自動運転の「ティアフォー」が年内上場へ 10億円出資するトヨタには安すぎるお買い物(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
【経済ニュースの核心】
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トヨタ自動車が9日、自動運転技術の導入に向け国内の有力新興企業と資本・業務提携した。
自動運転システムの開発や導入を手がけるティアフォー(東京・品川)に傘下のトヨタ・インベンション・パートナーズが出資した。出資比率は1%で、株式の取得金額は10億円規模とみられる。
また、ティアフォーは同時に、東京証券取引所グロース市場に上場申請したと発表した。東証による審査を経て2026年内にも上場する見通しだ。調達する資金をソフトウエア開発や人材採用、海外展開などに充てるという。
ティアフォーに対するトヨタ自動車の出資は持ち分1%で10億円。上場すればユニコーン(時価総額が10億ドル以上のスタートアップ企業)並みになることは間違いない。
「トヨタのティアフォーへの出資はしたたかさを感じます。自動運転でラストワンマイル車両への搭載まで視野に入れているのなら、安すぎる買い物ですね」(メガバンク幹部)と指摘される。
そのティアフォーを創業した加藤真平社長(東京大学特任准教授)はユニークな経営者として知る人ぞ知る存在だ。
「本は一冊も読んだことがない。生まれてからゼロです」と飄々と語る加藤氏。「論文や教科書は読みますが、小説やノンフィクションは読んだことがありません。本は頭が疲れるというイメージがあるんですね」(加藤氏)というから驚かされる。
加藤氏が中心となって開発し、広く世界に無償で公開されたオープンソースの自動運転OS(基本ソフト)「Autoware(オートウエア)」は、多数の自動運転車両に導入されており、導入企業ベースでは世界で断トツのシェアを誇っている。
17年12月に遠隔制御型自動運転システムの公道実験を国内で初めて実施し、自動運転のレベル4と呼ばれる高度運転自動化(無人運転)に成功した。同時に、完全自動運転の小型電気自動車(EV)の開発など自動運転技術の開発・実証実験を進めている。
一方、「Autoware」の世界展開を見据えて、18年12月に同ソフトの業界標準化を推進する国際的な非営利団体「The Autoware Foundation(AWF)」を設立した。AWFのメンバーには、ティアフォーをはじめ米Apex.AIや英Linaro、トヨタ自動車の開発部門であるTRI-AD、英Arm、米Velodyne LiDAR、韓国LG、米インテルなどそうそうたる企業が参画している。
「競合相手となる米グーグル系のウェイモや中国の百度(バイドゥ)と伍するためには、誰でも開発に携われるよう無償で公開することが戦略的に優れた道であると考えた。いわばゼロ円でOSを提供することで無限のユーザーを獲得することが可能となる」(加藤氏)という。
AWFを非営利団体とすることで開発者は世界に広がり、Autowareが自動運転OSのグローバルスタンダードとなる近道というわけだ。
こうした先駆的な取り組みは内外の有力投資家をも惹きつける。20年8月にはSOMPOホールディングスが第三者割当増資を引き受け、損害保険ジャパンが保有していた株式を買い取ったことで筆頭株主となっている。
創業当時、加藤氏は、「上場後の成長を見据えれば兆円規模の時価総額も夢ではないと考えています」と、こともなげに語っていた。夢への第一歩が始まる。
(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
