「強皮症」はどのような基準で診断される?受診の目安となる症状も解説!【医師監修】
強皮症は、皮膚や血管、内臓などに線維化や硬化が起こる自己免疫疾患であり、症状や進行の仕方には大きな個人差があります。初期には、レイノー現象や手指のむくみなど軽い症状から始まることも多く、診断までに時間がかかるケースも少なくありません。
本記事では、強皮症の診断の流れやACR/EULAR2013分類基準のポイント、診断時に行われる主な検査を解説します。
監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター)
【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)
診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科
強皮症はどのように診断されるのか

強皮症の診断はどのような流れで進められますか?
強皮症の診断は、まず症状や身体所見を確認したうえで、血液検査や画像検査などを組み合わせながら総合的に判断します。初期には、レイノー現象や手指のむくみ、皮膚の硬化などがきっかけとなり、強皮症が疑われるケースが多くみられます。診察は、皮膚硬化の範囲や指先の潰瘍、爪周囲の毛細血管異常などを確認します。
その後、血液検査で自己抗体を調べます。特に、抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(Scl-70抗体)、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体などは、強皮症の診断や病型判定に重要とされています。
また、肺や心臓などの内臓障害を確認するために、胸部CT検査や呼吸機能検査、心エコー検査などを行うこともあります。特に間質性肺疾患や肺高血圧症は、自覚症状が少ないまま進行する場合があるため、早期から評価することが重要です。
さらに、爪郭毛細血管の異常を確認するために、ダーモスコピーや毛細血管観察検査を行うこともあります。
強皮症は単一の検査だけで診断されるわけではなく、症状・身体所見・自己抗体・画像検査などを総合して診断されます。
参照:
『全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(日本皮膚科学会ガイドライン)
『全身性硬化症(強皮症)の分類基準』(愛知県医師会)
ACR/EULAR2013分類基準について教えてください
ACR/EULAR2013分類基準は、アメリカリウマチ学会(ACR)とヨーロッパリウマチ学会(EULAR)が2013年に公表した、強皮症の国際的な分類基準です。強皮症に特徴的な症状や検査所見に点数を設定し、合計9点以上となった場合に全身性強皮症と分類します。
代表的な評価項目は、手指より近位に及ぶ皮膚硬化、手指の腫脹や硬化、指尖部潰瘍、毛細血管拡張、爪郭毛細血管異常、間質性肺疾患、肺高血圧症、レイノー現象、強皮症関連自己抗体などです。
『両手における手指より近位に及ぶ皮膚硬化』は9点とされ、この所見のみで分類基準を満たします。
また、自己抗体では、抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が評価対象です。
参照:
『全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(日本皮膚科学会ガイドライン)
『全身性硬化症(強皮症)の分類基準』(愛知県医師会)
日本では強皮症の診断基準はどう定められているのですか?
日本では、厚生労働省研究班などが作成した診断基準が用いられています。日本の診断基準は、『両側性の手指を越える皮膚硬化』を大基準とし、この所見があれば強皮症と診断されます。
また、小基準として、手指に限局する皮膚硬化、爪郭部毛細血管異常、指尖部潰瘍や陥凹性瘢痕、両側下肺野の間質性陰影、強皮症関連自己抗体陽性などが定められています。大基準、または小基準のうち一定条件を満たした場合に診断されます。
さらに、日本の基準では、腎性全身性線維症や好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症など、強皮症と似た症状を示す他疾患を除外することも重視されています。
現在の診療では、日本の診断基準に加え、ACR/EULAR2013分類基準も参考にしながら診断が進められています。
参照:
『全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(日本皮膚科学会ガイドライン)
『全身性硬化症(強皮症)の分類基準』(愛知県医師会)
診断のために行う主な検査

