや監督、コーチの中には意外と“CS擁護派”が多いのではないでしょうか。なぜなら『CSが廃止されると日本シリーズでの勝負勘が失われてしまう』と不安を覚えているからです。仮にCSが廃止されたとします。もし9月にリーグ優勝を決めてしまうと、日本シリーズが行われる10月まで緊張感に満ちた試合は行われません。一方、相手リーグは終盤までもつれにもつれたとしましょう。もし劇的な優勝を成し遂げたら、その勢いが日本シリーズに反映される可能性があります」(同・広澤氏)

日程の見直しが重要

 セ・リーグのAというチームは早々とリーグ優勝を決めて勝負勘が鈍っている。一方、パ・リーグのBというチームは最終戦で劇的な優勝を決めたため勝負勘は冴えている。何より選手の勢いが完全に持続されている。

 こんな2チームが日本シリーズで相まみえたら、Aチームが苦戦を強いられるのは火を見るより明らかだ──。

 広澤氏は「ここで考えなければならない問題があります。日本のプロ野球はアメリカのメジャーに比べると、ポストシーズンの日程が間延びしているのです」と指摘する。

「昨年、ドジャースがとてつもない過密スケジュールでポストシーズンを戦って日本でも話題になりました。10月4日から地区シリーズが始まり、ワールドシリーズが終わったのは11月1日です。そもそもリーグ戦の消化試合もダブルヘッダーが当たり前という過密日程です。メジャーはファンを待たせないよう急ぎに急ぐのです。CS擁護の主な論拠は『消化試合がつまらなくなる』と『日本シリーズに勝つため勝負勘を研ぎ澄ませたい』の2点だと思いますが、これは消化試合とポストシーズンの日程をメジャーなみに急ぐことで解決できるのではないでしょうか」

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デイリー新潮編集部