井上尚弥を初めて見た米識者の心のTKO 記者席で涙を堪え…直撃取材「ボクシングを救ってくれた」
井上尚弥VSカルデナス
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が4日(日本時間5日)、米ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナでWBA世界同級1位のラモン・カルデナス(米国)との4団体防衛戦に臨み、8回45秒TKO勝ちした。世界戦通算23KOで歴代最多記録を77年ぶりに更新。記者席で見た米識者はこの一戦をどう見たのか。THE ANSWER編集部記者が直撃した。戦績は32歳の井上が30勝(27KO)、29歳のカルデナスが26勝(14KO)2敗。
記者席で涙を堪え、リング上のモンスターを見つめていた。
「信じられないショーだった。信じられないショーだったよ」
感嘆のあまり言葉を繰り返したのは、米専門メディア「ファイトハブTV」でレポーターを務めるマーカス・ヘイズ氏だ。ボクシング取材歴7年。それ以前の2017年9月の米デビュー戦から井上を追ってきたが、生観戦は初めてだった。「世代を代表する才能。真のボクシングファンは全員、一生に一度は見るべき経験だ」。21分45秒の激闘を噛みしめていた。
2回、左フックを被弾し、まさかのダウンを奪われた。昨年5月のルイス・ネリ戦以来、試合ではアマチュア時代を含めて人生2度目のダウン。両膝をつき、会場は騒然とした。「イノウエが脆さを見せた」とヘイズ氏。だが、決してマイナスなことではないと強調する。
「米国人は強さと脆さが好きなんだ。アメリカンヒーローにはこの2つの要素が必要だ。イノウエは強くて圧倒的であると同時に、弱みも持ち合わせている。それでいて、その脆さを乗り越えてくるんだ。非常に感銘を受けたのはその部分だ。だから、彼はエキサイティングなボクサーなんだ」
塩試合が続いた週末の鬱憤晴らす激闘「ボクシングを救ってくれた」
立て直した井上は多彩なパンチで猛攻。7回に右ショート4連発でダウンを奪い返した。8回、フラフラの相手を攻め立て、レフェリーストップ。会場はスタンディングオベーションで激闘を称えた。「これぞボクシング。これこそがボクシングのあるべき姿だ。最も純粋な2人の男が我を忘れて打ち合う。ボクシングという競技を代表する試合だった」。ヘイズ氏は2人に敬意を評した。
この週末はデビン・ヘイニー(米国)、カネロことサウル・アルバレス(メキシコ)ら大物ボクサーが連日リングに上がったが、判定決着の“塩試合”ばかり。識者やファンから不満の声が続出した。その鬱憤を晴らしてくれるド派手な内容。ヘイズ氏は「イノウエが遠く日本から来てボクシングを救ってくれた。過去の偉大な王者たちと同じように見えたよ」と賛辞を惜しまなかった。
「彼は偉大さ、落ち着き、立ち直る力を見せてくれた。しばらく忘れることができないショーだった。戦いの最中、あまりの偉大さに感動で泣きそうになる時があった。この空間にいた他の全員と同じようにね。信じられないほど素晴らしかった。イノウエは僕らを失望させなかったよ」
しみじみと力説。「彼はスーパーヒーローだよ。あ、そうだ。彼に遅めの『誕生日おめでとう』を伝えてくれ。4月10日が誕生日だっただろ。アメリカメディアを代表してHappy Birthday!」。言葉の節々にモンスターへの畏敬の念が込められていた。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

