同じ商品名だが、それぞれ別の会社が販売している(弁護士JPニュース編集部)

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商標登録されている名前を他社は一切使えない」という誤解がある。

しかし、商標権は、言葉やロゴを丸ごと独占する権利ではない。どの名前を、どの商品やサービスに使うのかを含めて権利の範囲が決まる。このため、同じ名前でも、別会社が使用できることがあり、両社に商標登録が成立し得る。典型例として、日産自動車の「NOTE」とnote株式会社の「note」(ウェブ記事サービス)がある。

このように、商品・サービスのジャンルが違うと同じような名前でも商標権の範囲外になる。他社の登録商標と同一名称を使用しても、ジャンルが違えば原則として商標権の侵害とはならず、自由に使用できるのである。(弁理士・岡村太一)

「ジャンルが違う」の判断基準は?

ジャンルが違う場合、消費者(需要者)は同じ名称の商品・サービスが別の事業者によるものだと認識する。「note」の例でいうと、自動車とウェブ記事サービスでは、通常、同じ事業者が提供するものとは受け取られない。いいかえると、「note」のウェブ記事が良かったから、自動車を買おうとはならないし、その逆もない。

では、すでに商標登録されている商品名やサービス名がある場合に、「どこまでジャンルが違えば使用できるか」という基準はあるのか、疑問が湧くかもしれない。基準になるのは、商品・サービスの提供元が同じであると消費者に認識されるか否かである。

経営母体の異なる商品・サービスが、あたかも同じ事業者によって提供されていると消費者が誤認すること、これを「出所の混同」という。商標法の目的の一つは「出所の混同」を防ぐことであるため、上記のような基準になる。だが、この基準は曖昧で、実務上不便である。

そこで、実務上利用されているのが「類似群コード」である。

「類似群」という原則

類似群コード(略して「類似群」)とは、各商品・サービスに割り当てられる5桁の記号(例:30A01)のことである。これまで本記事では「商品・サービスのジャンル」と表現してきたが、法的には「商品又は役務」が「同一又は類似」と表現される。特許庁は、類似群が同一の商品を「類似」と扱い、類似群が異なる商品を「非類似」と扱っている。

ここで、類似群と誤解されがちな「区分」という概念があるため、違いを説明しておく。世の中のあらゆる商品・サービスは、特許庁によって第1類から第45類までの区分に分類されている。先ほどの「NOTE/note」の例でも自動車は第12類、ウェブ記事サービスは第41類である。そうすると、「なるほど区分で見るのですね」となりそうである。

しかし、区分は大まかな分類にすぎない。区分が同じでもジャンル(類似群)が異なることがある。たとえば、「スーパーカップ」という商品名があるが、アイスは明治、カップ麺はエースコックによって商標登録されている。アイスクリームは第30類、麺類も第30類である。区分は同じだが、非類似なのだ。

そこで、スーパーカップの例で類似群を見ると、アイスクリームは30A01、麺類は32F03に割り振られている。どちらも第30類という「区分」に属しながら、「類似群」が異なるため非類似と扱われるのだ。

前出の「NOTE/note」の例も区分が異なるからではなく、類似群が異なる(自動車は12A05、ウェブ記事サービスは41C02)から併存して登録されている。

逆に、区分が違っても類似群が同じだから商品類似となることもある。たとえば、ビールは第32類、ワインは第33類に属するが、類似群はいずれも同じ28A02である。このため、ビールとワインは類似とされている。

ロゴや名称が“超有名”な場合は例外あり

これまでの説明には例外もあり、身近な例で考えるほど類似群の細かさは腑に落ちない場面もある。

たとえば、「meiji」や「グリコ」のロゴがアイスや菓子以外の分野で使われていても、明治や江崎グリコの商品だと思う消費者も多いだろう。

このように、ジャンル(商品・役務の類似の範囲)を超えて「出所の混同」が生じ得ることを防ぐため、商標法には「防護標章登録」という制度が存在する。名称やロゴが全国的に有名で「出所の混同のおそれ」がある場合は、ジャンルが違えども商標権の侵害とみなされ得るのである。

「出所の混同のおそれ」があるか否かは、登録商標の周知度や、造語かどうか、多角経営の可能性等が考慮される。周知度が高く、独創性が高く、多角経営していれば混同のおそれがあるとして、防護標章登録が認められやすくなる。

また、防護標章登録されていない場合にも、不正競争防止法によって、同様に商品・役務の類似の範囲を超えて規制され得る。

「三菱グループ/三菱鉛筆」は歴史的背景から併存

周知度が高く、独創性が高く、多角経営している代表例が「三菱グループ」である。三菱電機、三菱UFJ銀行、三菱重工、三菱マテリアル等のように、幅広いジャンルに展開している。

これに対して、「三菱」の名を持つにもかかわらず、三菱グループと何ら関係のない企業に「三菱鉛筆」がある。三菱鉛筆が三菱グループだと誤認する例もあるため、「出所の混同のおそれ」が認められそうなものだが、同社は、その社名や「MITSUBISHI」「スリーダイヤ」のロゴを使用し続けている。なぜだろうか。

実は、三菱鉛筆は三菱グループ(三菱財閥)よりも先に「三菱マーク(スリーダイヤ)」や「三菱」の名称を商標登録していたのである。こういった歴史的背景が、現在も社名やロゴを使用できている一因になっている。

このため、「三菱鉛筆が大丈夫なら、『三菱音楽教室』を使って大丈夫」などと誤解してはならない。むしろ、三菱鉛筆が歴史的に特殊だからこそ、いま「三菱」を使うことには相応のリスクがあるということだ。

社名、商品名、サービス名などのネーミングについては、さまざまなルールが入り組んでおり、中には一般の感覚には沿わないルールもある。このため、慎重な情報収集や専門家への相談が、安全に事業を進める鍵になる。

■岡村太一
弁理士事務所ブランデザイン代表・弁理士。商標登録・意匠登録を中心に、ロゴ・ネーミング・デザインを守る業務を数多く手がける。YouTube・Podcast番組「ゆるカワ♥商標ラジオ」でも発信を続け、商標をめぐる話題をわかりやすく解説している。書籍『ロゴとネーミングの法律―事業を守る商標のしくみ』著者。

▼同番組および同著書
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