無理なくダイエットを成功させるためには、どんな工夫をしたほうがいいか。心臓血管外科医の渡邊剛さんは「食べる量だけではなく、食べる時間に注意したほうがいい。時間栄養学の研究によると、脂肪をため込みやすくなる時間帯がある」という――。(第5回)

※本稿は、渡邊剛(著)、坂本昌也(監修)『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/fotolgahan
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■「糖質制限ダイエット」にはリスクがある

悪玉血液でだぶついている栄養素のひとつが、糖質です。それなら、善玉血液にするには糖質を摂らないようにすればいいのでは。そう思う人も多いでしょう。

血糖値を上げるのは糖質だけですから、糖質を摂らなければ糖尿病(2型糖尿病)になることも、太ることもありません。ダイエットや糖尿病予防の目的で炭水化物を制限する人がいますが、短期的には、その効果は絶大だと思います。健康診断の血糖値関連の指標は下がるでしょうし、体重も落ちるでしょう。

しかし、長期的におすすめできる健康法ではありません。

特に、炭水化物をほとんど摂らないような極端な炭水化物制限は、健康になるどころか、逆に体を壊すこともあります。なぜなら、私たちの三大エネルギー源のひとつである炭水化物を抜くと、エネルギー不足になる可能性があるからです。

脳にとっての唯一のエネルギー源は、糖質です。不足すると集中力の低下やイライラにつながります。また、エネルギーの絶対量が不足すると体力が落ち、疲れやすくなります。

■呼吸困難や意識障害になるおそれも

エネルギーが不足すると、血管にも悪影響を及ぼします。というのは、赤血球や白血球、血小板をつくる骨髄の機能が低下し、ダメージを受けた血管の修復が滞るようになるからです。これは、動脈硬化を進行させる一因になります。

さらに極端にエネルギーが不足すると、「ケトアシドーシス」という危険な状態に陥ることもあります。人間の体は、飢餓状態だと判断すると、皮下脂肪を利用して肝臓でケトン体という物質をつくります。ケトン体はエネルギー源として利用されますが、大量に蓄積されると血液が酸性にかたむきます。この状態がケトアシドーシスです。

ケトン体とは?[出所=『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)]

血液が酸性にかたむくことで高度の脱水症状になるほか、悪化すると呼吸困難や意識障害など命にかかわることもあります。そもそも、炭水化物をほとんど摂らない食事を続けるのは、とても困難です。

あなたは、白米も、パンも、パスタも、ラーメンも、さらには果物やスイーツも食べない生活を一生続けられますか。私にはとても耐えられません。仮に短期間実践できたとしても、おそらく反動で、炭水化物制限をする前より炭水化物をたくさん摂ってしまうことになると思います。

それが、ダイエットでありがちなリバウンドという現象です。これでは、せっかく流れるようになった善玉血液が、あっさり悪玉血液に戻ってしまうことになります。善玉血液は、流し続けることが肝心なのです。

■「オートファジー」で代謝を活発化させる

短期間で悪玉血液を善玉血液に変えるには、「ファスティング」という方法もあります。

ファスティングとは、一定期間食べ物の摂取を制限する健康法です。いわゆる「断食」です。ファスティングには、食事の時間を制限する短時間ファスティングと、3日〜1週間ほど固形物を食べずに過ごす長期間ファスティングがありますが、チャレンジしやすいのは、短時間ファスティングでしょう。

「プチ断食」や「16時間断食」などがメディアで取り上げられたこともあって、実践したことがあるという人もいるかもしれません。ファスティングによる効果として話題になったのが、「オートファジー」です。

オートファジーの仕組み[出所=『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)]

オートファジーとは、古くなった自分の細胞を分解し、再利用する仕組みです。自分の体の中にあるリサイクル工場だと思ってください。この仕組みが稼働すると新陳代謝が活発になり、老化を遅らせるといわれています。

■「16時間断食」で腸内環境を整える

オートファジーは食べない時間を16時間つくると活性化するといわれていて、それで注目されたのが「16時間断食」です。

ファスティング中は何も食べないため、血糖値が上がることもなければ、脂肪がたまることもありません。食べ物を消化しない時間をつくることで胃や腸を休ませ、腸内環境を整えることもできます。

善玉血液をつくるにはファスティングは有効な方法であるとはいえます。ただし、プチ断食するなら、16時間ではなく、14時間を目安にしてください。14時間のほうが16時間より楽に続けられるからです。

たとえば、18時までには早めの夕食を摂って就寝し、次の日の朝8時に朝食を摂るようなイメージです。オートファジーも14時間なら少しずつ活性化するといわれています。有効な方法は継続できるかどうかがポイントです。無理なく続けることが、結果的に血管を守ることになります。

■「夜9時から深夜2時」がもっとも太りやすい

脂質にしても、糖質にしても、摂り過ぎは論外ですが、いつ摂るかによっても善玉血液になるか、悪玉血液になるかのわかれ道になります。

私たちの体には「体内時計」が備わっていて、そのリズムによって睡眠、ホルモン分泌、体温調節など、あらゆる生命活動がコントロールされています。誰から教わることなく、朝になると目が覚め、夜になると眠くなるのは、体内時計があるからです。

渡邊剛(著)、坂本昌也(監修)『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)

この体内時計に基づいて「いつ食べると体にいいのか」を研究している時間栄養学という学問があります。時間栄養学によると、脂肪として蓄積されるかどうかは時間帯によって変わるといいます。脂肪として蓄積されやすいのは夜遅い時間帯です。

それは、「BMAL1(ビーマルワン)」という脂肪をため込むときに働くタンパク質の分泌量が、夜9時頃から深夜2時頃までが最も多くなるからです。夜遅い食事が悪玉血液になりやすいのは、寝ているときに分泌量が増える成長ホルモンも影響しています。

成長ホルモンの大きな役割のひとつは、脂肪の分解で、分泌量が最も増えるのが、入眠してから30〜60分の間に訪れる深い眠りの時間帯(ノンレム睡眠)です。この成長ホルモンの分泌を邪魔するのが、血糖値の上昇です。つまり、寝る前に食事をすると脂肪の分解が進まず、摂った分だけどんどんたまっていくことになるわけです。

食後の血糖値が正常に戻るのは約3時間後ですから、夕食は寝る3時間前にすませるのが理想ということになります。ですから、少なくとも、寝る2時間前には夕食をすませるようにしましょう。

日本大学薬学部教授・榛葉繁紀氏の研究をもとに作成。[出所=『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)]

先ほどのBMAL1の分泌量を考えると、夕食は控えめにするのも善玉血液にする方法として有効です。控えた分を朝と昼に食べても、夜ほど脂肪として蓄積されることはありません。

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渡邊 剛(わたなべ・ごう)
心臓血管外科医
1958年、東京都生まれ。心臓血管外科医、ロボット外科医(da Vinci Pilot)、医学博士。日本ロボット外科学会理事長、日伯研究者協会副会長。麻布学園高等学校卒業後、医師を志す。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に入局する。海外で活躍する心臓外科医になりたいという夢を叶えるためドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてドイツHannover医科大学に留学。金沢大学心肺・総合外科教授、国際医療福祉大学三田病院客員教授などを経て、2014年にニューハート・ワタナベ国際病院を開院。著書に『医者になる人に知っておいてほしいこと』(PHP新書)『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(あさ出版)などがある。
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坂本 昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長
国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。
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(心臓血管外科医 渡邊 剛、国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長 坂本 昌也)