井上尚弥VS中谷潤人を赤間二郎、加藤勝信、三原じゅん子、田名部匡代”政界ボクシング通”が大予測!
克服したウイークポイント
5月2日、東京ドームで開催される世界Sバンタム級統一戦は「世紀の一戦」として世界中から注目を集めている。
もはや説明不要の日本ボクシング界の至宝・井上尚弥(32)がメイン。その井上に挑戦する中谷潤人(28)も昨年6月にバンタム級統一王者に輝き、全階級を通じた最強ランキングの「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」7位に名を連ねるなど計り知れない強さを持つ。
ともに32戦無敗。最強の王者に最強のチャレンジャーが挑む日本ボクシング史上最高の一戦に心は躍るが、勝敗予想は難しい。
そこで日々、永田町で権力闘争に明け暮れている国会議員たちに頂上決戦の行方を占ってもらった。
まずはプロでもアマチュアでもリングで戦った赤間二郎国家公安委員長(58)。勝敗予想を尋ねると両腕を組んでしばし沈黙した後、こう言葉を絞り出した。
「難しいよ。考えれば考えるほどどちらが勝つかわからない」
赤間氏は立教大学でボクシングを始め、2年生から公式戦に出場。主にライト級で20試合を闘った。4年時に副主将を務めてリーグ優勝。立教大学ボクシング部を3部から2部に昇格させた立役者となった。
卒業後、英国留学を経て、神奈川県議会議員の父親の秘書として働きながら横田スポーツジムに通う。当時のプロテストの年齢制限ギリギリの30歳でプロライセンスを取得して1998年7月にプロデビュー。後に日本ウェルター級王座となる加藤壮次郎(48)に4ラウンド判定負けした後に引退。1999年、神奈川県議となった。
’05年、神奈川14区から出馬して初当選。国会議員となる。内閣府や総務副大臣に就任し、’25年10月、高市内閣で国家公安委員長として初入閣している。
“ボクサー大臣”に試合展開を尋ねると、椅子からすっくと立ち上がり、ファイティングポーズを取った。本誌記者をサウスポースタイルで構えさせ、中谷に見立てながら、井上の得意とするステップインからの上下左右のコンビネーションを披露した。
「ボクシングは“距離の競技”で、いかに自分の間合いで戦えるか。中谷選手は長身サウスポー。オーソドックスな井上選手は通常であればやりづらい。ただ、井上選手はキャリアの序盤は長身サウスポーを苦手としていたが、いまは苦戦していない。
中谷選手は長いリーチを活かし、右ジャブで牽制していくでしょう。井上選手はジャブを外し、ステップインし、左ボディを狙いたい。井上選手のステップインの速度は尋常ではないが、中谷選手も左アッパーで迎え撃つ技術がある。
序盤はどちらがジャブを先に当てるか。互いにパンチの距離、角度、強さ、タイミングを計り、高度な攻防が続き、息もつかせずなラウンドが続く。ともにテクニックも高く、スピードはあり、カウンターも得意。距離感も自在で、どう試合を組み立てていくか。私は両者に差はないと見ているので、試合当日のコンディションが良いほうが勝つ、と見ています」
カウンターで倒せなかった
プロボクシング議連会長で東京ドームで観戦予定だという加藤勝信元内閣官房長官(70)は「まさに世紀の対決で、いまから楽しみ」と微笑んだ。
「相手をコントロールする、試合展開を掌握する能力は井上選手にアドバンテージがあると見ています」
加藤氏が言うように、ボクサーにとって相手を分析し、コントロールする能力は重要だ。ゴングが鳴った後、相手のハンドスピード、パンチの伸び、射程距離、ステップのリズムや歩幅を観察。事前に見た映像と目の前の選手の動きの相違点などさまざまな項目を頭の中で処理。試合の主導権を握るべく戦略を立てる。
