記事のポイント
アルファ世代の購買力は2029年に5兆ドル規模へ、ビューティ業界が次の成長市場として注目している。
セフォラが初めてアルファ世代を明確にターゲットに据え、「シンシアリー・ユアーズ」を導入した。
インフルエンサー親子の企画とティーンの声を反映した製品開発で、幼稚すぎないクールな世界観を構築。


ミンテル(Mintel)の調査によれば、アルファ世代の購買力は2029年までに5兆5000億ドル(約825兆円)に達すると見込まれている。アルファ世代は概ね2010年から2024年に生まれた世代を指し、現在の最年長でも14〜15歳にあたる。そして、アルファ世代が美容に熱中していることは、すでに業界関係者のあいだで広く知られている。

デジタルネイティブとして育ったアルファ世代は、バブル(Bubble)やバイオマ(Byoma)といった若いスキンケアユーザー向けブランドに囲まれ、かつてミレニアル世代の定番だったドランク エレファント(Drunk Elephant)までも自分たちのものとして取り入れている。

さらに、アルファ世代を意識した新ブランドも続々と登場している。元アリュール(Allure)誌の西海岸編集者ケリー・アタートン氏によるライル(Rile)、俳優ジュリー・ボーウェンが共同設立した男子向けJBスクラブ(JB Skrub)、皮膚科医が共同設立したアーリー(Erly)などがその例だ。

15歳インフルエンサー親子が立ち上げた「シンシアリー・ユアーズ」



こうした流れのなかで新たに登場したのが、15歳のメガインフルエンサー、セイリッシュ氏と、その父親で同じくメガインフルエンサーのジョーダン・マター氏が立ち上げたブランド「シンシアリー・ユアーズ(Sincerely Yours)」である。

注目すべきは、シンシアリー・ユアーズが9月6日にセフォラ(Sephora)でデビューする点だ。これまでセフォラで展開されてきた多くの新興ブランドは、Z世代を主要ターゲットとしてきたが、シンシアリー・ユアーズはアルファ世代の購買力に直接アプローチする初の明確な試みといえる。

セイリッシュ氏は現在高校2年生で、10歳の頃に父親のYouTubeチャンネルに出演しはじめた。現在はYouTubeで290万人、インスタグラムで450万人のフォロワーを抱えており、父ジョーダン氏はYouTubeで約3200万人、インスタグラムで230万人のフォロワーを持つ。

4製品のラインナップと「クリーン」基準を満たした開発体制



ブランドは4つの製品からスタートする。カインドリー・クリーン・ハイドレーティング・クレンザー(Kindly Clean Hydrating Cleanser)(22ドル/約3300円)、ヒット・フレッシュ・スージング・セラム・ミスト(Hit Fresh Soothing Serum Mist)(24ドル/約3600円)、ソー・ソフト・ライトウェイト・モイスチャライザー(So Soft Lightweight Moisturizer)(26ドル/約3900円)、サニー・サイド・アップ・ミネラル・サンクリーン(Sunny Side Up Mineral Sunscreen)(28ドル/約4200円)だ。

これらの製品はセフォラの「クリーン」基準を満たしており、皮膚科医のマラ・ワインスタイン・ベレス医師、ロビン・シャフラン医師、化粧品化学者のロンチュアン・フアン博士らと共同開発された。さらに、30人以上のティーンで構成される諮問委員会の意見も反映されている。

処方にはブランド独自の「バリア・フレンドリー・フォーミュラ(Barrier Friendly Formula、BFF)」が採用されており、カプセル化されたタイムリリース型ヒアルロン酸、ナイアシンアミド、セラミドを組み合わせることで、肌のバリア機能をサポートする設計になっている。

CEOジュリア・ストラウス氏の参画と、若い世代の課題への着眼



ブランドのCEOを務めるのはジュリア・ストラウス氏だ。彼女はアスレジャーブランド、スウェティ・ベティー(Sweaty Betty)のCEOを務めた経験を持ち、さらにスキンケアブランド、トゥラ(Tula)の創業CEOでもあった人物である。

ストラウス氏はスキンケア業界に戻ることを強く望んでいた。2023年頃にマター親子と初めて出会った際を振り返り、「当時は3本に1本の記事が若い顧客についてだったように感じた。若い世代が美容に新しい関心を持ちはじめていると指摘されていたが、そのニーズを必ずしも適切な製品が満たしていなかった。親にとっても子どもにとっても多くの課題があった」と語っている。

