「もうお義母さんとは関われません」嫁は孫娘を連れて海外へ…。日本に残された70代女性が後に知った“本当の理由”
家族だから分かり合えるはずだと思っていても、親世代と子ども世代の距離感は簡単ではありません。特に、結婚した子どもの配偶者や孫との関係では、善意のつもりの言葉が相手を追い詰めることもあります。距離を置かれて初めて、自分の言動がどう受け止められていたのかに気づくケースもあります。
「私は孫のために言っただけなのに」義娘との関係に亀裂
久美子さん(仮名・73歳)は、夫を亡くしてから一人暮らしをしています。年金は月17万円ほど。近くには長男夫婦が住んでおり、久美子さんにとって一人娘のように感じていた嫁・彩乃さん(仮名・39歳)と、小学生の孫娘に会うことが何よりの楽しみでした。
彩乃さんは海外出身で、長男とは仕事を通じて知り合いました。結婚当初、久美子さんは「日本での暮らしは大変でしょう」と気にかけ、食事を差し入れたり、孫娘の世話を手伝ったりしていました。
彩乃さんも最初は感謝していました。
「お義母さんが近くにいてくれて助かります」
その言葉を聞くたび、久美子さんは自分が頼りにされていると感じました。
しかし、孫が成長するにつれ、久美子さんの関わり方は少しずつ強くなっていきます。
「日本語をもっときちんと話させないと」
「お弁当はもう少し和食にした方がいいんじゃない」
「海外のやり方ばかりだと、学校で困るわよ」
どれも孫を思っての言葉でした。けれど彩乃さんにとっては、自分の子育てや文化を否定されているように聞こえていました。
ある日、孫娘が学校で友人とトラブルになりました。久美子さんは心配のあまり、彩乃さんに言いました。
「やっぱり家庭でのしつけが大事なのよ。日本ではそういうところを見られるから」
その瞬間、彩乃さんの表情が固まりました。
「もう義母さんとは関われません」
そう言い残し、彩乃さんは孫娘を連れて実家のある海外へ一時帰国しました。長男からは「しばらく距離を置きたい」とだけ連絡がありました。
久美子さんは呆然としました。
「私は孫のために言っただけなのに」
何度もそうつぶやきましたが、電話はつながらず、孫娘の写真も送られてこなくなりました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしの人は増加しており、令和7年時点で65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。久美子さんにとって、近くにいる家族との交流は老後の大きな支えでした。そのつながりを失ったことは、日々の生活から張り合いを奪っていきました。
長男が語った…義娘が距離を置いた本当の理由
数ヵ月後、長男が一人で久美子さんを訪ねてきました。久美子さんはすぐに尋ねました。
「彩乃さんは、まだ怒っているの?」
長男はしばらく黙ったあと、静かに話し始めました。
「怒っているというより、ずっと苦しかったんだと思う」
彩乃さんは、日本での生活に慣れようと必死でした。言葉の壁、学校とのやり取り、地域との付き合い。長男が仕事で忙しいなか、分からないことを一人で抱え込むことも多かったといいます。
そこへ久美子さんから、食事やしつけ、日本語について何度も助言されるようになりました。久美子さんは支えているつもりでしたが、彩乃さんには「あなたのやり方ではだめ」と言われ続けているように感じられたのです。
「母さんが悪意で言っていないのは分かってる。でも、善意でも相手を傷つけることはあるよ」
その言葉に、久美子さんは何も言い返せませんでした。
久美子さんは、彩乃さんに手紙を書きました。言い訳ではなく、これまでの言葉が負担になっていたことを謝り、孫娘のことを大切に思っている気持ちだけを短く伝えました。
すぐに返事はありませんでした。それでも数週間後、長男を通じて孫娘の写真が一枚届きました。そこには、久美子さんが送ったぬいぐるみを抱いた孫娘の姿がありました。
関係が元通りになったわけではありません。彩乃さんと孫娘がすぐに日本へ戻るかも分かりません。それでも久美子さんは、以前のように「正しいこと」を伝えようとするのをやめました。
家族であっても、距離感を間違えれば傷つけてしまいます。特に子育てに関する言葉は、助言のつもりでも相手には批判として届くことがあります。
大切なのは、相手の暮らしや考え方を変えようとする前に、まず尊重する姿勢を持つことです。孫を思う気持ちがあるからこそ、親である夫婦の判断を信じ、必要とされたときに支える。その距離感が、家族の関係を長く穏やかに保つためには欠かせません。

