実業家のマイキー佐野氏が、日本経済の「黒字のなかの円安」という構造的矛盾に迫る動画を公開した。2025年度の経常収支は24.5兆円の黒字を記録し、3年連続で過去最大を更新している。しかし佐野氏はその黒字の中身に鋭く切り込んでいく。表面上の数字と私たちの生活実感がかみ合わない理由が、そこに隠れているという。
 
黒字を牽引しているのは42.2兆円に上る第一次所得収支だ。海外子会社や海外資産からの収益がその大部分を占めるが、このお金は「外貨のまま現地で保有される」ため、日本に戻って円に交換されることはない。統計上の経常収支の黒字と、実際に為替市場で円買いにつながるキャッシュフローベースの黒字との間には約8兆円もの乖離が生じており、「稼いでいるが、円にならない」という構造が景気実感との溝を生み出している。黒字が即「円高要因」にはならないという点を、佐野氏は学術的な根拠も交えながら丁寧に論じていく。
 
同氏はさらに、今後の円安加速シナリオを具体的に示す。政府はこれまで国家備蓄の放出によって原油輸入コストの上昇を一時的に抑えてきたが、代替調達の目処が立ったとして追加放出を見送る方針となった。今後は国際市場からの購入が増加する見通しであり、円の放出が増えれば再び円安が進む可能性が高い。貿易収支が再び赤字に転じるシナリオも排除できないという。
 
足元では別の構造問題も浮かび上がる。研究開発やデジタル関連業務を海外に委託する動きが拡大しており、サービス収支の赤字は過去5年で最大水準に膨らんでいる。これをカバーしてきたインバウンド需要も、航空運賃の高騰や国際情勢の影響で頭打ちになりつつある。統計上の黒字を支えてきた複数の柱が、同時に揺らいでいる状況だ。
 
加えて、欧米の中央銀行がインフレ再燃を受けて利上げに傾けば、日本との金利差は再び拡大する。そうなれば円安がさらに加速するシナリオが現実味を帯びてくる。佐野氏は動画のなかで「ランダムウォーク理論」にも言及しながら、為替予測の本質的な難しさを学術的根拠から丁寧に整理している。経常収支の好数字という表層の下に、幾重もの構造的課題が積み重なっているのだ。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営