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移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑し、誰もが余裕をなくして殺伐とした空気が漂いがちです。そんな密閉された空間だからこそ、周囲へのちょっとした配慮が欠けるだけで、思わぬトラブルの火種になってしまいます。
日本民営鉄道協会の最新調査「2025年度 迷惑行為ランキング」では、5位に「スマートフォン等の使い方 21.6%」、8位に「乗降時のマナー(割り込み等)20.0%」がランクイン。画面の覗き見や強引な席取りなど、法に触れるわけではないけれど「モヤモヤする」マナーのグレーゾーンに、不快感を抱く人は少なくありません。

限られたスペースを共有しなければならない公共交通機関において、なぜ「自分さえ良ければいい」という振る舞いが絶えないのでしょうか。

今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、スマートフォンの画面を覗き込んできた女性が放った「逆ギレ」の一言や、始発電車で目撃した驚愕の「席取り」の実態をお届けします。周囲が沈黙する中で訪れた、予想外の「決着」の瞬間とは。記事後半では、最新の迷惑行為ランキングの結果も紹介します。

◆【ケース1】スマホを覗かれたのに…

 佐久間彩さん(仮名・20代)は、学校帰りに電車に乗っていた。地方の路線で混雑はそれほどでもなく、座席に座ってスマートフォンを見ていたという。

「友人とのメッセージを見たり、音楽を選んだり。いつも通りの帰宅時間でした」

 しかし、ふと視線を感じて顔を上げると、立っていた60代くらいの女性が横目でスマートフォンの画面を覗き込んでいた。

「気のせいかもしれないと思いましたが、画面をスクロールするたびに女性の視線が動くのがわかりました」

 不快に感じた佐久間さんは、スマートフォンを少し傾けて“見えにくい角度”にした。すると、その女性が突然……。

「私、何もしてませんよ!」

 その言葉に、周囲の乗客の視線が一斉に集まった。狭い車内で注目を浴び、佐久間さんは驚きと困惑で言葉を失ったそうだ。

◆誤解のまま終わった数分間

 女性はさらに、「あなた、私が見てると思ってスマホ傾けたでしょ」と言い放ったのだ。佐久間さんは、「そんなつもりはありません……」とだけ答えた。

「本当は、『見ていましたよね』と言いたかったのですが、反論すれば空気がさらに悪くなる気がして、何も言えませんでした」

 女性はその後、何事もなかったかのように立っていた。佐久間さんにとって、目的の駅までの時間が異様に長く感じられたそうだ。

 そして、電車を降りてようやく緊張が解けると、じわじわと怒りが湧いてきたという。

「自分は何もしていないのに、まるで“悪者”扱いされた理不尽さや周囲の視線の重さは、今でも忘れられません」

◆【ケース2】始発電車で見た“席取り”

 井上真琴さん(仮名・30代)は、平日の朝、仕事に向かうために始発電車を待っていた。始発とはいえ利用者は多く、並ぶ位置によっては座れないこともある路線だ。

 その日、井上さんは列へ早めに並び、“じゅうぶんに座れるはずの順番”を確保していたという。そして、電車が到着し、乗客が次々に乗り込んでいった。

「私は席を見つけて座ろうとしたんです。その瞬間でした。すでに座っていた年配の女性が、私の目の前の座席に荷物を置いたんです」

 一時的に置いただけかと思い少し待っていたのだが、やがて別の年配女性がゆっくりと乗り込んできたそうだ。

「そしたら、荷物を置いていた女性が笑顔で『おはよう』って声をかけて、荷物をどかしました。その席に、後から来た女性が“当たり前のように”座ったんです」

 目の前で座席を確保され、井上さんは呆然。他の席はすでに埋まっていたため、ドアの横に立つしかなかったという。