「テレビ離れ」全世代で加速「世代間の共通記憶がなくなる」懸念も ひろゆき氏「高齢者向けばかりではコンテンツとして未来がない」

NHK放送文化研究所が発表した最新の国民生活時間調査の結果が、メディア業界内外で話題になった。平日に15分以上リアルタイムでテレビを視聴した人の割合が、高齢層を含むすべての世代で減少したことが明らかになったためだ。視聴者のライフスタイルが激変する中、これまで日本社会の共通基盤として機能してきたテレビの役割が根本から揺らぎ始めている。リアルタイム視聴の減少がもたらす社会的影響や、岐路に立たされたテレビ局が今後進むべき生存戦略について「ABEMA Prime」で議論が行われた。
■全世代でテレビのリアルタイム視聴が減少

同研究所が公表したデータによると、平日にリアルタイムでテレビを見る人の割合は全体で前回比8%減の71%へと落ち込んだ 。世代別では、10〜15歳が42%(14%減)、16〜19歳が27%(20%減)、20代が33%(18%減)、30代が43%(20%減)。さらに今回の調査では、これまで強固な視聴習慣を維持していた60代が84%(10%減)、70歳以上が92%(3%減)と、高齢層においても減少が確認された。すべての世代で同時に割合が減少したのは、現在の調査方法が導入された1995年以降で初の事態だという。
元NHKのメディア研究者である村上圭子氏は、「減少の波が70代にまで達したのはショック」と述べる。ただし村上氏は、テレビを全く見ない人が急増したわけではなく、70代の平均視聴時間自体はむしろ30分伸びているという側面だと指摘。これは受像機の前に座って見るという「リアルタイム離れ」であり、録画やネット配信を含む広義のテレビコンテンツへの接触とは分けて考える必要性を訴えた。
ネットメディア研究家の城戸譲氏も、この変化を「必然の流れ」とする。城戸氏は、スマートフォンが普及し、見逃し配信サービス(TVerなど)が定着したことを背景に挙げ、生活習慣とテレビの編成の間に生じているギャップを次のように指摘した。
「一家に1台テレビを囲んでいた時代から、1人1台スマートフォンを持つ時代へと変わった。これまではテレビ局がいつ何を放送するかという『編成権』を独占していたが、現在は視聴者一人ひとりが自身の生活に合わせてコンテンツを選ぶ『編成権』を持つようになっている。テレビ局が1日単位でパッケージングした固定的な番組プログラム自体が、現代人の生活習慣に合わなくなってきたのではないか」。
リアルタイム視聴の縛りが制約となる中で、地上波テレビの役割そのものが「最後まで番組をリアルタイムで視聴する場」から、新たな役割へと移行しつつある。城戸氏は、現在の地上波テレビが持つ機能を「動画配信サービスや各種サブスクリプションへの『入り口』、あるいはお試し視聴や宣伝の場」として再定義している。
地上波のバラエティ番組等での出演者の発言がネットニュースやSNS上で拡散され、それに興味を抱いたユーザーがTVerなどの見逃し配信を視聴するという流れが定着しているという。
「地上波での放送は、コンテンツを広く認知させるための最初のきっかけに過ぎない。今後は最初からネット上でオンデマンド視聴されることを大前提とした、デジタルファーストのコンテンツ作りに本格的に舵を切っていくことが致し方ない選択になる」と持論を展開した。
■テレビを見ないことで共通の認識・記憶がなくなる?

