マッサージを受けていると、なぜ眠くなる?

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 日頃、首や肩の凝り、背中の張り、脚の疲れなどを感じている人にとって、マッサージを受けるのは格別に気持ちのいいものです。あまりの気持ちよさに、マッサージ中に寝てしまった経験のある人も多いと思いますが、中には「どうして、マッサージを受けると眠くなるんだろう」「自分でマッサージしても眠くならないのに…」「寝落ちてしまっても、マッサージの効果は変わらない?」などの疑問もあるようです。

 マッサージと眠気にまつわる素朴な疑問について、カイロサロンUlysses(東京都新宿区)院長で医学博士の林基弘さんに聞きました。

腎臓機能の低下も一因か

Q.まず、マッサージを受けることによって得られると考えられる効果や、体に起こり得る変化について教えてください。

林さん「マッサージの種類には『もむ』『伸ばす』『押す』『流す』などのパターンがあり、それによって効果が変わります。まず、筋線維をもんで柔らかくするマッサージには、萎縮した筋肉をほぐし、老廃物の代謝を促す効果があります。一方、筋線維を伸ばして楽にするマッサージには、萎縮した筋肉をストレッチすることによる弛緩(しかん)の効果が期待できます。

また、ツボを押して楽にすると、筋肉を弛緩し、その筋肉に関連した内臓ケアの効果もあります。そして、リンパを流して楽にすることで、老廃物の排出を促し、筋肉の回復を促進する効果があります」

Q.マッサージを受けている最中に眠くなることがあるのはなぜですか。

林さん「これもマッサージの種類によりますが、まず、一般的な理由としては、疲れが解放されたことによる眠気が考えられます。精神的な部分では、体が楽になったことでリラックスし、素直に疲れを感じて眠くなることもあるでしょう。また、腎臓機能が低下していると眠くなりやすいともいわれています」

Q.一方で、自分で自分の体をマッサージしたときには眠気を感じない人が多いようですが、これはなぜでしょうか。

林さん「自分自身でマッサージを行ったときは、他人が行う施術と比較して、体が刺激を感じにくいためでしょう。自分の体をコチョコチョとくすぐっても全然くすぐったくないのに、他人にされるとくすぐったく感じる感覚に近い理由です。つまり、方法にもよりますが、マッサージは自分で行うよりも他人に行ってもらう方が効果が高いと思われます」

Q.マッサージ中に眠くなり、そのまま眠ってしまった場合(眠った後もマッサージを継続した場合)、マッサージの効果は同じように得られるのでしょうか。それとも、何か違いが出るのでしょうか。

林さん「筋線維をもんだり、伸ばしたりする物理的なマッサージの場合は、眠ってしまっても問題ありません。一方、ツボ押しなどは、副交感神経が活性化しているとよい場合とそうでない場合とがあります。施術者のスキルによって変わるので、眠った方がよい場合もあると思います。逆に、リラクセーション系のマッサージの場合は、眠ってしまうことで効果が若干少なくなる可能性があります」

Q.マッサージを受けた当日や翌日以降、「ぐっすり眠れた感覚があった」と感じる人もいるようです。

林さん「筋肉の『ON』と『OFF』が睡眠の質に関係していると考えられます。筋肉(骨格筋)は脳からの信号を受けると、筋収縮をして、ON状態となり、逆に筋収縮をしないときはOFF状態となるのですが、強度の負荷や長時間の負荷で疲労した筋肉は、休息時にも完全なOFF状態とならない場合が多く、より強いONの指令を送らないと筋肉が適切に動かせなくなります。

これを繰り返したり、他の部位の筋肉も同様の状態となっていたりする場合、疲労困憊(こんぱい)して、体が思うように動かせなくなるのです。このとき、適切なマッサージを行うと、体内の筋肉疲労の根源である異常な筋萎縮が改善され、筋肉のONとOFFが正しく行われるようになり、適切に体を動かせるようになります。この状態であれば、筋肉が正しくOFFの状態となり、脳もリラックスできるため、睡眠の質も高まり得るでしょう」

Q.マッサージを受けた当日から数日間、特に意識するとよいこととは。

林さん「1日2リットル前後の水分を小まめに分けて摂取し、小まめな排尿を心掛けるとよいでしょう。逆に水分を取らなかったり、がぶ飲みをしたり、排尿を我慢したりすると体がむくむため、NGです」