テレビ信州

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特集です。
木の人形が、まるで生きているように動き出す――。
長野県木祖村の工房から生まれた、温もりと葛藤のコマ撮り映画。その舞台裏を追いました。

ゾンビ
「ここは、木のおもちゃの世界なんだ」
ハチ
「お前は人間世界から、木のおもちゃの世界に来たんだ」
ネコ
「そうだ、お前は木のおもちゃになったんだ」

「木のおもちゃになった?何なんだ、やめろ、来るな」

自分は人間だと主張する、馬の人形。しかし、その姿が理解できていないようです。

女性
「な、何よ」

「やっぱり人形がしゃべってるよ」
女性
「はー?何を言っているの。あなただって人形じゃない」

「俺が人形?」
女性
「そうよ、そこの鏡を見たら?」

「あー、何だこれは。しかも、馬かよ」

2017年に製作された木の人形による短編アニメーション映画です。
大切な人を失い、生きる気力をなくしていた男が、ある日突然、木の馬の人形になっていた――そんな物語です。
映画を製作したのは、木祖村に住む木のおもちゃ作家、草刈成雄さん(57)。大阪から信州に移り住み、今年で31年になります。

草刈成雄さん
「内臓人間、山口つとむ君。これ一応…楽器になっている」

個性豊かな人形が並ぶ工房。
併設された店には、50から100種類の商品が並びます。

草刈成雄さん
「売れ筋は、このカスタネットとか、おにぎりからりんという音の出るおもちゃ」

よく売れるのは、映画とは対照的な乳幼児向けのおもちゃ。全国から注文が寄せられています。

草刈成雄さん
「妻が木祖村の出身なんで、大阪で出会ってですね。3人娘の長女ということもあり、こっちに来ようかということになりました」

結婚を機に移住した木祖村は、林業が盛んな地域。身近に木がある環境が、木工の道へと導きました。

草刈成雄さん
「何ていいものに出会ったんだなって、木はすごいんだ、すてきなんだっていうのは、やり始めた当初は思いましたね。いろんな種類があって、触った感じが良かったり、匂いもいいじゃないですか。それに取りつかれたみたいなところはありますね」

職業訓練校で木工を学び、家具製作を経て、30歳で本格的に木のおもちゃ作りを始めました。

下絵を描かず、糸のこぎりで形を作ると、あっという間に恐竜や「木曽」の文字が完成。長年培った技術の高さがうかがえます。

独学で映像制作も学びました。

工房が生み出す、全国でも珍しい“木のおもちゃの映画”。
映像用に作った人形は、20体に上ります。
10分ほどかけて撮影する50枚ほどの写真。それをつなぎ合わせても――

完成する映像は、2秒ほどです。

中澤久美子ディレクター
「気が遠くなるような気もしますけどね」
草刈成雄さん
「慣れてくるとその時間、本当に心地いいんですよ、不思議なことに」

しかし、撮影は順調なことばかりではありません。
人形の上半身と下半身は、磁石でくっついていますが…。

※人形が倒れて、体が真っ二つに…

草刈成雄さん
「よくありますよ。諦める時もある」

撮影した写真は約180枚。
出来上がった映像に、人形の声と音楽をあててみると…。

「人形…あ…何で?」

2012年に初めて製作したアニメーション。
きっかけは、仲間が作ってくれたコマ撮り映像でした。

草刈成雄さん
「コマ撮りを見た時に、やっぱりむちゃくちゃ感動したんですよ。自分もやるぞ、やりたいぞと」

これまでに3本の作品を製作し、国内3つの映画祭では審査員特別賞などを受賞しています。
製作には3年から4年。
家族や仲間の協力も欠かせません。

6月、木曽町で上映会が開かれました。

草刈さんには葛藤もあります。

草刈成雄さん
「最近AIの生成動画に人形の写真を入れたら、30秒ぐらいしたら動き出して、よじ登ったり勝手なことをするんですよ。あれを見てショックを受けまして。だって、自分がずっとやってきたことが30秒ぐらいで、あんなに簡単にできれば、あと数年したらもしかしたらちょっとした映画ができてしまうのではないか。そういうのもあって、抵抗する意味でもアナログ的な映画祭をやってね。皆さんと何か…そういう気持ちで」

草刈さんの思いは、しっかりと伝わったようです。

映画を見た子ども
「楽しかった。すごかった」
「人形から涙が出ているのが、結構すごかった」
「初めて見た」

塩尻市から
「人形の手足とか目の動きとかああいうのを動かしているのかと、すごく興味が湧くし、膨大な時間を使っていたんだろうなと」

新作の製作に向け、模索を続けています。

草刈成雄さん
「木工家が作った無名のアニメーションなんですけど、それを見たいって思う人がいるのだろうかと思うわけですよね。Netflixとかね、いろいろなものでいろいろな映画が、お金のかかった素晴らしい映画が見られる中でね。でもやりたい、作りたい、作らなきゃいけないという気持ちがあって、みんなをもっとあっと驚かせたいぞという気持ちがある」

木のおもちゃ工房が生み出すコマ撮り映画。木に命を吹き込む挑戦は、これからも続きます。