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日本企業の価値はなぜ上がらないのか。技術力でも人材でもなく、その根本に「会計基準」の問題があると、実業家のマイキー佐野氏は断言する。
 
資本市場では、同じ利益でも産業の期待値によって評価の倍率が大きく異なる。AIや宇宙、バイオといった成長産業は高倍率で評価される一方、成熟産業は低く抑えられやすい。この倍率の差を活用して企業価値を大きく見せる発想があり、佐野氏はこれをマルチプルアービトラージという概念で解き明かす。しかし日本では、そもそもその土台となる会計制度が時代の要請に追いついていないと氏は語る。
 
特に問題として挙げるのが、M&Aを阻む「のれん」の定期償却だ。日本の会計基準では、買収額が評価額を上回った差額を20年以内に規則的に償却する義務があり、これが買収後の営業利益を押し下げる構造になっている。米国基準やIFRSでは価値が著しく低下した場合のみ処理すればよく、この差がスタートアップの出口戦略や企業の買収判断に大きく影響しているという。日本のスタートアップ出口がIPOに偏りがちな背景にも、この制度的な違いが関係していると佐野氏は見る。
 
さらに佐野氏は、日本の会計基準が有形固定資産を中心に設計されている点にも問題意識を示す。現代の企業価値の源泉はソフトウェアやデータ、人的資本といった無形資産に移行しているが、日本基準では研究開発費や採用コストが費用として計上されるため、先行投資を積み重ねるほど会計上の赤字が膨らんでいく。成長投資をしながら黒字を示しやすいIFRSとは、構造的に異なる出発点に立っているのだ。
 
一方でIFRS移行は、会計方針の変更にとどまらず経営管理体制の全面的な見直しを伴う。減損テストの義務化や高度なファイナンス実務が求められ、日本企業には心理的・制度的な障壁が厳然と存在するとも佐野氏は指摘している。
 
良い技術や優秀な人材があっても、財務インフラが古いままでは海外投資家の目線には届かない。日本の企業価値を本質的に底上げするには、制度そのものを内側から更新する必要があるというのが、佐野氏の揺るぎない見立てだ。産業構造の変化に会計基準が追いついていない、その認識がまず共有されなければならない。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営