半導体製造の世界に、ひとつの会社が静かに存在感を増している。Applied Materialsだ。
 
デポジション、エッチング、イオン注入、検査、測定――半導体の前工程で必要とされるほぼ全工程の装置を揃え、CPU・GPU・メモリーを問わず、あらゆる半導体の恩恵を受けられる製品群を持つ。実業家のマイキー佐野氏はこの会社を「デパートみたいな存在」と表現した。
 
ASMLが回路を焼きつける唯一の装置を持つとすれば、Applied Materialsはその周囲を囲む画用紙・絵の具・机のすべてを提供するような会社だ。戦っている土俵が根本的に異なる。
 
特筆すべきはその提案スタイルだ。装置を単品で売るのではなく、工場全体の工程をシームレスに統合し、歩留まり向上や製品化までの時間短縮を含めたソリューションを一括提案する。材料そのものを原子レベルで制御する技術――「マテリアルエンジニアリング」こそがこの会社の核心だ。
 
製造プロセスが複雑になるほど、この統合提案の価値は増していく。次世代メモリー市場においても、微細な穴に金属を隙間なく埋め込む工程は重要な収益ポイントとなっており、この領域ではLam Researchと火花を散らす競争が続いている。
 
さらに興味深いのが、各社との関係性だ。韓国の大手メモリーメーカーとはシリコンバレーの研究開発施設で次世代品をゼロから共同設計しており、設計から製造まで自社で担うIDMメーカーとは最新装置のフルセット提供を進め、米国政府の補助を受けて国内回帰を図るメーカーへは材料開発での協力を打診している。佐野氏は「全員にいい顔する」と評しながらも、それが業績に直結している現実を淡々と語った。
 
業界を驚かせた技術が登場したことで工程全体の大幅な簡略化が現実になりつつある。先端プロセスが微細化を極めるほど、素材そのものをコントロールできる技術の価値は高まる一方だ。

チャンネル情報

現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営