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 野球の見方が、また一つ変わった。日本野球機構(NPB)公認の野球速報アプリNPB+(プラス)」が今季から打球や投球のトラッキングデータを全試合で公開。2月26日に正式サービスが開始されると、3月末には100万ダウンロードを突破した。これまで日本では公開が一部に制限されていた打球速度や投球の回転数など、大リーグではおなじみの数字が即座に共有され、日米間の比較もよりリアルに近づいた。

 トラッキング全盛の現代において、ファン待望の公開だった。一部の球団や中継など、限られた範囲内で提供されていたデータが、NPB+の登場でスマホ一つで瞬時に把握できるようになった。

 NPB+が提供するデータは、12球団の本拠地球場に設置された計測システム「ホークアイ」で測定される。同じシステムからはじき出される数字は、これまで目視に頼った本塁打の飛距離や、投球の伸びといったものまで可視化でき、数字の比較には公平性も、信頼性も増した。

 NPBエンタープライズのデジタル事業部・和田直人課長は「ファンの方はより真実を求めているなと感じました。特に若年層の方がポジティブに捉えている」と話す。大リーグではさらに広範囲のデータを数年前にさかのぼり無料検索できるサイト「Baseball Savant」が提供されている。日本でも同様のサービスはシステム上は可能だというが「いきなり全てのデータを公開しても、“これは何?”となってしまう。まず分かりやすいデータから公開して。今後もユーザーの声も基にアップデートさせていきたい」と同課長は続けた。

 使用球など細かい違いは残るが、同じ計測システムを使うことで日米間の数字の比較も意味を増す。本塁打した打球では、今季最速の打球速度は阪神・佐藤輝が5月2日の巨人戦で放った187・2キロ。これは今季大リーグトップのパイレーツ・クルーズの188・1キロと遜色なく、今季大リーグ3位に相当する。今季最長本塁打の4月4日ヤクルト戦での中日・細川の1号2ラン141・7メートルも、今季同3位の大きさだ。

 投球の平均球速では日米間の差がまだ大きいが、打者の手元で伸びるホップ成分を生む速球の平均回転数では、ソフトバンクからDeNAにトレード移籍した尾形が2616と、大リーグでもエリートクラスの2600台の数字を残している。

 公開への一つのきっかけは23年のWBC。「Baseball Savant」上で侍ジャパン選手の詳細な数値が提供され、ファンから大きな反響があった。「当時X(旧ツイッター)でもデータ公開を展開したら反応が良かった。今起きている変化は“データの民主化”と我々は考えています」と同社デジタル事業部の九鬼祥公主任。ダウンロードは無料。誰でも手軽にリサーチできるトラッキングデータの数々は、野球の楽しみ方をより深化させてくれる。(後藤 茂樹) 

 ≪「49度」ヤクルト・サンタナ、レアな一打≫データの楽しみ方はさまざまだ。今季本塁打になった打球で、最も高弾道だったのはヤクルト・サンタナの49度。今年4月27日にホワイトソックス・村上が48度のムーンショットを放ち話題を呼んだが、大リーグで計測が始まった15年以降、49度以上の本塁打は全体でわずか9本しか出ていない。それほどレアな一打だった。他にもスイングの平均速度、ボールゾーンスイング率、走塁時の瞬間最高速度、一塁到達の最速タイム、守備時の平均送球速度なども表示される。