Media Briefing[日本版]: Google の不透明さに、メディアも広告主も「見て見ぬふり」をするしかない?
「森を見て木を見ず」と言うべきか、なぜ蛇口から水が出てくるのか知らなくても問題はないと言うべきか。ともかく、専門的なプロセスや背後にある複雑なシステムについて、万人がすべてを理解しておく必要はない。技術的な詳細を理解することと、技術の利用とは必ずしも連動していないからだ。その意味では、透明性というのは大した問題ではないかもしれない。しかし、Googleの検索をはじめとするアルゴリズムの数々における話となると別だ。なにせ広告配信から測定、検証、各種データの取得、メディアのトラフィックと、デジタル領域を形作るあらゆる要素が拠って立つ存在なのだ。「知らなくてもいい」では済まされないことが多すぎる。
メディアの生殺与奪権を握る
はじめに断っておくと、別にGoogleに悪意があって何かを覆い隠している、などとは考えていない。ただ、支配的な立場にあり、自社製品に代わる競合製品が存在しない状況では、説明を回避したり、情報を開示しないといった形でさまざまな問題を事実上無視することができる。
そのひとつが、メディアにおけるGoogleの参照トラフィック減少問題だ。X、Facebook、インスタグラム、TikTok各社がユーザーを自社プラットフォームにできるだけ長くとどめようと画策しているため、パブリッシャー各社はソーシャルメディアからの参照トラフィック激減を経験しているが、Googleの参照トラフィックも減少していると懸念を示すパブリッシャーが複数存在する。
実際、米DIGIDAYの取材では2名のパブリッシャー幹部が自社のサイトの中には、Googleからの参照トラフィックが前年比で同レベルもしくはわずかに上昇しているサイトもあるものの、60%から70%も減少しているサイトもあると証言している。一方、ChartbeatやSimilarwebをはじめとするサードパーティのオーディエンス測定企業の報告を見る限り、Googleからの参照トラフィックは総じて、2022年10月から2023年10月までは前年比で変化が見られないという。
単なるメディアパワーの低下をGoogleの所為にしているとか、つまらないコンテンツが淘汰されているだけなのか? そうとも言えない。個々のメディアを見比べてみると60%以上減少しているところもあるかと思えば、15%から20%の減少ですんでいるところもある。そして、その2つのメディアを並べて比較したところで、質やコンテンツ内容にそれほど違いがない。この一貫性のなさはどこから生じるのだろう。米DIGIDAYに証言した幹部は、Googleが2023年内に行ったアルゴリズム更新は8〜9回ほどと、これまでにない回数(これまでの更新は、過去5年で5回か6回かそれを上回る程度だったという)のように感じられたとし、その影響の可能性を指摘している。
Googleの広報担当者は文書で米DIGIDAYに「弊社は常にシステムの改善を続けているので、今後も適切かつ有益な結果をお見せできます。弊社のいかなる更新も、パブリッシャーを含む特定のページやサイトを対象にするものではありません」と回答した。今起きている参照トラフィック減少は、幻覚や事実誤認なのだろうか。
パフォーマンスが不透明なパフォーマンス最大化
パブリッシャーの肩を持ちすぎだろうか。では、仮にトラフィック減少はパブリッシャーの被害妄想だったとして、検索広告はどうか。11月28日に発表されたAdalytics Researchのレポートによると、Google検索パートナー(GSP)ネットワークには、海賊版コンテンツや露骨なアダルトコンテンツを含むWebサイトのほか、イランの組織が運営すると推定され、米財務省外国資産管理室(OFAC)の制裁対象となり得る数百のWebサイトが含まれるという。何百もの優良ブランド(多くは全米広告主協会の会員でもある)や組織(欧州委員会、米財務省、複数の米政治家の選挙陣営など)が、制裁対象であるイランやアダルト系のWebサイトに広告掲載されていたことが確認されている。
Adalyticsは複数の事例において、問題のサイトへのブランド検索広告の配信に用いられていたのがGoogleの主力プロダクトのひとつ、P-MAXであることを確認した。2021年末から提供され、AIを用いてさまざまな広告フォーマットや環境で広告キャンペーンを最適化しパフォーマンスを最大化すると喧伝されているものだ。しかし、その売り文句とは裏腹にバイヤーからはしばしば、広告がどこに掲載されたのか、キャンペーン後のレポートでほとんど知ることができないとの声が聞かれる。
Google広告の関連文書には「検索ネットワーク上で顧客の広告が表示されたWebサイトの情報を提供しない」旨が記されているが、だから仕方ないとするのはあまりに無責任で怠惰だろう。不安を覚えるレベルのリスクであり、2020年以降クライアントに対してGoogle広告を利用しないよう助言してきたメディアエージェンシーもいるほどだ。コンサルティングサービスのアドプロフス(AdProfs)の創業者であるラトコ・ヴィダコヴィック氏は、米DIGIDAYに対し、Adalyticsのレポートはプラットフォームの「力」を浮き彫りにするものであり、Googleほどの膨大なリソースを有する企業が、自社のネットワーク上にリスクを孕んだサイトが存在することを知らないとは考えられないと指摘する。
Google広告チームは、広告主がアカウント担当者に話せば、特定のGSPネットワークのサイトに広告が表示されないようにすることが可能だと主張している。だが、匿名で回答したメディアエージェンシーの担当者は「Googleは非常に多くのブランドに対して、専任チームを付けて懐柔し(中略)ブランドは特別扱いされていると感じている」と話す。「Googleは多くの教育を行うが、設定や細かい点についてはほとんど教えない」。パブリッシャーが羨む、高度な手法だ。
Googleのグローバル広告担当バイスプレジデントのダン・テイラー氏は、Adalyticsのレポートは不正確なものであり、Googleの製品について事実と異なる、誇張された主張が含まれていると評している。だが、レポートが浮き彫りにしているGoogleの透明性の欠如は、否定しようがない。
主な数字
11.3%:2023年第三四半期の決算におけるGoogleの検索連動型広告売上高は、11.3%の増加を記録した。
約200億ドル(約3兆円):GoogleがiPhoneのデフォルトの検索エンジンであり続けるために支払った額(推定値)。
10回:Google広報担当者によると、アルゴリズムの更新回数はこの3年間特に変わらず、2021年、2022年は10回で、2023年もこれまでのところ10回とのこと。確認する術はない。
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