記事のポイント
ラグジュアリー市場は2025年に2〜5%縮小が予測され、Z世代の離反や関税による収益圧迫がブランドの課題となっている。
Z世代は「目立ちたいが溶け込みたい」という複雑な価値観を持ち、高価格戦略では響かず、エントリープライス帯の商品の投入が進んでいる。
価格を見直し「手頃な贅沢」を出したブランドでは売上や顧客回復がみられ、コスパ重視の流れは富裕層にも広がっている。


ラグジュアリー業界では、たとえばパンデミック後の2020年のように、最悪の年になると予測できることがある。一方で、売上面で最高の年のひとつとなった2023年のように、当たり年になると確信できる場合もある。

しかし、コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニー(Bain&Company)のパートナーであり、今年の「ベイン・アルタガンマ ラグジュアリーグッズ世界調査報告書(Bain-Altagamma Luxury Goods Worldwide Study Report)」の共著者でもあるフェデリカ・レバト氏によれば、2025年は「不確実性」が際立ったことが特徴だという。

ラグジュアリーブランドは売上減少と生産方法への悪評に直面し、ブランドから離れた消費者や、うんざりしたZ世代の買い物客を取り戻すために、価格戦略の見直しを迫られている。

「政治の世界にも、マクロ経済環境にも、そしてグローバルな視点でも、不確実性は至るところに存在する」とレバト氏は語る。

2024年の停滞と「解放の日」以降の低迷



「2024年は横ばいの年だった。ホリデーシーズンの好調により、なんとかマイナス成長は回避できたが、今年は今のところ、第1四半期からずっと低迷が続いている。特に『解放の日』(トランプ米大統領による大規模な関税措置が発表された4月2日)以降は顕著だ」。

2024年には、世界のラグジュアリー市場の売上高が約4230億ドル(約60兆9000億円)から4180億ドル(約60兆2000億円)へと減少し、2020年を除けば、過去15年間で初めての縮小となった。ベインは、2025年の市場規模がさらに2〜5%縮小すると予測している。

関税はブランドの収益性を損なう要因となり、クリエイティブディレクターの交代が相次ぐことで視覚的な世界観が定まらず、多くのブランドが信頼性やアイデンティティを損ねていると、レバト氏は指摘する。

ラグジュアリーブランドとZ世代の価値観のズレ



レバト氏と共著者のクラウディア・ダルピツィオ氏は報告書のなかで、Z世代の消費者が伝統的なラグジュアリーブランドの価値提案に幻滅しつつあることを背景に、業界全体が消費者心理の低下とアイデンティティの危機という二重の課題に直面していると結論づけている。

レバト氏は、Z世代のラグジュアリーおよびファッションへの感情を「二項対立」と表現する。

「彼らはグループに溶け込み、仲間意識を持ちたいと感じる一方で、目立ちたい、自分らしくありたいという欲求も持っている。これは緊張関係だが、健全なものでもある。Z世代は、ラグジュアリーブランドに見捨てられたと感じており、ブランドが彼らを呼び戻すためのハードルは確実に上がっている。この不確実な状況下では、Z世代は年上の世代に比べて経済的余裕が少ないことから、ラグジュアリー市場への復帰も後れを取るだろう」とレバト氏は述べる。

ラグジュアリーブランドがZ世代にアピールできなかった理由のひとつは、富裕層の顧客への依存を強め、価格を引き上げ続けた結果、「背伸びしてでも買いたい」と考える層を締め出してしまった点にある。

たとえば、欧州におけるラグジュアリーアイテムの価格は、過去5年間で61%も上昇している。同時に、ディオール(Dior)の一部の工房におけるコストや労働環境の実態を明らかにしたイタリアの調査のように、高価格を正当化する前提に疑問が投げかけられる事例も出てきた。

顧客回復に向けた価格戦略



「ラグジュアリー業界は、この2年間で5000万人の顧客を失った」とレバト氏は述べている。

「彼らはもはや贅沢を楽しむ余裕を失い、購入をやめてしまった。ブランドは、こうした顧客との関係を再構築するために、エントリープライス帯の商品、つまり昨年は展開していなかった1000ドル(約14万4000円)以下のバッグのような製品を再投入しはじめている。ただし、大衆の熱狂を再び呼び戻せるかどうかは、各ブランドの手腕にかかっている」。

ラルフローレン(Ralph Lauren)など一部のラグジュアリーブランドは、関税の影響を相殺するために今後も値上げを続けると表明している。

しかし、逆に過度な値上げを控えることで、新たなオーディエンスを獲得できる可能性もある。たとえば、バーバリー(Burberry)は昨年のホリデーシーズンに手頃な価格の商品を加えたことで、店舗売上高が4%上昇し、2年ぶりに顧客数が増えた四半期となった。

高級ハンドバッグの再販業者リバッグ(Rebag)の創業者でCEOのチャールズ・ゴーラ氏は、たとえ最富裕層であっても、価格には敏感になり得ると語っている。

「金銭感覚とは相対的なものだ」とゴーラ氏は述べた。

「バーキン(Birkin)を買うような人であっても、20ドル(約2880円)の送料に不満を抱くことがある。もっとも裕福な顧客でさえ、1万ドル(約144万円)よりも8000ドル(約115万円)のバッグを選びたいと考える。予算の多寡にかかわらず、誰もがコストパフォーマンスの高さを求めているのだ」。

[原文:Luxury brands should rethink price hikes to win back disillusioned Gen-Z shoppers]

Danny Parisi(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:藏西隆介)