「美容外科医が何千万円ももらって、病院勤務の外科医が彼らの何分の一かしかもらえないのはおかしい」 日本を待ち受ける「医療崩壊」の背景に「日本医師会」の体質
「日本医師会の会長は誰がやってもそう変わらない」
医師不足や病院の廃業・経営悪化など、医療崩壊の危機が眼前に迫る中、業界の代弁者たる「日本医師会」に当事者意識はあるのか……。日本医師会は「過剰医療」「無駄な医療」という根深い問題を長年放置してきたが、背景には医師会の存在も含めた医療界の「構造」そのものに問題がある、という事実がある。では、どうすればいいのか。
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すでに深刻化している医師不足、眼前に迫る医療崩壊、そして、それらの背景に横たわる過剰医療。そうした問題に向き合うことなく、自分たちの「財布」に直結する診療報酬改定のみに血道を上げてきた日本医師会――。果たして、その状況は医師会の内部からはどう見えているのか。

「日本医師会は悪いイメージが定着していると思いますが、変えていくのはなかなか難しいかもしれません。正直に言えば、私は、日本医師会の会長は誰がやってもそう変わらないと思っています」
そう語るのは、京都府医師会理事や伏見医師会会長を務めた依田純三氏(80)だ。
「私が伏見医師会の会長を辞めたのは2011年。その前年、日本医師会の会長選があり、京都府医師会会長の森洋一先生が、茨城県医師会会長の原中勝征先生に僅差で負けたのです。森先生は論理的にまっとうな日本医師会の在り方を考えている先生なのに、なぜ負けたのだろうかと思いましたが、きっとそれが日本医師会の体質なのです。正論が通りません」(同)
「あまりにも開業医の権益擁護に寄り過ぎている」
日本医師会会員の半数は開業医で、開業医の9割は日本医師会に入っている。
「要するに日本医師会は開業医の権益擁護団体というわけです。国民医療より開業医の権益を重視する姿勢に対して、森先生は“これではいけない”と訴えて出馬しましたが、それでは当選できなかったのです」
依田氏はそう慨嘆する。
「当時は民主党政権で、原中先生は民主党に近かった。国民のための医療という根本理念より政権との近さのほうが、会長になるには重要だったのでしょう。なぜあんなに権力闘争ばかりしているのだろうと疑問に思います。あまりにも開業医の権益擁護に寄り過ぎており、違和感を覚えます」(同)
そもそも診療報酬改定に固執する姿勢それ自体が、医師に高い倫理観を求める「医は仁術」の理念からかけ離れている。
「医療機関としてある程度の収入は必要ですが、必要以上に儲けることが医療という分野で許されるのだろうかと思います。そんなに稼ぎたいのであれば、堂々と商売のできる業界に行けばいいのです。医者をやる以上、儲けるという考えは捨てるべきではないでしょうか。むしろ、医師になったらお金持ちにはなれない、と覚悟する必要があると思っています」(同)
とはいえ、医師の収入を一律に下げるべきだ、という考えではなく、
「外科で最先端の高度な手術ができる医師がわれわれとそう変わらない収入でいいとは思いません。私は、非常に高度な医療を提供できる医師は年収1億円をもらってもいいと考えています。ですが、現実では全く逆のことが起こっていて、こうした高度医療に携わる病院勤務の医師より開業医の方が収入が多くなりがちなのです」(同)
「美容クリニックの美容外科医が何千万円ももらう一方……」
現在、日本の高度医療は個人の使命感に頼っている状況である。
「美容クリニックの美容外科医が何千万円ももらう一方、高度な手術をする病院勤務の外科医が彼らの何分の一かしかもらえないのはおかしな話です。日本医師会は勤務医の待遇改善には関心が希薄です。しかし、勤務医の方々の献身に頼っているだけでは、もう日本の高度医療は成り立たないのです」(依田氏)
そのほころびはすでに表面化してきており、
「今は本当に外科医の成り手がいません。京都のある大規模病院でも、もう長い間脳外科医が不足したままで、本来研修医や若手医師がやる当直を、ずっと部長がやっています」(同)
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「週刊新潮」2026年6月4日号 掲載