強皮症の診断ではどのような血液検査が行われるのか教えてください
強皮症の診断は、自己抗体の有無や炎症状態、内臓障害の有無などを確認するために血液検査を行います。特に重要なのが、強皮症に関連する自己抗体の検査です。自己抗体とは、自分自身の細胞や組織に反応する抗体のことで、強皮症では病型や合併症のリスクを推測する手がかりになります。
また、炎症反応や貧血の有無、腎機能なども確認します。腎障害が疑われる場合には、クレアチニンやeGFRなどを測定し、腎機能の低下がないかを評価します。
さらに、肺や心臓への影響を把握する目的で、KL-6やSP-D、BNP、NT-proBNPなどの項目を調べることもあります。これらは間質性肺疾患や肺高血圧症の評価に役立ちます。
血液検査だけで強皮症を確定診断することはできませんが、症状や画像検査と組み合わせることで、診断や病型判定に重要な役割を果たします。
自己抗体にはどのような種類がありますか?
代表的なのが、抗セントロメア抗体です。限局皮膚硬化型全身性強皮症で多く見られ、ゆっくり進行するタイプで検出されやすいとされています。一方、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(Scl-70抗体)は、びまん皮膚硬化型全身性強皮症で多くみられます。
また、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体は、皮膚硬化の進行が速いタイプで検出されることがあります。強皮症腎クリーゼとの関連が指摘されている抗体です。
そのほかにも、抗U1RNP抗体などが検出される場合があります。
皮膚や臓器の検査では何を評価するのですか?
皮膚の検査は、皮膚硬化の範囲や程度を評価します。診察は、指や手背、前腕、上腕、体幹などを触診し、皮膚の硬さや厚みを確認します。国際的にはmodified Rodnan skin score(mRSS)という評価方法が広く用いられており、全身17か所の皮膚硬化を点数化して重症度を判断します。
また、爪郭毛細血管異常の有無を確認することも重要です。ダーモスコピーや毛細血管観察検査によって、毛細血管の拡張や出血、消失などを評価します。
肺の検査では、間質性肺疾患や肺高血圧症の有無を調べます。胸部CT検査は肺の線維化の広がりを確認し、呼吸機能検査は肺活量や酸素を取り込む機能を評価します。
さらに、心エコー検査は肺高血圧症や心機能低下の有無を確認します。必要に応じて右心カテーテル検査が行われることもあります。
消化管は、逆流性食道炎や食道運動低下の有無を確認し、腎機能検査は強皮症腎クリーゼなどの合併症を評価します。
参照:
『全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(日本皮膚科学会ガイドライン)
『全身性硬化症(強皮症)の分類基準』(愛知県医師会)
強皮症の診断基準についてよくある質問

早期診断のサインとなる症状はありますか?
強皮症は、レイノー現象が早期診断に大きく関わります。レイノー現象は、寒い場所に行ったり冷たい物に触れたりした際に、手指の血流が低下し、白色や紫色に変化する症状です。しびれや痛みを伴うこともあり、強皮症の初期症状として多くみられます。
また、手指のむくみ感や腫れぼったさも、初期によくみられる症状です。朝に手がこわばる、指輪が入りにくくなったなどの変化から気付くケースもあります。
さらに、皮膚のつっぱり感や硬さ、指先の小さな傷や潰瘍、爪周囲の出血点なども早期診断につながる重要な所見です。
そのほか、空咳や息切れ、胸焼け、疲れやすさなどがみられる場合もあります。
強皮症の診断確定までにはどのくらいの期間がかかりますか?
強皮症の診断までにかかる期間には個人差があります。典型的な皮膚硬化や自己抗体陽性がみられる場合は、早期に診断へ至ることがあります。一方で、初期にはレイノー現象や手指のむくみだけしか症状が現れないケースもあり、診断までに時間を要することも少なくありません。
特に、限局皮膚硬化型全身性強皮症は進行がゆるやかなことが多く、数年かけて徐々に特徴的な症状がそろう場合もあります。
また、強皮症は症状だけで確定できる病気ではなく、自己抗体検査や胸部CT、呼吸機能検査、心エコー検査などを組み合わせながら総合的に診断します。そのため、複数回の通院や経過観察が必要になることもあります。
ただし、現在はACR/EULAR2013分類基準などによって、以前より早期診断しやすくなっています。レイノー現象や手指腫脹の段階で専門医へ相談することで、早い段階から検査や治療につなげられる可能性があります。
編集部まとめ

強皮症の診断は、皮膚硬化やレイノー現象などの症状に加え、自己抗体検査や画像検査、呼吸機能検査などを組み合わせながら総合的に判断します。
初期にはレイノー現象や手指のむくみなど軽い症状のみの場合もありますが、進行すると肺や心臓、腎臓などの内臓障害を伴うことがあります。そのため、気になる症状がある場合は早めにリウマチ膠原病内科や膠原病内科を受診し、必要な検査を受けることが大切です。
参考文献
『全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(日本皮膚科学会ガイドライン)
『全身性硬化症(強皮症)の分類基準』(愛知県医師会)

