記事のポイント
アメリカンイーグルは、Z世代との関係強化を狙い、サブスタックでニュースレター配信を開始した。
同社は編集パートナーと連携し、共感性やトレンド重視のコンテンツで継続的なエンゲージメントを図っている。
専門家は、サブスタック活用には時間と労力が必要で、短期ではなく長期的な戦略と位置付けている。


アパレル小売のアメリカンイーグル(American Eagle)が、サブスタック(Substack)に参入した。

アメリカンイーグルは先ごろ、新しい無料ニュースレター「オフ・ザ・カフ(Off the Cuff)」の配信を開始し、同プラットフォームに加わる最新のブランドとなった。ほかにも、美容ブランドのセイ(Saie)やレアビューティー(Rare Beauty)、ファッション再販のザ・リアルリアル(The RealReal)など、ここ数カ月でサブスタックに参入するブランドが相次いでいる

アメリカンイーグルは、「ほぼグループチャットのような感覚」をニュースレターで再現することで、無意味なソーシャルメディアのスクロールを超えた、より深い、コンテンツに関心を持ちそうなZ世代にエンゲージしたいと、同社チーフマーケティングオフィサーのクレイグ・ブロマーズ氏は述べている(同氏はニュースレターの購読者数については明らかにしなかった)。

ニュースレターでは、インターネットのトレンドやアメリカンイーグルの顧客のあいだで流行しているものに関するデータ(第1号では「ジョーツ[デニムショートパンツ]」の人気上昇にセクションを割いた)のほか、Z世代の消費者にとって重要なテーマを取り上げる。配信の頻度は未定だ。ゲストエディターには、サブスタックで配信されている若者文化のニュースレター「アフタースクール(After School)」のライター、ケイシー・ルイス氏を迎える。

メディア化するブランド、求められるバランス感覚



ブロマーズ氏は、「Z世代と関わるマーケターなら必読」と評するルイス氏のニュースレターとのクロスプロモーションは、アメリカンイーグルにとってサブスタック参入の足がかりになるとみている。ルイス氏との協働は、編集上のパートナーシップに加え、ブランドとの有料パートナーシップも含むが、契約の金銭的条件は公表されていない。

ブランドが、メディア企業のようなプロダクトを制作する事例は目新しいものではない。ブランドが自前の媒体を手がけることは、おそらく周期的なトレンドと言えるだろう。

しかし、サブスタックを利用するブランドは、パブリッシャーが長年直面してきた課題と向き合わなければならない。すなわち、コンテンツのトーンを決定することと、オーディエンス拡大と販売促進のあいだでバランスをとることだ。サブスタックでは、専任の基準・執行チームがプラットフォーム上のコンテンツを審査して、「同プラットフォームが編集の品位に重きを置く場であり続けるよう」努めていると、Modern Retailが以前に報じている。

短期ではなく「投資としての編集戦略」



ブロマーズ氏は、ブランドがサブスタックを試すことについて、従来の編集コンテンツよりも大きな可能性を見いだしている。すでにオーディエンスが時間を費やしている場所での活動となり、ほかの場所へ誘い込む必要がないからだ。「オーディエンスがいる場所へ出向くのは自然なことだ」とブロマーズ氏は話す。シミラーウェブ(Similarweb)のデータによると、サブスタックのオーディエンスの年齢層でもっとも多いのは25〜34歳で、全体の24%を占めている。また、18〜24歳の読者は11.4%を占める。Z世代は13〜28歳の年齢層を指す。

エージェンシー幹部からも、ブランドマーケターとの会話でサブスタックが話題に上ることが増えたとの声が聞かれる。マーケターたちは、ザ・リアルリアル、トリーバーチ(Tory Burch)、レアビューティーなどのブランドが、サブスタックにおける取り組みで先駆者として注目を集め、忠実なオーディエンスを獲得していることを認識しているからだ。Modern Retailによると、美容ブランドのセイは、サブスタックのニュースレター購読者数が前月比で20%増加したという。

VMLのコネクションディレクター、リズ・ハナ氏は、「多くのブランドが興味を示している」と明かす。同エージェンシーでもクライアントと話し合っているが、まだブランド向けのサブスタックを立ち上げたことはないという。

ハナ氏にとって、サブスタックはすべてのブランドに適したプラットフォームではない。テクノロジー、ファッション、金融、美容などのカテゴリーで「独自の視点を持ち、編集コンテンツが豊富」なブランド向きの場所だ。VMLではクライアントに対し、同プラットフォームは「短期的な戦略にはならない」と注意を促している、とハナ氏は言う。「これは長期的な戦略だ。すぐにROI(投資対効果)を得られるものではない」。

関税政策が二転三転し、経済の先行き不透明感に直面しているマーケターは目下、短期的な思考に集中せざるを得ない状況だ。その結果、サブスタックのような新しいプラットフォームへの投資が後回しになっている可能性がある。

サブスタックでの存在感を築く上で、必ずしも金銭的な投資は必要ないが、「時間と労力は必要だ」とハナ氏は指摘する。「実際に手間をかけ、適切なライターを招くためには、ブランドが労力と人材に投資しなければならない」。

編集コンテンツの拡充は、マーケターが検索の質の変化と、AI向けに検索対策を最適化するニーズに対応する上で有利に働く可能性がある。ブロマーズ氏は、コンテンツの拡充がサブスタックにおけるアメリカンイーグルの存在感につながる「先行指標」になるわけではないが、それでも「興味深い学習機会」と捉えていると話す。

「小売業界にいる誰もが、AIによってさらに強化された未来への準備を始めている。正直なところ、我々はすでにその未来に生きている」と同氏は述べた。

[原文:Can brands like American Eagle appeal to Gen Z with Substack?]

Kristina Monllos(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:坂本凪沙)