読み通りにパンチを打たせ、カウンターを狙う――井上の能力の高さにはそのような戦略知も含まれる。加藤氏はこう続けた。
「井上選手の前では、他団体の王者も世界ランカーも自分のペースで試合を展開することができない。対戦相手も動きを読み、間合いを崩そうとするのですが、ほとんどの試合で井上選手が試合全体の展開を作ってきた。井上選手のボクシングは王道で、どんな相手にも油断をしない。
一方の中谷選手は井上選手ほど相手をコントロールできていない。KOまでいくかどうかはわかりませんが、判定で井上選手の勝利と見ています」
ボクシング観戦歴30年で、井上や中谷の試合も「会場で観戦している」と豪語する三原じゅん子元こども政策担当相(61)。直近では’24年に東京ドームで行われた井上対ルイス・ネリ(31)の一戦を生観戦しているという。
「尚弥でしょう」
即答した真意を問うと「井上はSバンタム級で実績を残しているが、中谷はまだSバンタム級に適応していない」と分析した。
昨年12月、中谷はサウジアラビアでSバンタム級転級後の初戦に臨んだが苦戦。右目を大きく腫らして辛くも判定勝ちを拾った。
「中谷さんは離れた距離も近距離も得意とし、バンタム級時代までは無双状態でした。ですが、一階級上げたことで『階級の壁』に直面したのではないか。直近のサウジでの試合では、バンタム級時代なら倒せたはずのカウンターで相手は倒れなかった。Sバンタム級で12ラウンドをフルに戦えるスタミナがあるのかも疑問です。
一方、尚弥はSバンタム級に適応しており、ピークは“いま”でしょう。中谷さんはまだSバンタム級2戦目で不安材料が残る。慣れない階級でスタミナが切れたら……終盤、尚弥が倒すかもしれない」
会場で井上の世界戦を何度も生観戦してきた三原氏は王者をこう讃えた。
「他の選手とは打撃音が違う。お腹に響くような音がする。もちろんパンチ力だけでなく、スピードもテクニックも異次元。尚弥が負ける姿が想像できない」
勝利を分けるポイント
立憲民主党の田名部匡代幹事長(56)は「平成のカリスマ」と称された辰吉丈一郎(55)に魅せられ、平成初期からボクシングを観戦。選挙区の八戸市で興行があれば会場に足を運び、後楽園ホールにも出没しているという。
「井上選手は相手との距離や間合いをすぐに把握し、相手をコントロールする能力に長(た)けています。ただ、中谷選手はサウスポーで170儖幣紊凌板垢板垢ぅ蝓璽舛あり、すぐには間合いをつかめそうもない。
最後は勝利への執念、勝ちたいと強く願う気持ちが勝敗を分ける気がします。その意味でいえば、中谷選手は15歳で単身渡米し、スポーツ推薦で進学できたであろう高校、大学には進まずにロサンゼルスで拳を磨いてきた。正確無比な王者を唯一脅かせる存在が中谷選手かもしれない」
中谷は15歳で渡米すると、名伯楽のルディ・エルナンデスの門を叩いた。ルディは実戦重視で、サンドバッグをむやみに叩かせたりしない。はるか上の階級の選手と闘う、右手一本で闘う、コーナーに追い込まれた状態のまま闘う等、スパーリングはユニークかつハード。
通常のアッパーは拳を返して打つが、中谷は時に拳を縦にしたまま、ガードをすり抜けるようにして打つ。実戦に即した、型にはまらない野性味のあるボクシングが魅力の“逆輸入ボクサー”だ。
アマチュア時代から注目を浴び、大橋ジムに入門する際、「強い選手と戦わせてください」と異例の申し出を行った高校7冠のエリートボクサーである井上とは対照的である。異なる道を歩んで頂点に立った二人のボクサーが間もなく相まみえる。
三原氏と田名部氏は奇しくも同じ言葉を呟いた。
「やってほしい試合であり、やってほしくない試合でもある」
5月2日、32の白星を重ねてきたどちらかに初黒星がつく。
撮影・文:岩崎大輔
