森英介衆院議長

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 安定的な皇位継承と皇族数の確保のための皇室典範改正をめぐり、森英介衆院議長ら衆参両院の正副議長は「立法府としての総意」の取りまとめ案を今月8日の「全体会議」で各会派に提示する見込みだ。正副議長の協議が長引いたのは、福山哲郎参院副議長の古巣である参院の野党第一党である「立憲」の“抵抗”が続いたためだが、彼らがこだわったのは、女性皇族が結婚して皇室に残る場合の「配偶者と子の身分」を皇族とすることだ。

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 しかし、結論を出していない衆院の「中道」を除き、自民、維新、国民、公明など主な会派は「配偶者と子には皇族の身分を付与しない」ことで以前から一致している。将来的に皇統が女系に移ることを避けるためだ。森衆院議長は「最大公約数」でまとめることを明言していたが、予想される衆参正副議長のとりまとめ案はその判断を避けており、妥協に妥協を重ねた印象が拭えない。

森英介衆院議長

 そうした中、森衆院議長が「日蓮主義」を掲げる宗教団体幹部らと面談。「配偶者と子を皇族とすべきだ」とする「意見具申」を受け取っていたことが分かった。森衆院議長は日蓮宗檀信徒の議員連盟「法華一乗会」の会長を務めており、「総意のとりまとめ」に影響がなかったかどうか、一部で懸念の声も出ている。

日蓮宗の議員連盟会長を務める森衆院議長と「国柱会」の関係

 保守派の研究機関である「日本国体学会」の機関誌『国体文化』6月号によると、同誌の発行人である河本學嗣郎氏(日本国体学会理事長)と編集人の金子宗徳氏(里見日本文化学研究所所長)は、後述する国柱会賽主(さいしゅ)の田中壮谷氏とともに4月20日、森衆院議長と議員会館事務所で面談し、「『立法府の総意』を取りまとめるにあたっての意見具申」を提出した。

 編集長の金子氏の同誌での説明によると、面談した3人は「日蓮聖人の教えを基盤とし、『日蓮主義』を現代に再興・展開することを目指す研究団体《真世会文化研究会》の世話人」だとしている。森衆院議長が国柱会賽主の田中氏と懇意であることから昨年12月19日も面会したという。国柱会は元日蓮宗僧侶の田中智学氏によって創設された法華宗系在家の仏教団体で、戦前の「國柱會」の思想は帝国陸軍の石原莞爾中将の「東亜連盟」構想にも影響を与えたと言われる。

「陛下を守護奉る御存在」である夫も皇族として遇すべしという理屈

『国体文化』に掲載された森衆院議長宛の「意見具申」にはこう書かれている。「そもそも生まれながらの皇族女子は神聖尊貴なる天皇の御分身であり、婚姻後も皇族として遇し奉ることに何ら支障はない。また、その子が女性皇族の御分身であることは言うまでもなく、配偶者も皇族女子を支え、ひいては無私なる天皇陛下を守護、荘厳し奉る御存在である以上、両者も同じく皇族として遇することは当然だ」。

 さらに続けて「配偶者と子に一般国民として世俗の生活を認めるということは、聖俗の区別を忽(ゆるが)せにするものであり、君民一体の国体を支える名分大義、神聖尊貴なる皇族の本質を破壊する所業と言わねばならない」とある。

独得の「道統論」が立憲や野田元首相らと一致する不思議

 また、こうも主張している。「これまで天皇の地位は男系によって継承され、天皇の体現せられる道義性すなわち道統の継承に昇華されてきた。これこそ皇統最大の価値だが、過去に女性天皇が即位せられたことからして皇族女子もまた道統を継承し得るのであり、女性天皇の子に道統が引き継がれないとする明白な理由がない以上、配偶者や子も皇族として処遇することに全く問題はなく、女性宮家の創設を暴論と否定する謂れはない」。

 そして「男系・女系の対立を止揚し、両者を発展的に体系化することが極めて重要」と結論づけている。

 なお、皇族養子案については「現時点で神聖尊貴ならざる者を人為的に神聖尊貴なる存在とすることであるため避けるべきだが、(中略)次善の策として考慮すべきと思われる」としている。

 こうした独特の「道統論」は、皇統の男系維持の考え方とは異なる結論を導いており、結果的に参院の立憲や中道の元代表である野田佳彦氏の考え方とも一致する。

椎谷哲夫(しいたに・てつお)
ジャーナリスト。宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。同大学院社会科学研究科修士課程修了。日本記者クラブ会員。硫黄島協会会員。東京新聞(中日新聞東京本社)編集局社会部で警視庁、宮内庁など担当し、編集委員を最後に退職。著書に『敬宮愛子さまご誕生』(明成社)、『皇室入門』(幻冬舎新書)など。

デイリー新潮編集部