番組では、リアルタイムでの同時視聴が減少することによって引き起こされる、社会的な文化の変化についても議論が交わされた。
パックンは、誰もが同時に同じ番組を視聴するスタイルが崩れることへの懸念を表明した。「ネット配信の利便性は重要だが、一斉配信されるテレビだからこそ可能だった国民の共有文化や共通する価値観が薄れていくことが心配だ。それぞれが見たいものだけをバラバラに消費するようになれば、社会全体で共有できる話題がなくなってしまう。翌日職場などで『昨日のあの番組見た?』と言い合えるような体験こそが、国民が一丸となり一体感を持つための極めて大事なツールだった」と語り、テレビが果たしてきた社会的統合の価値を強調した。
衆議院議員・門ひろ子氏も、この「世代間の共通記憶」という概念が喪失されつつある現状に同調した。「世代を超えた共通の記憶があることで、ある種の世代間の一体感が生まれ、それが日本社会の安定に大きく貢献していた。現在の30代付近の世代まではそうした共通記憶があるものの、20代以下の若い世代にはそれがほとんど見られない」と指摘。その上で、「共通の記憶を持たない人々が同世代として社会を構成していく時代において、かつてテレビが担っていたような社会統合を今後どのようなサービスが代替していくのかは、政治の視点からも大きな課題だ」と危機感をにじませた。
これに対し、2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は、現代の若者における共通文化のあり方がテレビから完全に別の場所へとシフトしている現実を提示した。「今の若い世代の文化的な共通点は、もはやテレビではなく『アニメ』。人気ドラマは人によって見る見ないが分かれるが、話題のアニメに関しては、非常に多くの若い世代の話題になっており、さらには世代の壁を超えて幅広く見られている。社会的な共通記憶を構築する機能そのものが、すでにテレビという装置ではない、ネットや別のエンターテインメントの領域で作られているのが実態だ」と反論し、テレビによる共通記憶の再生に固執する見方に疑問を呈した。
■アニメが好例 どこまで若者&海外向けに切り替えられるか
さらに議論は、現在のテレビ局が抱えるコンテンツ制作における構造的な問題点と、将来に向けた生存戦略の課題へと及んだ。ひろゆき氏は、テレビ局が目先のビジネスに囚われるあまり、自ら未来の可能性を狭めている現状を次のように指摘した。
「リアルタイムでテレビを熱心に視聴している層の大部分が高齢者であるため、画面に登場するタレントも自然と50代以上の高齢層ばかりになっている。かつての昭和の時代には、20代や30代の若手芸人たちが最前線で新しい文化を作っていたが、今のテレビは60代や70代の大御所タレントが中心に居座り、若い世代がテレビを見るような構造になっていない。テレビ局側もその現状を本気で変えようとする動きが見られない。高齢者はリアルタイムで視聴してくれるし、金も払うから高齢者向けのものをひたすら作り続ける方が短期的にはビジネスとして上手くいってしまう。結果として、自分たちで自分たちの首を絞めている」。
この指摘に対して村上氏は、テレビ局側も過渡期としての模索を始めていると説明。現在のテレビドラマがTVer等を通じて多くの若い世代にネット上で視聴されているとし、「テレビコンテンツの作り方は、すでに地上波放送をファーストとするのではなく、ネットファーストの切り替えが進みつつある。若い人向けのコンテンツをネット向けに作り、それを放送でも流すという、バランスを切り替えながらの対応が始まっている」と述べた。
また、今後のテレビ局の持続可能性を高めるための決定的な要素として「グローバル市場への展開」という論点が浮上した。ひろゆき氏は、日本のテレビ業界が持つ「国内市場への過度な依存と閉鎖性」を指摘する。
「日本の『アニメ』が海外でもうまくいっているのに対し、テレビメディアが主導するプラットフォーム(TVerなど)は、海外からのアクセスを遮断し、閉じた仕組みを続けている。これは、まだ国内の売り上げや高齢者向けのビジネスだけで何とか回ってしまっているために、海外で戦おうという危機感が業界に生まれていないということ。仕組みを世界に向けて開放しなければ、コンテンツとしての未来はない」。
これを受け村上氏も、国内の制作予算が減少傾向にある時代背景を踏まえ、「今後の戦略として、最初から国内市場に閉じず、海外展開することを前提としてドラマを作る体制に移行していくことが重要になる。それを怠り、国内だけでパイを奪い合おうとすれば、放送局はどんどん予算削減になってチープなコンテンツを作ってしまい悪循環に陥る。ビジネスモデルを変えていく最中だ」との見解を示した。
(『ABEMA Prime』より)