アイデアにコミットする前に、ストラウス氏は友人の開業皮膚科医に相談し、若い患者の来院が確実に増えていることを確認した。

親子の体験から生まれた「子どもが実際に使いたい」スキンケア



ジョーダン氏もまた、サリッシュ氏がスキンケア製品を忘れて出かけたロードトリップでの経験を思い出す。途中で一緒に製品を買いに行った際、「彼女の肌によい製品は、彼女の目には特に楽しくもクールでもない、という話をした」と振り返る。

そのとき、「子どもたちが実際に使いたいと思える、そして肌によい製品を通じて使用のモチベーションが高まるようなプロダクトを作るのは面白いかもしれない」と考えるようになったという。

同時にジョーダン氏は「多くの場合、人はプラットフォームを得た途端に何かを売りはじめる」とも指摘する。

「我々は断固としてそれを望まなかった。適切な機会を待っていたのだ。そしてこの機会が訪れたとき、それは完璧な瞬間だった。なぜなら彼女自身が、敏感肌など多くの子どもたちが抱える肌悩みをすでに経験していたからだ」と語っている。

差別化のカギは「幼稚すぎず、洗練されてクールな世界観」



サリッシュ氏は、自身のブランドをバブルやバイオマといった既存ブランドとどう差別化するのか問われ、電子メールで次のように答えている。

「私の友人や私は新しいスキンケアを試すのが大好きだが、アンチエイジング製品や10段階のルーティンは必要ない。我々は、安全でテスト済みであることがわかる製品を必要としているが、同時に幼稚ではなく、洗練されていてクールに見えるものがよい」。

彼女はまた、ブランドの最終決定に関わったのは自分だけではないと強調する。諮問委員会に加え、ブランドは閉鎖的な双方向テキストプラットフォームを通じて、6万人規模のマターコミュニティメンバーとやりとりをしてきた。

彼らはブランド開発の進捗を受け取り、返信はできたが、メンバー同士でのやりとりはできない仕組みだった。サリッシュ氏は「ブランド名から製品アイデア、箱の中に入れる小さなメッセージまで、すべてを手伝ってくれた。だからこれは我々自身のものだと感じる。それこそが違いだ」と語る。

さらにストラウス氏によれば、ブランドが得た重要な発見のひとつは「ティーンたちは依然として実店舗で買い物をしたいと考えている」という点だった。そしてその場所はやはりセフォラである。

「需要に応えるには、適切なタイミングと適切な機会だった」と彼女は述べ、セフォラとのピッチミーティングの会話を振り返る。なお、セフォラは本件に関してコメントを控えた。

ティーンが選んだブランド名と柔らかな色調が象徴するもの



アルファ世代の美容定番を形作る美意識は、まだ明確に定義されていない。彼らにとってのグロッシアー(Glossier)やミレニアルピンクが何になるのかは未知数だ。

しかし、「シンシアリー・ユアーズ(Sincerely Yours、真心を込めて)」という名前を選んだのがブランドに関わったティーンたち自身であるという事実は、そのヒントを示しているのかもしれない。

「ビューティーブランドの命名は決して簡単ではない」とストラウス氏は語り、大人側が持っていたほかの案もあったことを明かす。

「しかし、シンシアリー・ユアーズはすぐにティーンのあいだでトップに躍り出た。そのアナログな響きや誠実さ、優しさや柔らかさがある点に、少し驚かされた」。

ブランドの色調も従来のZ世代ターゲットとは異なる。

Z世代向けのパッケージは派手で明るい色が多いなか、シンシアリー・ユアーズはパステル調を採用。たとえばミントグリーンとバターイエロー、あるいはクリームをベースにしたオーキッドパープルといった柔らかな色合いだ。製品名を小文字で表記することで、遊び心と親しみやすさも演出している。

「少し上の年齢層をターゲットにしたブランドと一致しているように感じる点に、むしろ魅力があった。それはより配慮が行き届いているからだ」とストラウス氏は説明する。

「我々が一貫して耳にしたのは、彼らが『真剣に受け止められたい』という思いだった」。

[原文:Glossy Pop Newsletter: With Sincerely Yours, Sephora officially targets Gen Alpha]

Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)